9月4日から開催された「第28回西日本女子学生スポーツ射撃選手権大会」で、体育会射撃部は6年ぶりの女子総合団体優勝を果たした。優勝に大きく貢献した大鍬さんは、50mライフル女子三姿勢120発競技※1 (以下、SB 3×40)個人で、初出場にして優勝に輝いた。コロナ禍での活動自粛もあり、SB 3×40を本格的に開始したのは2020年7月。「ライフルのマラソン」とも言われ、一回の試合時間は約2時間以上となるため、長時間の集中力を要する競技だ。SB 3×40を始めたばかりの彼女が、必死に練習して掴んだ優勝への道のりを聞いた。

※1 スモールボアライフルを用いて「立射」、「膝射」、「伏射」の各姿勢40発の合計120発の得点の上位から順位が決定する

コロナ禍で思うように練習ができないもどかしさ

射撃を見て一目惚れをした彼女は、高校から射撃を始め、自分の世界に集中して入り込める射撃の世界に魅了された。高校から取り組んでいる種目は、10mエアライフル女子立射60発競技※2 (以下、AR 60)。AR60に加え、大学入学後は新たな種目にも挑戦するため、スモールボアライフルの申請を行い、資格を取得できたのは2020年4月だった。その直後、新型コロナウイルス感染症の影響により、活動が自粛に。約3カ月間、スモールボアライフルを使う練習ができない中、姿勢をとってイメージトレーニングするなど自宅でできる練習を重ねた。

※2 射距離が10mでエアライフルを用いて「立射」のみで合計60発の得点の上位から順位が決定する

練習再開後は、自粛前のように部員同士で指導し合う時間の確保も思うようにとれず、もどかしさを感じたという。SB 3×40の先輩の指導が受けられるよう練習のローテーションを変えてもらったり、基礎である姿勢の調整を繰り返した。「膝射」と「伏射」の姿勢には慣れず、痛みで長時間の練習ができないこともあった。スモールボアライフルは、AR 60用のエアライフルより反動や音が大きく、恐怖を感じることもあったが、大会までの限られた時間、撃って慣れるしかない状況だったため、SB 3×40の練習も続けながら、その合間にAR 60を練習した。姿勢や音など慣れるまでに思ったより時間を要し、もどかしさはあったものの、大会直前にはようやく姿勢や音にも慣れたという。AR 60の団体メンバーは、部内で選抜されるが、SB 3×40は、大鍬さんが出場しなければ団体に参加できないため、「先輩の足をひっぱらないように、試合の日までに調整しなければいけない」とプレッシャーを感じながらも、自分の課題と向き合い、お盆休みも返上して練習を重ねた。

大会当日、SB 3×40では、初めての屋外での実践で太陽の明るさや風の影響など環境の変化に焦りを感じたが、時間が経つにつれて落ち着きを取り戻した。制限時間内に各姿勢40発ずつ練習と本射ができるため、自分のタイミングで本射ができるが、練習で納得がいかず、時間との闘いだったという。「無事に撃ち終わったときには安堵した」と振り返る。

練習した分だけ自信につながる

結果は女子総合団体優勝。「先輩にとって最後のシーズンなので、少しでも優勝に貢献できてよかったです。頑張ってきてよかったです」と喜びを語る一方で、個人としては、「まだ改善すべき点も多い」と冷静に受け止める。今後は、フォームの改善を重点的に取り組むという。彼女が目指すのは、「両種目を両立させ、絶対的に安定した点数を打ち出し、上位の結果を残すこと」。大会本番での緊張を柔らげるため、練習時から点数を意識して試合と同じ状況で練習することを心掛けている。今では緊張することなく、楽しんで試合に臨めるようになった。「緊張の原因は、自分自身。自分が一番練習をしたという自信を持つことができれば、緊張しません。しっかり練習を積むことが自信につながります」と力強く答えた。「在学中に全国制覇する」という大きな目標を掲げる彼女。今後のさらなる活躍に期待したい。

PROFILE

大鍬菜月さん

済美高等学校(岐阜県)卒業。趣味は、映画鑑賞で、掃除をしてリフレッシュをする。今後は、児童虐待や音楽と教育の関連について研究をしていく予定だ。11月には、全日本学生スポーツ射撃選手権大会に出場する。

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