フットサルは、ゴールキーパー1人とフィールドプレーヤー4人で行う球技だ。試合中は自由に交代できるため、何度も選手が入れ替わり、走り続ける。個々の技術力だけでなく、全員が総力を挙げて挑むチーム戦だ。フットサル同好会All.1(以下、All.1)の代表を務める大毛さんは、「ピッチが小さいため、どこからでもチャンスが生まれ、セットプレーやシュートが多いこともフットサルの魅力」と語る。All.1は、1月23日の「JFA 第26回全日本フットサル選手権大会(以下、全日本)関西大会」の最終戦、奈良県1位のチームに5対4で勝利し、全日本の出場権をつかみ取った。創立15年目に手にした悲願の全日本初出場だ。

※公益財団法人日本サッカー協会が主催し、日本フットサルリーグ(Fリーグ)のチームや地域の予選を勝ち抜いたチームなど全32チームがトーナメント方式で競う

代表として誰よりもチームのことを

All.1は、トップチームとサテライトチームの2チームがあり、選手は全体で24人が所属する。大毛さんは、トップチームの選手でありながら、サテライトチームの指導も担っている。練習は週に5日。両チームの練習に参加し、「常にフットサルのことを考えていますね」と両立の苦労はあるものの、その笑顔からはフットサルへの情熱が感じられた。

代表になった当初、プレーと指導の両立に苦労した。指導で伝えたいことがあっても、思うように言葉にできないこともあった。監督に「指導で伝えたいことを言語化することで、プレーヤーとしても上達できるものだ」と教わってからは、練習前に伝えたいことをまとめ、十分な準備をすることで経験を積んできた。「監督との信頼関係があったからこそやってこれた」と振り返る。代表として、強いリーダーシップでチームを引っ張ってきた歴代の先輩とは異なり、全員でチームを作り上げようとする自身のやり方に迷いもあったが、その方が自分らしいと思えた。チームが実績を残すことができ、自分のやり方に自信がついてきたという。

どんな時も熱い気持ちで挑む

大事な試合の前に、メンバーに必ず伝える言葉がある。「熱い気持ちで」先輩から受け継いだ大切なこの言葉が、チームの強みでもある。試合では全員が立ち上がってベンチから声援を送り、ミスをしても全員でメンバーを鼓舞する。「自分が出場していないときでも、全員が戦うチームにしたかったんです。ベンチから声をあげてくれることで、もっと頑張らなければ、と力も入ります」全員で戦うその熱い姿勢は、自分たちの強みだと胸を張る。

関西大会前の滋賀県大会では、連日続いた試合の切り替えに苦戦して3位だったが、なんとか関西大会出場を決めた。関西大会では、初戦から兵庫県1位、京都府1位の強豪チームとの厳しい戦いを制した。「毎試合、目の前の試合に全力を注いできました。とにかく走って、球際で負けない、と強い気持ちを持って挑みました」と振り返った。全日本出場の結果に、SNSでの反響は大きく、「本当に出場するんだ、と実感が湧いてきました」と嬉しさをにじませた。

2月19日から始まる全日本を前に「3回戦まで勝ち残り、4回戦はF1リーグのチームとの対戦に挑戦したい」と熱い意気込みを語る。「今が一番楽しいです。強いチームと対戦することで、もっとうまくなりたいという思いが強くなります」と、全日本出場に向け、チーム一丸となって練習に励んでいる。初めての全日本、努力を重ねてチーム全員でつかんだ夢舞台。“熱い気持ちで”楽しんでプレーする彼らにエールを送りたい。

PROFILE

大毛哲郎さん

茨城県立水戸第一高等学校卒業。小学生から高校までサッカー部に所属し、センターバックやボランチを務める。現在のポジションは、全体の舵取を担うフィクソ。フットサル、サッカー以外にも、バスケットボールを楽しむ。授業で学ぶ栄養学の知識などを食生活にも生かしている。

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