7月7日「七夕」の日、大阪府交野市(かたのし)の七夕伝説をモチーフに、オーガニック素材にこだわったクラフトコーラが誕生した。その名も“カタノホシノコーラ”。「自然と体に馴染むような、すっきりとした味わいに仕上げました。このコーラには、交野市の魅力と物語を凝縮するとともに、開発に携わった人たちの思いを込めています」と語るのは、秋森晃希さん。自身が所属するローカルメディアと市内のカフェで共同開発に尽力した。彼が伝えたいのは「まちと人がつながることで生まれる、その地域ならではのクラフトコーラ」と、そこに秘めた可能性。活動に込めた思いを彼に聞いた。

交野市の物語をクラフトコーラに込めて

天野川と交野山を有する自然豊かなまち、交野市。祖父母の家があり、秋森さんにとっては幼い頃から慣れ親しんだ場所だ。大学1回生の頃、交野市への理解をさらに深めるきっかけがあった。交野市役所のインターンシップに参加した際、美しい自然を再確認した一方で、空き地・空き家の増加や緑地の減少、観光地としての認知の低さなど、まちが抱える課題を知ったという。

「その後、交野市の観光協会で活動しながら、空き地をシェア農園として運用するなど、少しでも地域課題の解決に貢献するため奮闘しています」。また、ローカルメディア「交野タイムズ」編集部のメンバーとして地域にフォーカスした活動に力を注いでいる。「幼い頃からの思い出があり、今でもさまざまな気づきを与えくれるこのまちに恩返しがしたくて、新たな名産品をつくり、地域の活性につなげたいと思いました」。

2回生となる2021年3月、交野タイムズのメンバーで交野市発のクラフトコーラ開発プロジェクトを開始。ハーブを専門に扱うカフェとの共同開発が始まった。「交野市には美味しい地下水があり、コーラの決め手となるオーガニックのスパイスを揃えてくれる農家さんや企業もありました。そこにハーブの専門知識が添えられるなど、コーラ開発に適した環境が運命的に整っていたんです」。確かな手ごたえを感じつつ開発は順調に進んだが、商品のプロモーションで暗礁に乗り上げた。

「クラフトコーラはすでに市場で普及し始めています。差別化ができなければ、ほかの商品に埋もれてしまう。インパクトのある商品にするにはどうすればいいか」。悩んだ先に見つけた答えは、“星のまち”だった。交野市から枚方市にかけて流れる天野川、その流域である交野ケ原は日本の七夕伝説発祥の地とも呼ばれている。“星のまち”を連想させるデザインにチームで意見が一致。商品のロゴにあしらい、幻想的なイメージを印象付けた。 商品のリリースに向け、クラフトコーラを通じて自身が愛する交野市の魅力をより多くの人に認知してもらうこと、地域を活性化したいこと、そこに市民にも参画してほしいこと、そんな熱い思いを新たに開設したSNSアカウントや、時には自らの声で発信し続けた。7月、市内の2店舗で販売を開始すると、他店舗からも問い合わせが集まるほど一躍話題に。今後はローカル店舗を対象にレシピを共有し、店舗ごとに自在なアレンジを取り入れながら交野市全域に広げていく予定だ。

※平安時代、天野川(当時は甘野川)の白く輝く川砂と澄んだ流水を、天上の天の川になぞらえ、七夕を題材にした数多くの和歌が詠まれました。今でも天野川流域には、七夕にまつわる名所や伝説が残っています。

日常のひらめきが地域を興す

10月には、オンライン販売の実現に向けクラウドファンディングを実施する。「次は、交野市ではない場所で、そのまちの魅力が詰まったクラフトコーラを普及させる取り組みをスタートしました。カタノホシノコーラを一つの事例として、各地域で生まれる“ローカルコーラ”は、その土地ならではの食材、まちの魅力、人の思いがスパイスになる。飲んだ人が感じた思い、そこから生まれる会話、それら一つひとつがまちづくりにつながると信じています」。

「まちづくりの第一歩に障壁を感じてほしくないんです。まちづくりって、日常のなかで表現できることで、もっと自由にできるはず。今回、それをコーラで表現できた。大事なことは、まちを歩き『地域にこんな仕組みがあったらいいな』『こんな風景を見てみたい』といった思いを日ごろから言葉にして人に伝えること。一つひとつの“小さなひらめき”を大切に育て、これからもまちづくりとして形にしていきたい」。地域の物語を紡ぎ、新たな縁を広げていく彼の挑戦は、まだ始まったばかりだ。

PROFILE

秋森晃希さん

立命館宇治高等学校(京都府)卒業。趣味は映画鑑賞や旅行。大のスニーカー好き。ローカルメディア「交野タイムズ」編集部に所属し、コンテンツクリエイターを担当。大学入学後は交野市役所と茨木市役所、枚方市役所でインターンシップを経験し、まちづくりや地域振興を学ぶ。市の農地を守るためシェア農園を運営し、今後はカタノホシノコーラの材料となるスパイスを栽培予定。

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