日本拳法部女子団体が再び圧巻の強さを見せた。2021年11月、「第66回全日本学生拳法選手権大会」女子の部で大学日本一に輝き、2連覇を飾った。チームを大学日本一に導いたのは、女子主将の坂本佳乃子さん。2年連続で「女子最優秀選手」にも選ばれるなど、日本拳法の道を究め続けた。「大切なのは、目標を持つこと。小さな目標が、私の“勝ちたい”という気持ちに気合を入れてくれる。それがやがて大きな目標の達成につながります」と、競技人生で最大の目標に向かって突き進んできた4年間を振り返った。大学卒業を前に、彼女が日本拳法と出会い、学んだものを語ってくれた。

大学で日本一になりたい

日本拳法を始めたのは6歳の頃。負けず嫌いな性格で、試合に出場する度に「もっと一本を獲りたい。もっと勝ちたい」と一心に競技に打ち込んできた。彼女の強みは、磨き抜かれた右の「面突き」。「基本の技である『面突き』。基本こそが日本拳法で最大の強みになり、私にとっては一本を獲る大きな武器です」と、毎日鏡を前にして技を確認しては、乱れぬ形を磨き上げてきた。

中学校、高校では道場での厳しい練習と自主練習を繰り返し、高校生で全国優勝という成果を残すも、「競技をやめたい」と考えたことが何度もあったという。しかし歩みを止めなかったのには、大きな理由があった。「部活動に入り、大学で日本一になること」そして「団体戦で活躍すること」。地元徳島県の学校では日本拳法部がないため、彼女は小学生の頃から同じ道場に通い続け、またマイナーな競技である日本拳法は、女子の競技人口が少ないため団体戦を経験したこともなかった。「この目標を達成するまでに辞めたら後悔が残る」と、大学での挑戦が、いつしか彼女の競技人生において一番の目標になっていた。

※中段の構えから拳を真っ直ぐに突き出し、相手の面を突く日本拳法の技。

チームで勝つために

2018年、日本拳法部女子は「第63回全日本学生拳法選手権大会」で立命館大学史上初の全国優勝を成し遂げた。彼女は1回生ながら大将として団体戦で活躍し、快挙に貢献。栄光の瞬間を経験した。「しかし、2回生の同大会では決勝戦で敗れ、連覇を遂げられなかったのです。決して練習の手を抜いていたわけではありません。努力し続けたのに勝てなかった悔しさが隠し切れませんでした」。この時、これまでにない敗北感が彼女を襲った。「勝つためには、今まで通りの練習をしていてはいけない」。
これまでの練習内容を見直し、より「客観的な視点」で個々の技術を高める練習方法に力を入れることに。2020年、コロナ禍での自粛期間は、各部員が自主練習の様子を撮影してチームに共有し、動画をみた部員たちが指摘し合う仕組みを整え、チームのモチベーションを保つ努力を重ねた。
努力が実を結び、3度目の全国大会では、雪辱を果たして再び日本一の座に返り咲いた。さらに、彼女は女子最優秀選手に抜擢。「自分たちの力で強化してきた技術が優勝につながり、本当に嬉しかったです」。この成果は大きな自信となった。

最大の武器である右の面突きは、相手チームにも警戒・分析がされるようになっていた。「左のジャブ、突き蹴りを組み合わせるなど、右の面突きを生かすための技を強化しました」。4回生では競技者としてさらに磨きをかけた。同時に、チームへの配慮を欠かさず、下級生との自主練習で信頼関係を築き続けた。
そして11月、迎えた大学最後の大会。「競技人生の集大成でもあるこの大会。“絶対に勝ちたい”その気持ちが本当に大きかった」。圧巻の強さで、再び団体戦日本一の栄光を手にした。最後まで戦い抜き、競技人生最大の目標を遂げた瞬間だった。「大学では、チーム一丸となって一つの目標に向かうことがどれだけ難しいのかを経験しました。2連覇を遂げられ『本当に続けてきて良かった』と思いがこみ上げてきました。今までの競技人生のなかで最も記憶に残る大切な試合になりました」。そう4年間の溢れる喜びを語った。

最大の目標を遂げた先に

「ともに励まし合いながら、高め合える仲間がいる。『一緒に頑張ろう』と思える存在が周りにいて、大学では仲間と戦う素晴らしさを学ぶことができました」。3月で卒業を迎える彼女は、16年間の競技人生に幕を下ろす。「人生最大の目標を成し遂げ、やりきったと感じています。今後、大好きな日本拳法は、趣味として関わっていけたらと思っています。これからは社会人として働きますが、日本拳法での学び、仲間との経験を生かして、この先出会う新たな目標に向かって頑張っていきたい」。晴々とした笑顔で語る彼女は、自らの手で新たな世界を切り拓いていく。彼女のさらなる成長に注目したい。

PROFILE

坂本佳乃子さん

徳島県立小松島高等学校卒業。幼稚園で日本拳法を始める。空手をやっている友達に憧れ、「空手をやりたい!」と両親に相談したところ、なぜか空手ではなく日本拳法を始めることになった。趣味は、YouTubeでゲーム実況の観戦や、アニメ鑑賞。休日は主にインドア系の趣味でリフレッシュ。

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