「卓球人生で大事にしてきたことは、『逃げないこと』です。苦しい状況でもやり抜くことの大切さを、卓球から学びました」。そう語るのは、田村美佳さん。「FISUワールドユニバーシティゲームズ2021成都」の国内選考会を勝ち抜き、2023年に日本代表として世界大会に挑む。ひたむきに練習を続け、大舞台への切符を掴み取った彼女に思いを聞いた。

やると決めたら、苦しくても逃げない

母の影響で小学1年生から地元の卓球スクールに通い始めた。卓球への思いが大きく深まったのは、高学年のとき。今も指導を受ける恩師との出会いがきっかけだった。きめ細やかな指導で技術に磨きがかかり、中学3年生のときには「兵庫県中学校総合体育大会」で優勝し、「近畿中学校総合体育大会」ではベスト4入り。「全国中学校卓球大会」、「国民体育大会」への出場を決めた。「強い選手と対戦することが楽しくて、卓球に夢中になっていきました」。この経験が、卓球への思いを一層強くした。

さらなる上達を求め、高校は強豪校に進学。「やると決めたら続ける。苦しくても逃げない」と決め、厳しい練習に打ち込んだ。1年生のときに「国民体育大会」やインターハイへの出場を決めると、3年生の「国民体育大会」では、兵庫少年女子チームを14年ぶりに5位入賞へと導く活躍を残した。
卒業後は、自主性を重んじる雰囲気に惹かれ、立命館大学へ進学。しかし、コロナ禍で大会が中止され、体育会卓球部も活動休止状態に追い込まれた。精一杯自主練習を続けたが、活動再開後の大会では結果を出せず、外出自粛も相まって苦しい日々を過ごした。「『私は一体、何をしてるんだろう』と毎日思い悩んでいました」。それでも、彼女が苦しい状況に背を向けることはなかった。在宅時間を活用してさまざまな学術分野の知識に触れ、競技と向き合うマインドや視点を養った。ノートに課題点をまとめ、試合を重ねるごとにそのプレーに磨きをかけていった。地道な努力が実を結び、「全日本卓球選手権大会」の出場権を獲得。さらに、「関西学生卓球新人大会」では表彰台を飾り、長いトンネルを抜け出した。

さらなる向上を求めて

2回生になると、さらなる技術の向上を求めて、新しいスタイルに挑戦。恩師の助言で整体院に通いつめ、身体の使い方を一から改善した。これまでと異なる動きに戸惑いを感じたが、「うまくいかないのは、何か掴めていないものがあるから」と毎日1時間以上素振りを続けた。
その結果、「2022年全日本卓球選手権大会」の予選会では、「関西学生選手権」で敗れた相手に完封勝利を収めて優勝した。11月の「第17回全日本学生選抜卓球選手権大会」では、全日本ジュニア王者に輝いたこともあるプロチーム所属の選手を相手に勝利し、ベスト4に入賞。全国トップクラスの選手に比肩する成果を残した。

しかし、その後の「第7回オール西日本大学卓球選手権大会」、「2022年全日本卓球選手権大会」では入賞を逃し、安定感に課題を残した。不安の淵に立った彼女を支えたのは、「苦しくても逃げない」だった。原点に立ち返り、男子選手との合同練習に打ち込むなど、自信を取り戻すべく猛練習を重ねた。

2022年2月、国内大学生のトップランキング11人が日本代表の枠を争う「FISUワールドユニバーシティゲームズ2021成都」の国内リーグ戦に臨んだ。トップ選手を相手に苦しい試合が続いたが、田村さんは冷静さを失わなかった。「ミスが多くなると、自分自身と試合をしてしまう。相手を冷静に観察して、自分の卓球を信じよう」。冷静な判断と相手の動きを読んだプレーで逆転勝利を重ね、プロ選手も多数出場するなか4位に入賞。見事に代表の座を掴み取った。「不安を抱えたまま迎えた選考会でしたが、大会を通して精神的に成長することができました」と笑顔で振り返った。

感謝を忘れず、さらなる高みへ

FISUワールドユニバーシティゲームズは2023年に延期となってしまったが、気持ちは切らさず、世界大会へ向けて特訓を続ける田村さん。「海外の強豪選手との対戦がとても楽しみです。出場するからには優勝を目指したい」と意気込みを語った。「当面の目標は『全日本大学総合卓球選手権大会』での優勝と『全日本卓球選手権大会』での上位入賞です。いつも支えてくれている方々への感謝を忘れずに、必ず恩返しができるよう、全力を尽くしていきたい」。さらなる飛躍を誓い、挑戦を続ける彼女にこれからもエールを送りたい。

PROFILE

田村美佳さん

育英高等学校卒業。小学1年生からコンパスクラブ神戸で卓球を始める。休日の気分転換は、睡眠や読書、夜の散歩。最近は、さまざまなスポーツ選手のインタビュー動画などを視聴することが趣味。

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