学生同士の繋がりをつくりたい

「学生がこんなに大勢いるのに、何の関わりもなく、大学生活が終わってしまうのはもったいない」今村さんは2回生のときにこう思うようになっていた。高校までは遠足や体育祭など節目ごとに交流の機会を与えられたが、大学生活では不足していると感じた。「機会がないのなら、自分がつくればいい。機会を与える側になることで新しい経験や価値観を得られるかもしれない」と思い立ち、産業社会学部(以下:産社)の仲間を誘って学生の情勢分析や、どんなニーズがあるのかを模索した。そして、産社の学生を対象にしたスポーツイベント、「サンスポ」を企画・運営する組織を立ち上げた。組織名も「サンスポ」と名付け、一過性ではなく継続して運営するため、産社の自治会と交渉し、自治会内の組織となった。企画内容をスポーツに特化したのは、初対面の人同士でも楽しめると思ったから。2015年度は三回開催し、バレーボールや百足競争などに毎回約100人が参加した。

一方、クラブやサークルに所属せず、アルバイトで忙しい毎日を過ごしていた鈴木さんも普段から「もっと他の学生と関わりたい」と思っていた。そんなとき「サンスポ」を知り、一回目は参加者として、二回目は当日の運営スタッフとして加わった。現在は今村さんから代表を引き継ぎ、執行部の12人をまとめている。

思うようにいかない集客とメンバー統括。そしてそれらを経て得たもの。

「いくら情熱をもって企画していても参加してくれる人がいないと成り立たない」と彼らはいつも感じていたが、集客は容易ではなかった。授業の前後やSNSで呼びかけるが、知名度は低く、思うように集客が伸びないことも多かった。また二人はリーダーとしても悩んだ。今村さんは周囲の気持ちを理解して人を動かせない自分に不甲斐なさを感じ、鈴木さんは自分が思い描いていた理想のリーダー像と現実の自分とのギャップに苦しんだ。

そんな二人が代表として大切にしてきたことは、執行部のメンバー一人ひとりの個性にあった仕事を割り振ることや、全員の意見をすり合わせて、集団として物事を進めていくことだった。「執行部の10人でサンスポを立ち上げ、1年間を乗り越えられたことが嬉しかったです。そして自分たちの思いを引き継いでくれる人がいることも嬉しいですね。サンスポの活動目的である“きっかけづくり”が一つクリアしているのかなと思っています」と今村さんは微笑んだ。鈴木さんも「サンスポを知らなかった人たちが、自分たちの情宣によって『行きたい』といってくれたことが嬉しかったです」と語り、二人は苦労のなかにも大きな喜びを感じたようだ。

学生生活の活力に

「大学って勉強だけが学びの場ではない。人は人との営みのなかで得るものがあると思うんです。学生生活がつまらないと感じている人も、汗をかいて楽しんでほしい。初めて出会った人と楽しむだけではなく、既に仲のいい友達との思い出づくりとしてもサンスポに参加してほしい。サンスポが大学生活の活力になればいいなと思います」と今村さんは呼びかける。将来的には、産社の枠を超え他学部との交流も描いているが、今年はまだ基盤を固める予定だ。今年の目標は、参加人数・満足度ともに昨年度の数字を超えること。「まずは6月末。今年も必ず成功させます」と鈴木さんは誓ってくれた。

PROFILE

今村友哉さん

県立福山誠之館高等学校(広島県)卒業。2014年11月~2015年11月まで自治会組織「サンスポ」代表を務める。2014年5月~2015年12月は海外ボランティア学生団体「I-RIS」に所属。またアカペラサークル「clef」や児童ボランティアサークル「ROBINHOOD」など活動は多岐にわたる。

鈴木裕人さん

府立箕面高等学校(大阪府)卒業。2015年11月~「サンスポ」代表。柴田 悠准教授のゼミでは、恋愛・結婚をテーマに「魅力とは何か?」を研究中。大学入学時から現在は予備校のチューターとしても忙しい日々を送っている。

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