課題の設定が独創性・萌芽性をもつ研究、発想や着眼点が従来にない新規性をもつ若手の研究を支援している笹川科学研究助成に、2016年3月に採択された寺村さん。「自分の研究の意義や計画性を認めてもらえた証だと思い本当に嬉しい」と喜びを語ってくれた。

クロロフィルは生物の光合成器官において重要な働きを担う色素分子である一方、生体外でも多様な機能を有するπ電子系化合物である。生体内で、これらの色素は複数の酵素により構成されるが、完全な生合成経路の解明には至っておらず、合成酵素のタンパク質としての機能に関する報告も少ない。寺村さんはこれらの酵素の生体外での機能を明らかにすることにより、クロロフィル生合成経路の解明を目指している。



分子生物学的に光合成色素の生合成経路解明を試みる研究は、国内外に問わずに活発に行われているが、主に生体内の機能解明に留まっている。生体外での酵素反応に関する報告は少ない上に、そのほとんどは基質分子が天然由来の色素に限定されている。そこで、寺村さんは化学者の立場から、有機合成した天然・非天然色素との反応性を網羅的に調べ、生体外での酵素機能を解明した。この研究を4回生のときからおこなっている寺村さんは、有機化学と分子生物学が融合していている点が面白いと語る。

先日行われた日本光合成学会のポスターセッションでは、83件中の5件に与えられるポスター賞を受賞。今まで国際学会や国際セミナーなど数々の場で発表してきた寺村さんにとって、今回初めての受賞となった。「これまでの研究の集大成でしっかりした内容になっていた。また、伝わるように丁寧に発表し、視覚的にわかりやすいポスター作りを心がけたことが評価されたポイントだと思います」

世界中の誰もが知らない結果を最初に手にすることができる。それが研究の魅力

高校のときから英語でのコミュニケーションに興味があり、大学入学後も交換留学生をサポートしたりと積極的に交流してきた。留学生に日本をもっと好きになってほしい、立命館での留学経験がより充実したものになるよう、日本での生活を支援したいという思いで、昨年の9月から100名以上の留学生が住む立命館大学BKCインターナショナルハウスで、13名の日本人サポートスタッフの一人として生活している。国籍・学部・学科の違う異文化の交流は刺激的で、寮での生活は心がリフレッシュされると屈託のない笑顔で話す。留学経験はないが、今では英語での論文発表も難なくこなすレベルになった。

中学・高校時代の部活を通して粘り強さが養われ、“練習した分必ず成長し、結果が現れる”と実感しているという寺村さん。その粘り強さは研究や英語にも生かされているようだ。「もともとポジティブな性格で、研究で行き詰ったときも、うまくいかないことがわかったとプラスに考えています。そしてアプローチや視点を変えてさらに追及するんです」と好奇心旺盛な彼女の研究はこれからも続く。「未知の事象が解明されていく時の高揚感と、最先端の知見を世界に発信できることが研究の醍醐味です。将来は世界で活躍できる国際的な研究者になりたいですね」と未来を見つめる寺村さんの眼差しは、希望に満ち溢れ、輝いていた。

PROFILE

寺村美里さん

立命館宇治高等学校(宇治市)卒業。中学では陸上部、高校ではラクロス部に所属。民秋均先生の生物有機化学研究室で研究に明け暮れる毎日を送る一方、BKC インターナショナルハウスレジデントメンターとして留学生が安心して快適な生活を送れるよう、サポート活動を行っている。

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