梅原さんは9月に埼玉で行われた、「天皇賜盃第85回日本学生陸上競技対応選手権大会(以下、日本インカレ)」、女子400mハードルで、56秒79の大会新記録で念願のインカレ初優勝を果たした。「自分がやってきたことは間違っていなかった。陸上をやってきてよかった」と大きな喜びでいっぱいだったという。

自分をみつめ、陸上と向き合う

梅原さんがハードルを始めたのは小学6年のとき。コーチに勧められたのがきっかけで、走るだけのときと変わらないスピード感があり、走るだけよりも楽しいと感じたと振り返る。中学、高校と陸上部で技術を磨き、中学では中学記録を樹立したものの、その後はなかなか勝つことができず、悔しい思いを胸に抱いていた。さらに大学入学後は、指示されたことをこなしていた高校時代と違い、自分で考えて練習をしなければいけないことに戸惑い、何をしていいのかわからず、やる気も出ず、陸上を楽しむことができなくなってしまった。自分自身で考え、自分を見つめ直すことから逃げていたという。


陸上と再び向き合うようになったのは、目標とする先輩の存在だった。先輩の努力する姿を日々目にし、自分よりも速い先輩たちについていきたい、と思うようになった梅原さん。そのために何をすべきなのか、と考えたことで練習の取り組み方も変わり、必死で練習に励み、改めて陸上の楽しさ、深さを実感することができたという。また、信頼できるコーチと出会えたことも大きかった。すぐに答えを与えてくれるわけではなく、自分で考えたことに対してアドバイスをもらえる。自分で考えるアプローチを与えてもらったからこそ、「自分で考える」ということの大切さを知り、成長することができたという。

過去の自分に戻るのではなく、過去の自分を越える

その成果は結果にも表れ、3回生では良い結果を残すことができたが、4回生になった今春の大会で怪我を負い、出場予定だった日本グランプリシリーズを棄権。とても悔しい思いをした。体を作り直せる機会だと気持ちを切り替え、1カ月ほどで走れるようになったが、また怪我をするのでは、という恐怖がしばらくは消えなかった。アップを長くしたり、怪我を防ぐためのメニューを取り入れ、「以前の自分を超えるためにもやるしかない」と自分を奮い立たせた。6月には、日本選手権に出場し、除々に調子を取り戻していった梅原さん。そして、9月、日本インカレ女子で最高の結果を残した。

世界の舞台を目指して

「結果を出し続けることはとても難しい。『過去の速く走れていた自分』を捨てきることはなかなかできない。しかし、私は1回生のときに過去の自分を過去のものと認めて、捨てることができた。だからこそ一から考え直して、本当の陸上を知ることができた。考え方、やり方次第で変わることができる」と梅原さんは話す。目指す先には、来年の世界陸上、そして4年後の東京オリンピックがある。「そのために覚悟を持って今まで以上に努力していきたい」と力強く語ってくれた。彼女の目には世界の舞台でハードルを飛び越え走る自身の姿が見えている。

PROFILE

梅原紗月さん

京都文教高等学校(京都府)卒業。女子陸上競技部所属。
小学5年生のとき、友人に誘われて陸上の試合に出場したことがきっかけで陸上を始める。 家光ゼミに所属し、練習における精神及び身体的ストレスについての研究を行っている。 読書を趣味とし、音楽を聞いてリフレッシュすることもある。

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