今年、7月にドイツ連邦共和国で開催された有機イオウ化学に関する国際学会「27 th International Symposium on Organic Chemistry Of Sulfur」にて金貴和さんがポスター賞を受賞した。金さんは、学部4回生の頃より、クロロフィルという植物に含まれる色素にイオウ原子を含むイオウ官能基を合成し、どのような物性を現すか、という研究を行ってきた。今回発表した研究は、吸収した光をイオウ分子によって結合したクロロフィルでエネルギー移動させる反応を観測したものだ。クロロフィルは光合成等に関わっている色素のため、この研究は人工光合成による太陽電池などエネルギー研究の基礎となるものである。

実験の楽しさを知り研究への道へ

高校時代から化学の実験が好きで、さまざまな化学反応をみることにおもしろみを感じていたが、もともと情報系が得意だったこともあり情報理工学部に入学した。しかし、「やはり自分の手で実験したい、さまざまな化学反応をこの目でみたい」という気持ちが強く、2回生で生命科学部に転部。色素など色の反応をみることに興味をもち、研究に没頭した。今回の研究に着手したのは「合成がしてみたい」「誰もつくっていない新規化合物の合成をしてみたい」という思いから。4回生で周囲の学生が就職活動をする中、実験が楽しく、「もっとやってみたいことがあるのに、この研究を今やめてしまうのはもったいない」と思い、大学院で研究を続けていくことを決意した。

飽くなき探究心

化学の実験は料理のようだと語る金さん。料理のレシピのように決まった方法に沿って実験を行えば反応が成功するはずなのに、その通りにやってもうまくいかないことも多くある。うまくいかなければ、原因を追求するため、試薬や溶媒の量、温度の調節などさまざまな条件を模索し、何度も実験を繰り返す。どんなにうまくいかなくても、考えて続ければ必ずできるという強い気持ちで実験に取り組んでいるという。「何度も何度も試行錯誤してできたときこそ達成感や喜びがある、とわかっているから楽しんで続けられる」そう笑顔で答えてくれた。

日々、実験を積み重ね、研究を続けてきた金さんは、これまでにも何度か国内、海外での学会で発表してきた。研究成果を発表した際に、審査員の方と話し、コメントをもらったり、自分の研究に興味を持ってもらえることが嬉しく、やりがいにつながってきたという。残りの学生生活では、エネルギーの移動の効率の研究などさらに今の研究を発展させたり新しい化合物の合成にも挑戦し、将来はエネルギーや環境の研究開発に携わっていきたいという。「原因をつきつめていけば、答えはみつかる」飽くなき探究心でこれからも研究の道を突き進んでいくことだろう。

PROFILE

金 貴和さん

鶯谷高等学校(岐阜県)卒業。
民秋教授の生物有機化学研究室に所属。アメリカや韓国などの国際学会にて研究成果の発表を行ってきた。学部時代はピアノサークルに所属し、韓国語、韓国舞踊も得意とする。

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