9月18日、京都の梅小路公園にて京都音楽博覧会(以下:音博)が開催された。京都駅に近く、住宅街に囲まれた公園で行われるこの音楽博覧会は今年で10回目を迎え、複数のアーティストによる演奏が行われる。今年はあいにくの雨に見舞われたが、その中、騒音計とレコーダーを手に会場付近を歩く2人の姿があった。音情報処理研究室に所属する、中橋さんと吉村さんだ。

野外で音楽を楽しむことの難しさを感じたことから始まった

音響の信号処理に関する研究をしている2人。中橋さんは昨年、研究室の西浦教授に音博の騒音問題についての話を聞き、自分たちにできることはないかと考え、昨年の音博の際に研究室では屋外で初めての騒音調査を行った。学部生時代にアカペラサークルに所属しストリートライブを行っていたが、周囲からの「うるさい」という苦情があるなど、音楽を野外で伝えることの難しさを感じていた。少しでもその問題を解決したいという思いがあったという。今年から調査に参加した吉村さんは、音楽フェスティバル(以下:音楽フェス)やライブが好きだが、野外の音楽フェスは郊外で開催されるため、不便だと感じていた。京都の中心地で行われる利便性の良い音博に興味を持ち、近隣の住民の方にどれほどの影響があり、どのように解決していけば、今後さまざまな音楽フェスを街中で開催し、より身近に感じることができるのか、と考え調査に参加することにしたという。

昨年の音博において中橋さんが行った騒音調査では、会場である梅小路公園付近や音が届く可能性があるさまざまな場所で音圧レベルを計測し、音が大きいと感じる場所を探し、その結果を主催者側に伝えた。どのエリアで騒音だと感じられるのかを調べることで、スピーカーの配置やその向きを変え、音の広がりを大きく変えることができるのだ。そして迎えた今年、2人は昨年の調査で特に音圧が大きかったエリアで、音圧レベルと時間を照らし合わせてその変動をみる調査を行った。また、ステージ付近や客席側の観客がどのくらいの音圧レベルで音楽を楽しんでいるかを測定した。今回の調査では、時間と騒音レベルを照らし合わせることで、どんな音やパフォーマンスが音圧レベルに影響しているのかを知ることができるため、今後の騒音対策にさらに役立つ調査となった。

野外フェスをより身近なものにするために

今年は雨の中での公演だったため、その影響も考えられるが、中橋さんは調査の際に昨年より音圧が低くなっており、スピーカーの配置や向きなどが調節されているように感じた。昨年は、騒音に対する苦情もあったが、今年は1件もなかったという。「昨年の調査が役に立ったようで、とても嬉しかった」と中橋さんは話す。昨年は炎天下の中、今年は大雨の中、歩きまわり調査をするのは体力的にもとても大変だったという。「街の中心地で開催される音楽フェスは山奥とは違い、地域との交流にもつながる。いつか自分たちの調査によって、街中だからこそ老若男女集まってくれるような音楽フェスになってほしい。そして、音博のように街中で多くの人が音楽を楽しめる機会が増えてほしい」と笑顔で語ってくれた。

PROFILE

中橋康太さん

東山高等学校(京都府)卒業。音情報処理研究室所属。現在は、「音に包まれているような感覚」という主観で感じるものを客観的に数値化する研究を行っている。
音楽が好きで、学部時代はアカペラサークルSong genicsでボイスパーカッションを担当した。

吉村 拓さん

山口高等学校(山口県)卒業。音情報処理研究室に所属し、臨場感のある音をもっと気軽にきけるよう、音の到来方向や距離感に関する研究を行っている。
学部3回生からは、情報理工学部のみらい塾(グローバルIT人材育成リーディングプログラム)に参加し、チームで企業から出題された問題に取り組んだ。最近では、ボルダリングを趣味にしている。

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