野田さんに学び続ける理由を問うと、「研究が一番のリフレッシュだからかもしれません。もっと踊りのことを学びたい」という言葉が返ってきた。幼少期からクラシックバレエ、新体操などを通じて踊りの醍醐味に触れ、京都教育大学の体育学専攻に進学。そこで遠藤保子先生と出会い、野田さんの人生で踊りは切っても切れない存在になった。

大学卒業後、小学校教員として勤めていたが遠藤先生の立命館大学着任を追って、1997年立命館大学社会学研究科修士課程に進学した。その年遠藤先生が中心となり開催した、日本初のエチオピア民族舞踊の公演で舞台監督を務めた野田さん。遠藤先生と一緒に現地に赴き演者を探し、舞踊団を結成したのをきっかけにエチオピア民族舞踊の奥深さに魅了された。「80以上の民族と100を超す言語を有するエチオピア民族舞踊にはその多様性が反映されていてとても面白く感じました。また、曲調が日本の演歌と同じ“ヨナ抜き音階”であることや、肩を中心とする見たことのない体の動きに驚かされ、私のアフリカ舞踊のイメージがとても偏っていることに気づかされました」と振り返る。



修士論文「エチオピアの民族舞踊~ダンスと人びとの生活~」では、舞踊動作が農耕動作や生活作業動作と関係していることに注目し、人々の生活(衣食住)と舞踊の関わりを明らかにした。修士課程修了後は、短大教員として就職したが、遠藤先生が退職されるまでにもう一度先生のもとで学びたいと思い博士課程へ。「以前も博士課程に在籍していたのですが途中で挫折し、就職、結婚、出産を経てまた戻ってきました」というバイタリティあふれる経歴の持ち主だ。

国際理解への第一歩。児童の視野が広がる教材を目指して

1年目、小学5年生の授業で開発したデジタル教材を使用したが、児童の興味を持続させるのに苦労したという。その反省を踏まえ2年目は、児童自ら興味あるものを追求するアクティブラーニング型に変更。まず開発したデジタル教材をWebで使用できるように改善し、児童の個別学習を実現。エチオピアの基本情報を日本と比較しながらクイズ形式で学習したり、映像を通してエチオピアの子どもの生活を体験したり、映像の中で一緒に歌ったり、踊るなどの交流活動ができるように工夫を重ねた。さらに3D映像を使用しエチオピア民族舞踊の舞踊動作の習得を可能にした。「3D映像の収録は大変苦労しました。収録設備の整っていない現地で収録できないかと試行錯誤した結果、キネクトでの収録を実施。3年かけて教材として使用できる映像が揃いました」。このデジタル教材が「第32回学習デジタル教材コンクール」でパイオニア VC 賞を受賞した。

「この賞をもらったことで今までがむしゃらに走ってきたことが間違っていなかったと感じ、自信につながりました。私は先生に出会い世界が広がったので、私も誰かの世界を広げられるように、新しいダンス教育を社会に還元したいです」と笑顔で語ってくれた野田さんの挑戦はまだまだ続く。

PROFILE

野田章子さん

静岡県立静岡城北高等学校(静岡県)卒業。京都教育大学卒。 大学時代アメリカのダンス教育に触れ、年齢や体型などにとらわれない個性を重視する考えかたに感銘を受ける。その後アフリカのダンスに触れてより興味を持つ。1998年には和太鼓ドンなどと一緒にエチオピアに行き、国際交流を図った。現在は居住地である長崎と京都を行き来し、長崎の大学で非常勤講師としてダンスも指導している。

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