大学入学後、「お笑いか音楽かデザインをやってみたい」と考えていた福井さんは、「演劇ならば全部ができるのでは」と、劇団西一風に入団した。入団後は役者として舞台に立っていたが、「一から何かをつくってみたい」と考え、1回生の冬、自分の経験をヒントにした初めての脚本『ピントフ』を書き上げた。「今までの西一風とは違ったものを作りたくて、ストーリーや筋に劇的な盛り上がりがなくても演劇は成立すると思った」と話すように、『ピントフ』は、ありふれた日常会話で展開するストーリーが特徴だ。そして2017年2月、福井さんが脚本・演出を務めた『ピントフ™』は、「第2回全国学生演劇祭」にて10団体の中から、審査員賞を受賞した。

一から何かをつくりたい

劇団西一風の団員数は9人。舞台美術や照明、音響など全てを団員で行い、福井さんも本番では音響のオペレーターを担う。2016年9月に開催された「京都学生演劇祭2016」へ出場するにあたり、自分の作品を公に評価してもらい、自分の力を試したいと考えていた福井さん。過去に上演した『ピントフ』をリクリエーションした『ピントフズ』の演出を担当し、勝負した。結果、劇団西一風は出演団体からの推薦を受け、「第2回全国学生演劇祭」への出場権を獲得。その後の受賞にも至った。あまり表には感情をださない福井さんは、この間、心の中では強い意気込みを持っていたと振り返る。

自分を追い込み、作品をつくりだす

脚本を執筆するにあたって大事にしていることは、観客がストーリーや役者の表現を通じて何を感じ取るかを意識すること。そのため、日常の中で考えたことや映画、お笑いなどさまざまなものからインスピレーションを得ているという。一つの脚本を書き上げるのに3週間ほどかかり、アイデアが浮かばず手が止まってしまうことも多々ある。「搾り出さないと出てこないこともあるので、強引に自分を追い込む」というように、パソコンの前に座り、ひたすら考えをめぐらせ、朝方まで粘ることもある。このような生みの苦しみもあるが、自分の考える言語化できないようなイメージが、美術や俳優の演技によって具現化されるのが、脚本・演出の魅力であり、やりがいだと語る。そして、観客が舞台を見て笑ってくれているのを見るのが、演劇をやっていてよかったと思う瞬間だという。

「全国学生演劇祭」を最後に劇団西一風を引退したが、これからも脚本・演出の活動は続けていく予定だ。すでに他団体から、脚本・演出の依頼を受けており、音響や編曲の手伝いもしていく。「これまでつくってきたような作品を、今度は社会人の方や違う環境の中でもつくっていきたい」とこれからの意気込みを語った。

PROFILE

福井裕孝さん

立命館高等学校(京都府)卒業。 中学・高校時代はサッカー部に所属。広告やデザインマーケティング、情報技術に関わる経営学に興味を持つ。劇団西一風だけでなく他の団体の公演に役者として出演することもある。

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