知事リレー講義
ライン
   2009年 4月16日        埼玉県 上田清司知事


みどりと川の再生の推進
〜埼玉発の取組を全国に発信〜

1. 概略


全国知事リレー講義では、上田清司埼玉県知事を講師に迎え「みどりと川の再生の推進〜埼玉発の取組を全国に発信〜」というテーマのもと、今年度第1回目の知事講演を開催した。上田知事は、早稲田大学大学院政治学研究科を修了された後、新自由クラブへの参画、19937月より衆議院議員に初当選といった様々な経験を経た後、現在の埼玉県知事に20038月より就任されている。今回の講義では、埼玉県における数々の施策のうち、「みどりと川の再生」に関する施策を中心に、どのように展開しているのか、どのような成果があったのかといった点などについて講演していただいた。


2. 埼玉県と「みどりと川の再生」


まず、上田知事から埼玉県の概略に関して簡単な説明がなされた。まず、埼玉県の魅力としては、たとえば「彩の国芸術劇場」や「さいたまスーパーアリーナ」などの施設や、交通の便のよさ、平均年齢の若さなどといった点を挙げることができるが、豊かな自然環境も埼玉県の大きな魅力の1つであることを述べられた。たとえば、埼玉県における県土に占める河川面積は3.9%であり、この値は全国で1位である。また、荒川の川幅の広さは最大でおよそ2500メートルもあり、そこからも埼玉県の自然の豊かさを窺い知ることができる。さらに、「見沼たんぼ」や「羊山公園」といった様々な名所も存在する。しかしながら、そのような豊かな自然環境が存在する一方で、近年においては平地林が徐々に減少していくなど、森林が本来有する機能が低下してきつつあるという問題も存在する。「みどりと川の再生」は、このような現状を背景に、豊かな自然環境を次世代へと引き継ぐために行っていると説明された。

3. 具体的な施策展開

「みどりと川の再生」施策は、具体的には、@森林の保全・活用(水源地域の森林を針広混交林等に再生、放置された里山等の再生など)、A身近な緑の保全・創出・活用(都市周辺の貴重な自然環境の保全・学校等施設の緑化など)、B環境に関する意識の醸成(環境学習など)といった事業へと展開されている。自動車税収入額の1.5%相当額および県民や企業からの寄附からなる「彩の国みどりの基金」を設け、これを財源に上に述べたような様々な事業を展開していることを説明された。

 「みどりと川の再生」施策には数多くのユニークな特徴がある。第1に、活発な県民参加による展開という点が挙げられる。「みどりと川の再生」施策を多くの県民の協力を得ながら行われていること、また、その活動を通じてさらに県民運動が盛り上がっているといった点に関しても説明された。第2に、「ゆるキャラ」の活用である。コバトンやガーヤちゃんといった可愛らしいキャラクターが植樹イベントや啓発活動に参加することによって、たとえば子供たちの積極的な活動を可能にするといった点があげられることを説明された。第3に、基金への寄付者は記念プレートを設置することが可能となる点である。結婚や子供の誕生といった人生の節目の記念に活用することができるといったアイデアは画期的である。その他にも、企業と連携した「彩の国みどりの基金」の寄附拡大、県民一人一本植樹運動の展開、民間広報番組へ積極的な参加、愛県債の発行といった様々な個性ある施策が展開されている。

4. 具体的な成果の確認


 

上田知事が強調されていたのは、上記の様々な事業を「かたちだけ」のものにせず、目に見えるかたちでアピールする点である。たとえば、「みどりと川の再生」施策の中の1つとして、どぶ川の再生事業がある。目標としては4年間で100箇所の川を再生することが掲げられているが、それを行う前に、モデル箇所として芝川と藤右衛門川の2箇所を再生する必要があることを強調された。その理由は、再生事業の的を定めることによって、川が確かにかわったことを目に見える成果として多くの県民が認識できるからであると説明された。そのほかにも、たとえば里川づくり県民運動への参加団体が、事業開始当時よりおおよそ2.6倍も増加した点(20093月末時点で125団体)を強調されるなど、目に見える成果が大事である点を強調された。

 くわえて、上田知事は「事実」を知る必要があることについても強調された。たとえば、不登校児童数の数といった点について、上田知事が着任されるまではきちんと把握されることはなかったが、上田知事は市町村ごとにどのくらい不登校児童がいるのかを調査し「事実」を明らかにすることによって、市町村の取組の活性化に尽力された。また、徴税率の割合についても、単純に前年度と比較するだけではなく、中・長期にわたってその推移を調査するなど、「事実」を確認する作業がより有効な施策を展開していくにあたって重要であることを述べられた。

質疑応答

今回は、講義スケジュールの都合上質疑応答は行われなかった。ただし、質疑応答に代わるかたちで、「みどりと川の安全」施策以外の埼玉県の施策全般に関して、丁寧に説明していただいた。上述した目にみえる成果を重視することの大切さに関する説明にくわえ、たとえば、埼玉県において事業を展開しやすくする「無担保」施策に関する説明もなされた。さらに、市町村との比較から、都道府県がなすべき役割についてもくわしく説明していただいた。上田知事が都道府県の役割として重視している点は大きく@教育施策、A県民の安全・安心の確保、B地域経済の活性化の3点であり、これらはいずれも市町村が単独で行うには困難な施策ないし事業であり、県が積極的に行っていく必要がある旨を述べられた。





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