知事リレー講義
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   2009年 5月 14日           香川県 真鍋武紀知事

 



 「 瀬戸内国際芸術祭について 」
 
 

2009年度第7回全国知事リレー講義は、真鍋武紀香川県知事をお招きし「瀬戸内国際芸術祭について」との題目のもと講演していただいた。真鍋香川県知事は、昭和383月に東京大学法学部を卒業後同年4月に農林省へ入省され、平成24月に水産庁漁政部長、翌年8月には環境庁水質保全部長といったさまざまな職を経たのちに、平成109月に香川県知事に着任された(現在3期目)。今回の講義では、2010719日から1031日まで開催を予定している「瀬戸内国際芸術祭」について、その意義や目的、内容等を説明していただいた。







T なぜ瀬戸内国際芸術祭を開催するのか




近年、一部の地域を除き多くの地域における共通の課題として地域活性化がある。より具体的には、進展しつつある過疎化問題にどのように取り組んでいけばよいのか、あるいは、いかにして過疎化を打開することができるのかが地方の政策課題になりつつある。その問題認識と並行する形で、「ものの豊かさ」から「こころの豊かさ」へと人々の認識がシフトしつつある。特に、芸術や文化への関心の高まりは顕著であり、21世紀は経済に加え「文化」の世紀でもある。真鍋知事は瀬戸内国際芸術祭開催の背景には、このような社会動向の変化がある点をまずは指摘された。

 また、真鍋知事は、瀬戸内海を大きく取り上げる理由として、以下の2点があることも併せて説明された。第1に、瀬戸内海は古くより多くの人々が生活しており、それゆえに、さまざまな豊かな文化があるからである。現在のように、道路交通網が発達・整備される以前の主要な交通手段は船によるものであり、瀬戸内海は地方と地方を結ぶ交通用路であった。これらの事情が、瀬戸内海の豊かな文化を形成するのに寄与したことを真鍋知事は説明された。第2に、高度経済成長以降、瀬戸内海の豊かな文化が失われつつあるからである。高度経済成長以後の深刻な過疎化の進展は、必然的に島々の文化の衰退をもたらした。瀬戸内海の文化に着目した地域活性化施策として瀬戸内国際芸術祭を開催し「海の復権(『希望の海』)」を目指す理由は、以上の諸点に求められる。





U 瀬戸内国際芸術祭のコンセプト




瀬戸内国際芸術祭の主たる目的は上述の通りであるが、芸術祭開催のコンセプトとして、以下の7つの具体的なコンセプトがある。

 第1のコンセプトは「アート・建築」である。このコンセプトは、瀬戸内の美しい景観・自然の中で活かされる建築は、人間が自然に関わる「技術」でもあり、これを活かすことを示すものである。

 第2のコンセプトは「民族−地域と時間」である。これは、それぞれの島で培われた多様な文化・芸術を活かすことを示すものである。

 第3のコンセプトは「生活−住民(島のお年寄りたち)の元気」である。これは、島々の人々の多様な参加を得たイベント行うことにより、元気再生の機会とすることを示すものである。

 第4のコンセプトは「交流−日本全国・世界各国の人々が関わる」である。これは、地域や世代を超えた人々との協働を目指すことを示すものである。

 第5のコンセプトは「世界の叡智が集う場所」である。これは、様々な大学や芸術家と連携することで叡智を集め、やがては地域再興の灯台となることを示すものである。

 第6のコンセプトは「次代を担う若者や子どもたちへ」である。これは、若者や子どもが参加する芸術祭を開催することにより、彼らが新たな事象に出会う感動、そして、豊かな体験を身体感覚に刻み、後の瀬戸内の未来を切り開く原動力となることを示すものである。

 第7のコンセプトは「縁をつくる」である。これは、芸術祭の開催を契機に、それぞれの島に新しい縁ができ、そこから島の再生の戦略が生まれることを示すものである。



V 瀬戸内国際芸術祭のイベント




瀬戸内国際芸術祭の具体的なイベントは、高松港を「玄関口」に、直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島のそれぞれの島で行われる。イベントは島ごとに異なり、そこには島の文化や芸術の豊かさが示されているが、ここでは紙幅の都合上、芸術祭の中心的役割を果たす直島でのイベントの概略を記すに留めることにする。

 直島には、地中美術館やベネッセハウスなど知名度の高い施設が存在する。これらの施設は世界にアートの名を知らしめた施設であり、芸術祭においても機軸となる施設として機能する旨をまずは説明していただいた。

 さらに、建築家であられる安藤忠雄氏とアーティストであられるリー・ウーファン氏のコラボレーションのもとで、新たな美術館が整備される。また、建築家graf氏と大竹伸朗氏のコラボレーションのもと、体感型の美術施設としての「直島銭湯」も整備される。そのほか、直島女文楽の開催といったイベントも行われる。このような様々なアート・文化に関するイベントが直島では開催されることを知事は述べられた。



 質疑応答

 
 

質問としては、本講義の内容と直接関わるわけではないが、@製麺所の排水問題についてどのように取り組むべきか、A住宅地での観光客の迷惑問題をどのように考えるか、といったものがよせられた。さぬきうどんへの注目の高さをうかがい知ることができる。

 @の質問については、「汚れた水を流さないよう排水規制をしているが、既存の規制では  小規模店の排水を規制することができなかった。今は、小規模店舗の排水も規制する   条例を定め、ほとんどの店に排水を規制してもらうようにしているが、小規模店舗は機械  を容易に設置することができないという問題がある。香川県では、一定の猶予期間を設  け、かつ、機械の導入が困難な店舗に対する融資を行うことでこの問題に対処している  」と回答された。

 Aの質問については、「さぬきうどんブームで多くの人々に来ていただくのは非常にあり   がたいが、住宅地にあるうどん屋では、路上駐車の多発など多くの問題が生まれる。こ  のようなお店の近くに駐車場を設置することを要請するなど、対策を講じる努力をしてい  るが、近年は、お店側の自発的な協力もみられる。たとえば、ゴールデンウィークなど観  光シーズンは開店しない、開店するにしても限定する、といった自発的な協力がそれに  あたる」と回答された。

  




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