知事リレー講義
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   2009年 6月 25日           福岡県 麻生 渡 知事

 

 「 福岡ニューディール 」
 




 2009年度第12回全国知事リレー講義は、麻生渡福岡県知事をお招きし「新製品・新市場・雇用創出17プロジェクト 福岡ニューディール」との題目のもと、福岡県が取り組んでいる地域経済の活性化に関わる政策について講演していただいた。麻生福岡県知事は、昭和38年3月に京都大学法学部を卒業されたのち、同年4月に通商産業省に入省された。そして、商務流通審議官(平成3年6月着任)、特許庁長官(平成4年6月着任)といった様々な職を経験された後に、平成7年4月より、福岡県知事に着任された(現在4期目)。

 

 

T  「福岡ニューディール」の背景



 
 現在、福岡県は、「福岡ニューディール」と称する様々な地域の経済・産業等の活性化に向けてのプロジェクトを行っている。麻生知事は、この福岡ニューディールの具体的な説明に先立ち、まず、なぜこのような積極的な地域活性化プロジェクトを推進していかなければならないのか、このような施策を講じる背景とはいったいどのようなものかという点について説明された。
 すでに多くの人々に周知されていることではあるが、現在、日本ではサブプライム・ローンを契機とした様々な経済的問題が生じている。もっとも、サブプライム問題が発覚した当初と比較すれば、現在はやや回復の兆しをみせつつあるという評価もある。しかし、麻生知事は、たしかに一息つける状態にまでは回復したが、需要がサブプライム問題の発覚する以前の状態にまで回復する希望はもてないと指摘された。
 その理由としてあげられたのが、アメリカの金融制度が依然として改革されていないという点である。麻生知事は、サブプライム問題が発生した原因として、格付けシステムや金融システムがあることを述べられた。このシステムが抜本的に改革されないかぎり、楽観視することはできないということである。また、サブプライム問題は、現代の経済システムそのものに対して懐疑心をもたせるにいたっている。これらの理由より、福岡県の地域経済・産業を活性化させるには、福岡県の経済構造そのものを根本的に変える必要がある。福岡ニューディールは、このような背景のもと進められたのである。



U 福岡ニューディールの概要



 福岡ニューディールとは、具体的には以下の17のプロジェクトの総称である。具体的には、@重点4分野(農業、福祉、新生活産業、安全)への人材移転政策、A北部九州自動車150万台生産拠点プロジェクト、B高齢者にやさしい自動車開発プロジェクト、C「水素家庭用燃料電池・燃料電池自動車」開発による低炭素社会の構築、D石炭ガス化・高効率発電システムの開発、Eシリコンシーベルト福岡プロジェクト、F日本発明プログラミング言語Rubyによる心ソフトウェア産業の育成、G情報システム共通基盤の開発による次世代電子政府・自治体の実現、Hペプチドワクチンによる第4のがん治療法の実現、I医療・介護・生活支援ロボットの開発、Jアジア若者文化ファッション交流拠点プロジェクト、Kコンテンツ産業の拠点構築プロジェクト、Lインターネット通販拡大大作戦、Mデザイン刷新による売れる商品づくり、N世界で売れる地域特産品づくりプロジェクト、Oレアメタルリサイクルプロジェクト、P炭素繊維の用途拡大とリサイクルの17のプロジェクトである。以下では、@重点4分野(農業、福祉、新生活産業、安全)への人材移転政策に関してのみ、簡単に説明することにしたい。
 現在、日本では経済不況に陥ったことにより雇用不足問題が発生している。それは、福岡県でも例外ではない。しかし、その一方で、慢性的に人手不足に陥っている産業もある。福岡県では、農業分野、福祉・介護分野、新生活産業分野、安全・保安分野の4つがそれに該当する。つまり、@重点4分野(農業、福祉、新生活産業、安全)への人材移転政策とは、これらの慢性的な人材不足の分野への雇用を積極的に支援する政策である。
 具体的には以下のような支援策を講じている。第1に、農業分野においては、「農業人材確保支援事業」(基金事業)による雇用の創出にくわえ、新規就農者の育成支援等を積極的に行っている。第2に、福祉・介護分野では、「福祉・介護人材育成就業促進事業」(基金事業)と職業訓練の大幅な拡大を行っている。第3に、新生活産業分野においては、新生活産業への参入・就業を支援することにくわえ、「新生活産業就業促進事業」(基金事業)で技能向上研修、職業紹介及び合同会社説明会等を実施している。第4に、安全・保安分野においては、就職支援、積極的な人材移転支援や情報提供、説明会の開催等を行っている。

 

 


V 地方分権について




 麻生知事は、現在、全国知事会会長でもあり、積極的に地方分権の推進に向けて活動している。その立場から、後半は今後の地方のありかたに関して、中央政府との関係という観点から説明していただいた。
 そもそも論として、なぜ地方分権なのかという点について、麻生知事は財政難等といった様々な理由があるが、(少子)高齢化の影響が大きいことを指摘された。すなわち、増えつつある高齢者をどのように守っていくかという意味で、地方分権が必要であることを述べられた。
 少子高齢化が今後さらに進展することが確実であると予測される中で、どのようなサービスが求められているかといえば、それは、地方の実情に見合ったサービスを、効率的に行っていくことである。そのためには、中央政府が一律的な規制(基準)を定めるという方式では対応できず、したがって地方分権が必要となる。つまり、地方分権をすすめていくことによって、真に効率・効果的な行政サービス供給が可能となり、ひいては、高齢者を含む多くの人々を守っていくことにつながるわけである。


 質疑応答

 

 
質問としては、@道州制の代替案はあるのか、あるのならそれはどのようなものか、A道州制を採用するうえで発生する中央−周辺問題についてどのように考えているのか、といったものがよせられた。
 第1の質問に対しては「府県制を維持したまま規模を変える案と、二層制を一層制にする案の2つの代替案があるが、後者の実現可能性は低い」と回答された。
 第2の質問に対しては「むしろ問題なのは、東京一極集中という現状である。その観点からいえば、各道州の内部における中央−周辺の格差はさほど問題ではないと考える。それぞれの地方に「コア(核)」をつくることが重要だ」と回答された。












 


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