知事リレー講義
ライン
   2009年 7月 9日   富山県 石井隆一 知事

 

 「 分権改革と『元気とやま』の創造をめざして 」
 




 2009年度第14回全国知事リレー講義は、石井隆一富山県知事をお招きし、「分権改革と『元気とやま』の創造をめざして」との題目のもと、時事的な問題等を踏まえながら、現在の地方政府の課題等について講演していただいた。石井富山県知事の略歴を簡単に述べれば、昭和44年6月に東京大学法学部を卒業され、同年7月に自治省へ入省、その後静岡県総務部長(平成3年4月)、自治省財政課長(平成6年7月)、地方分権推進委員会事務局長(平成7年5月)と様々な職を経験された。富山県知事には、平成16年11月より着任されている。


 

 

T 最近の地方分権改革をめぐる議論と課題



  平成7年より行われた第1期地方分権改革は、上下・主従の中央−地方関係を対等・協力の関係へと変化させることを主たる目的に行われた。その結果、機関委任事務等の廃止など様々な諸制度改革が行われたが、その一方で残された課題も多い「未完の分権改革」であった。特に、財政問題に関する課題は多く、三位一体の改革は地方の「格差」をいっそう際立たせる結果を生み出した。したがって、財政力格差の是正が今後の地方分権の課題となる。あわせて、地方制度調査会の答申内容や道州制の議論をさらに検討していく必要がある。以上の点を、石井知事はまず指摘された。


U 富山県をめぐる諸情勢と今後の課題



 豊かな自然が多く、住みよさランキングでも上位に位置する富山県であるが、県政の課題は多い。たとえば、富山では今後少子高齢化がいっそう進むとされるが、それにどう対応すべきか、あるいは、世論調査結果にみられる福祉の充実の声をどう政策に反映させるか、といった課題がある。これらの課題に対応すべく、現在富山県では「活力」「未来」「安心」の3つのキーワードを軸とした政策を実施している。

 


V 活力とやま





 とやまの活力を活性化させていく施策として、第1に富山県は北陸新幹線の整備・促進を行っている。それとあわせて、第2に東海道北陸自動車道の整備や、第3に富山空港および伏木富山港を拠点とするための施策(SLBの整備など)も行っている。
 また、経済対策として医薬品産業活性化調査研究事業や福祉系ロボット開発推進事業を行っており、雇用対策として、職業訓練による人材育成支援等も行っている。たとえば、新産業の創出事業、医薬品産業支援事業、企業立地の促進政策などを実施している。これらは地元産業の活性化を目的に行われている施策であるが、農林水産業支援政策や中心市街地活性化事業、広域・国際観光の振興政策なども行っており、これらも地域活性化を目的に行われている。



W 未来とやま




 明日を担う人材を育成するために、地域活性化以外にも「未来とやま」政策を富山県は実施している。それは、第1にとやま型「地域」ブランド戦略、第2に少子化・子育て支援政策、第3に教育政策、第4に男女共同参画推進政策、第5に芸術文化の振興政策である。
 地域ブランド戦略としては、チューリップやさかな、郷土料理(越中料理)のブランド化を促進している。あわせて、ツアーを設定することで、その普及を支援している。少子化対策としては、母と子の健康づくり支援、男女の出会いの場つくり、出産・乳児医療に対する支援などを行っている。教育政策としては、多くの調査結果を参考に、学校教育の充実と地域教育(ふるさと教育)の推進を行っている。男女共同参画の推進としては、女性のチャレンジ支援政策や相談センターの開設等を行っている。最後に、芸術文化の振興政策としては、世界的舞台芸術の拠点づくり支援活動などを行っている。



X 安心とやま




 豊かな自然や生活環境を活かし、住み慣れた地域の中で、健康で快適に、安全で「安心」して暮らせる県になるため、富山県では「安心とやま」政策を数多く実施している。それは、第1に県民参加による水と緑の森作りの推進、第2に医師・看護職員確保対策、第3に在宅医療・訪問看護の推進、第4に福祉・介護人材の確保、第5に健康づくり県民運動の推進、第6に環境政策である。
 県民参加による水と緑の森作りの推進政策では、県民との協働による里山林の整備や、放置人工林などの混交林への誘導等の支援を行っている。医師・看護職員確保としては、医学生等修学資金貸与制度の創設、地域医療確保修学資金貸与制度の創設、院内保育所への助成、院内助産所等の整備を行っている。在宅医療・訪問看護の推進としては在宅医療チーム作りの支援や在宅医療推進シンポジウムの開催などを行っている。福祉・介護人材の確保としては実習受け入れ施設ステップアップ事業や介護サービス支援ステーション運営事業などを行っている。健康づくり県民運動としては、県民歩こう運動推進事業や地産地消県民運動と連携した食生活改善支援政策などを行っている。最後に、環境政策としては、レジ袋無料配布廃止の取り組みや、各種調査研究の支援、国際環境協力の推進などを行っている。




Y むすび




  最後に、石井知事は、「くらしたい国、富山」を今後作っていきたいとの旨をおっしゃられた。それは、上で述べた3つの政策を推進していきながら、さらに、名画等を活かし、富山県を全国に発信ないしアピールすることで達成することが可能となる。富山への定住志向が高まりを見せる中、富山をみなが「暮らしたい」と思う県にしたいとの抱負を、最後に述べられた。





 質疑応答

 
  今回は、講義時間の都合上質疑応答は行われなかった。
 













 


Copyright(c) Ritsumeikan Univ. All Right reserved.
このページに関するお問い合わせは、立命館大学 共通教育推進機構(事務局:共通教育課) まで
TEL(075)465-8472