知事リレー講義
ライン
   2009年 7月 16日   山梨県 横内 正明 知事

 

 「 風土の強みを活かす 」
 




  2009年度第15回全国知事リレー講義は、横内正明山梨県知事をお招きし、「風土の強みを活かす」との題目のもと、現在の山梨県の課題や課題解決の戦略、さらには昨今しばしば議論の俎上にあげられることの多い地方分権改革について、講演していただいた。横内知事の略歴を簡単に述べれば、昭和39年3月に東京大学法学部を卒業後、同年4月に建設省へ入省された。平成5年には第40回衆議院議員総選挙に自民党より出馬し当選、3期ほど衆議院議員を務められた。山梨県知事には、平成19年2月より着任されている。


 

 

T 山梨学序説



  まず、横内知事は、山梨県の課題や政策について説明される前に、山梨とはどのような地域かという点について述べられた。山梨県の特徴として指摘された点は多々あるが、ここでは、特に以下の3点の特徴について簡単に説明する。
 山梨の特徴の第1は、気候の寒暖差が激しいところである。日照時間の長さもさるとこながら、山梨は盆地ということもあり、昼夜の寒暖差が大きく、それゆえに温暖化の影響を受けやすい土地柄であると述べられた。第2に、果物の栽培が盛んであるところである。桃や葡萄など山梨県では様々な果物が多く栽培され、全国に向けて出荷されている。近年では、甲州ワインへの注目も高まってきているという。第3に、宝石(ジュエリー)の生産や加工が多く行われているという点である。水晶の加工場所として有名であるが、そのほかの宝石に関しても、山梨で行われている場合が多いと、横内知事は指摘された。




U 山梨の強み・弱み



 次に、横内知事は、SWOT分析を用いながら、山梨県の強みと弱みについて説明された。第1に、山梨県の強みとして指摘できることは、東京に近いという点である。第2の強みは、自然が豊かでエネルギー資源が豊富である点である。最後に、第3の強みは、健康な県(病気になる人が相対的に少ない)という点である。
 もっとも、このような強みないし特徴を有する山梨県であるが、弱み(課題)も同時に併せ持つ。その弱みとして横内知事が指摘されたことは、山梨県の閉鎖性という特徴である。閉鎖性には、地理的な閉鎖性と心理的な閉鎖性(県民性)の2種類がある。前者は、山梨県の地理的特徴、具体的には山脈に囲まれている点、あるいは、盆地である点といった特徴から生ずるものである。つまり、このような地理的特徴であるがゆえに、外部との交流がなかなか行えないという問題である。後者に関しては、(前者との関連性も伺えるが)山梨県には「内向き志向」があるという。地理的特徴に併せて、この県民性あるいは山梨県文化ともいうべき特徴を、横内知事は弱みとして指摘された。したがって、この弱みをいかに克服していくかが、今後の課題となる。


 

V 未来の山梨づくり戦略





  横内知事は、今後、より良い山梨県を創造していくにあたって、以下の3つの戦略を特に重視していることを説明された。それは、第1に情報発信、第2に都市との交流促進、第3にグリーン産業振興である。以下では、これら3つの戦略について、簡単に説明していく。

 @ 情報発信
 上で述べたとおり、山梨県の弱みとして「内向き志向」がある。この弱みは、違った側面からみれば「強み」ともなろうが、市場あるいは地域の活性化という側面から考えれば、やはり弱みになってしまう。したがって、山梨県の内向き志向を克服し、より多くの人々へ、様々な山梨県に関する情報や製品を発信していく必要があることを、横内知事は指摘された。

 A 都市との交流促進
 情報発信だけではなく、都会、特に東京の生き生きとしたエネルギーを、山梨県に呼び込んでいくことも重要である。特に、近年では、農業志向の若者が徐々に増えてきており、都会から山梨に移住してくる若者も、少ないながらいるという。情報発信と併せて、都市との交流を促進し、人や物といったエネルギーを山梨県に呼び込む必要がある点を、横内知事は指摘された。

 B グリーン産業振興
 近年、環境にやさしい産業への関心が高まってきている。エコカーの普及促進等は夙に指摘されるところであろうが、そのほかにも、太陽光電池産業といったグリーンエネルギーへの産業化に関する注目も高まってきている。山梨県の自然が豊かである点は上に述べたとおりだが、その自然を壊さないかたちでの、産業化を促進していき、山梨県をさらに活性化させていく必要がある点を、横内知事は指摘された。




W (補論)霞ヶ関改革について




 横内知事は、最後に、@道州制についてと、A政治のリーダーシップについて述べられた。まず、前者に関しては、地方分権を進めていくに当たって最後の障壁となるのは、都道府県の「受け皿」としての規模の小ささであり、それゆえに道州制へ移行する必要がある点を指摘された。後者に関しては、選挙制度が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へ移行したことにより、リーダーシップをとることのできる政治家を輩出し難くなってきている点を指摘された。横内知事としては、以前の中選挙区制へ戻したほうがよいとのことであった。




 質疑応答

 
 質問は多く出されたが、ここでは紙幅の都合上、以下の3つの質疑応答に関してのみ記すことにする。
 まず「知事のやりがいとはどのようなものか」という質問については、横内知事は「一国一城の主であるという自負をもちながら、自身の故郷をよくするために尽力する(貢献する)という点が、知事のやりがいである」と回答された。
 次に「山梨県における若者の都会への流出問題をどう考えるか」という質問については「たしかに東京志向は強く何とかしなければいけないが、山梨に移住してきている人が増えているのも事実。減らさず、そして、増やす方策を考えていく必要がある」と回答された。
 最後に「道州制を導入することによる『県』の文化については?」という質問に対して、「たしかに既存の文化は重要だが、破綻の危機をどう乗り越えるかもきわめて重要」と回答された。













 


Copyright(c) Ritsumeikan Univ. All Right reserved.
このページに関するお問い合わせは、立命館大学 共通教育推進機構(事務局:共通教育課) まで
TEL(075)465-8472