知事リレー講義
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   2010年 6月 1日           大分県 宇佐市 是永修治 市長



 「 宇佐市からの挑戦 」
 




1. はじめに

是永市長は、立命館大学の出身であり、受講生の先輩にあたるとの紹介があった。

 

 現在、全国で立命館大学出身の市長が、私を含めて7人いる。宮津市長、姫路市長、京都市長、津山市長、岸和田市長、奈良市長、そして私である。

今日聴講されている方は、地方自治に関心がある方だと思うので、地方公務員を目指す方にはこれは心強いことだと思う。









2.. 宇佐市について


 宇佐市は大分県の北部に位置する、瀬戸内海に面した人口約6万人の市である。京都からは3時間半程度で着く。宇佐市には日本一と言われるものが5つほどある。

 まず一つは、宇佐神宮という大きなお宮である。全国に約4万の八幡宮があるが、それらの総本宮である。京都にも、町を守るために、宇佐神宮の許可を得て石清水八幡宮が造られた。鎌倉には鶴岡八幡宮がある。いろいろなところに八幡宮があるが、それらはそれぞれの土地の守り神として造られた。神仏習合の発祥の地だと言われており、世界遺産への登録も働きかけている。

 二つ目が、相撲の横綱の双葉山である。双葉山は宇佐市の出身である。69連勝という未だ破られていない記録の保持者だが、ただ強かっただけでなく、人格も非常に優れていて、今の相撲界があるのは双葉山のおかげだと言われている。

 三つ目は、「いいちこ」という焼酎である。「いいちこ」は全て宇佐市で作られている。麦焼酎の生産量が日本一である。

 四つ目は、グリーンツーリズムである。今さかんにやっている。以前京都の中学生が修学旅行に来ていた。

 五つ目は、石橋である。石橋がたくさんあり、75基残っている。そのうち64基がアーチ橋で、数、質ともに日本一である。






  

3. 地方公共団体の仕事

 

 地方公共団体がどういう仕事をするかというと、いろいろイメージがあると思うが、仕事をする上で現在どういう時代の流れにあるかということをまず知っておく必要がある。 

私は時代の流れとして大きく三つ指摘している。

(1)           人口減少時代 少子・高齢化、過疎化

 日本は明治になったとき、人口は約3000万人であったが、それ以来戦争の時を除いて一貫して人口が増加してきた。それが、人口減少時代に入っている。

 2005年の国勢調査では、人口は1億2777万人だった。次は2010年に国勢調査があるが、確実に減ると見込まれる。2005年の中位推計で、2030年には1億1522万人となり、2055年では8993万人になると予想されている。2030年までは年間50万人、2055年までは年間100万人のペースで減少していくと予想されている。2005年の人口ピラミッドには、二つの大きな出っ張りがあるが、団塊の世代と団塊の世代ジュニアである。

 20〜64歳の生産年齢人口が、2005年では7783万人、それが2030年では6305万人、2050年には4290万人となる。20〜64歳人口に対する65歳以上人口の比が、今は3:1だが、2030年には1.7:1、2055年には1.2:1となる。

現在日本では約6000万人が働いている。働く人が同じ生産性しか持たないとすれば、GDPは確実に減っていく。人口統計は非常にシビアで、生産性をどんどん上げていっても、従事する人が減ると経済規模はしぼむことになる。明治以来、2005年までは右肩上がりの経済だったが、これからは一貫して右肩下がりとなる。しかも高齢化がどんどん進む。そして生産をする人が減る。

そういった状況の中で、地方自治体としてどういった政策で応じていくといったところがテーマとなる。これは時代の流れでしょうがない。これ自体が良い悪いという話ではなく、受け止めてこの中で知恵を絞っていく。少子化対策をしているから人口が増えるのではないか、と思うかもしれないが、実はそうでもない。合計特殊出生率が極端に増えたとしても、産むべき人の人数が増えていないため、中位推計があまり狂わないのではないかと思う。多少上がっていくことも想定されるが、ほぼこういう流れでいくと思う。

(2)           グローバル時代

(経済)

 一昨年リーマン・ブラザーズという会社が倒産し、リーマンショックが起こり、世界同時不況になった。その前にはサブプライムローンの問題があった。つまり金融関係では、世界中のマネーが動いているということである。

最近では、ついこの間ギリシャショックがあった。そして、つい一週間くらい前、スペインで信用組合くらいの小さな銀行が倒産した。そうするとEU中がびっくりして、同時株安になった。ギリシャショックからどうなったかというと、5月一ヶ月の株価だけで見ても、ギリシャは16%減、ロシアは13%減、日本は12%減、スペインは12%減、中国は11%減、アメリカは8%減となった。日本だけで時価総額で35兆円ほど減った。   これは、経済が世界中で非常にグローバル化しているということである。そのからくりを見ると、日本は金融機関に預ける額が100あったとすると、貸し出すほうは70しかなく、預金のほうが多い。アメリカは100:100の割合となっており、100の預金があったら100貸しているということである。スペインやギリシャでは、100に対して160貸している。その残る60はEU内のお金が余っている国から来ている。利率が良くないと集まらないため、その金融資金は利率が良い。ギリシャで金融危機が起こったり、スペインで銀行が潰れたりすると、びっくりして資金を引き上げてしまう。そうするとEUの中で金融が一気におかしくなる。EUがおかしくなると、EUに貸している国が連鎖でおかしくなる。日本は資金が余っているため、余った資金の一部がヨーロッパにも入っている。そのため、日本も連鎖でおかしくなった。経済が非常にグローバル化しているということである。

(地球環境)

 今年に入ってすぐに大きな地震があった。また、アイルランドでも火山の大爆発があり、最近は異常気象となっている。最近の気象状況も何となく変な感じがする。COの削減も進めていかないとならない。いつ地球の環境が変動で大きなリスクを受けるかも分からない。

(安全・安心)

 昨年のこの時期、新型インフルエンザがメキシコでものすごく流行った。そして、アメリカに行っていた日本人が、新型インフルエンザにかかっているのではないかということで大騒ぎをした。メキシコで流行った新型インフルエンザがいつ日本に来るか分からないという状況である。

今、口蹄疫が宮崎ですごい状況になっている。大分県でも今必死でうつらないようにいろいろな手を打っているが、実はこれも昨年中国や韓国ですごく流行った。そのときに動物防疫対策をもっと考えておけばよかったのではないかと思う。これもグローバル化しているということである。

アメリカで、ナイル川の奥地の風土病であったナイル熱が流行っている。そういうところに調査に行く学者が病原体を持ち込み、アメリカで流行らせてしまった。世界中の小さな風土病がいつ流行るか分からないという状況である。

(情報化)

 今はパソコンを空けたら世界とつながっているように、世の中は非常にグローバル化している。

(3)           自治体倒産時代

 記憶が薄れているかもしれないが、北海道の夕張市が財政再建団体に陥ったのが頭に残っていると思う。今、国と地方あわせて債務残高が862兆円となっている。いつから抱えたかというと、バブル崩壊後景気対策を打っていったときからである。この間に右肩上がりで上がっていった。赤字公債(特例公債)が多いのが非常に問題である。公共投資関係の公債は世代間負担となるため、それほど問題ではない。バブルの後「失われた10年」をどうにかするために、日本国民ほとんどが景気対策を打てと言ってきた。そのつけをどうするのか、みんなで知恵を出すしかない。これ自体を良い悪いと論評する必要はないし、今862兆円の借金があるという事実をきちっと受け止めて、その上で対策を考えていかないといけない。 



4. 「地方公共団体(地方自治体)」から「地域公共団体(地域自治体)」へ

 

 地方自治体という言い方は、中央に対する地方という意味だが、そうではなく、地域そのものだという言い方へ変えないといけない。法律の範囲内で自治権が認められているが、法律がないと自治ができないのか。大昔、弥生時代は法律がどうのこうのではなかった。自治権は本来地域住民がもつ固有の権利だと思う。地域の自治体があって、それの集合体が国家であると思う。

今国は、基礎自治体を重視した地域主権改革を言っている。地域主権改革は一丁目一番地だと言っている。地方のことは地方の住民の意思で決め、そして国と地方は対等の立場だと言っている。今どういう形になっているかというと、国があり、県があり、市町村があり、その下に住民がいるという縦型ピラミッド。私はそれを横にしないといけないと思う。対等のパートナーシップ関係でないと自治はうまくいかないと思う。どういうまちづくりがよいのか。私は、自分たちのまちはどうあったらよいのかを真っ白から考えてみる。そうすると、住民が住んでいて良いまちだと思えることが必要。そして、そこに来る人、来た人(交流しに来る人)の満足度が高いまちにするための施策を打っていくべきだと思う。そのために職員がどうあるべきかということで、私が昨年4月に就任したとき、3つのことを決めた。頭文字をとって「トリプルA運動」という。








5. 
職員の意識改革 トリプルA運動

 

 トリプルA運動は、(1)あいさつ (2)当たり前のことをキチンとやる (3)足(現場主義)とアイデア、の頭文字をとっている。

 1番目のあいさつをしなさいというのは、市役所の仕事、行政は住民に対するサービス業だという意識を植えたかったためである。普通のサービス業では顧客満足を一番重視する。住民に満足を与える最初の取っ掛かりが挨拶。何でこういうことを言ったかというと、今までの市役所の職員はあいさつもしないということを選挙中聞いていたためである。

2番目は、当たり前のことをキチンとやることである。当たり前のこととは何か、職員はどう決められているか。憲法には、職員は全体の奉仕者であると書かれており、一部の人のためだけに働くということがあってはならない。地方自治体とはそもそも何を目的としているかというと、住民福祉の増進と書いてある。そういうことが組織目的であると書いてある。施策を打つには予算が必要だが、最小の経費で最大の効果をあげることが書かれている。法律で定められた当たり前のことをキチンとやりなさいということ。

3番目は、足とアイデアである。現場に出ないと駄目で、住民との接点が市役所の仕事である。現場を職員が見て、そこにいる人の話を聞き、その上で解決するための知恵を出すことが大事である。市だけではどうにもならないこともあるが、現場に行かずに勝手に割り振りをすると、住民からすると「市役所は何もしなかった」ということになる。最近は、「市役所の職員がよくあいさつをするようになった」「電話をしたらすぐに職員がかけつけてくれた」などの声が聞かれるようになった。








6. 
宇佐市の戦略

 

 一番に考えるのは、地理的優位性を活かすということである。宇佐市は北部九州にあるが、今北部九州には自動車の関連産業がすごく増えている。大阪府池田市のダイハツ工業の、ダイハツ車体が本社ごと中津市に来た。もともと日産やトヨタの工場がある。その3つを合わせて約150万台生産能力がある。一台の車を作るのに、約40000個の部品がいるが、九州では半分程度しか調達できていない。今後、部品関係の企業は九州にこれからもっと立地が増えてくると思う。そういったときに、今の立地条件を活かしていく。 

北九州には高速道路がない。宮崎県の東国原知事も高速道路を作ってくれと言っているが、それは大分でもまったく一緒である。私に言わせれば、これだけの企業集積があるのに、国際競争力をつけないとかえって日本の国益にマイナスになる。いまだに関西や関東から部品を送り込んでいるのはおかしい。国がやるべきだと思うが、国家戦略が欠けているのではないかと思う。







7. 
地域の潜在力を活かす

 

 先ほど宇佐神宮の話をしたが、本殿の前に大きな楠木があり、それがパワースポットということで人気を集めているなど、いろいろな素材がある。先週、フィルムコミッション協議会をたちあげた。日本では今映画やテレビやCMなどいろんな取材、ロケがたくさん行われている。ロケをするときに一番大事なのは、現地の対応が整うかどうか。例えば、火事のシーンを撮りたいときは消防車が来ていないといけない。地元の協力ができないと、なかなかできない。フィルムコミッション協議会では制作会社と協議して、ある程度条件を整えようということになった。これはかなりの期待が持てるのではないかと思う。







8. 
成長戦略を持つ(内発と外発)

 

 どのような宇佐市の成長戦略を持っていくかということでは、一つは外からの力を借りる。もう一つは内からの力を開発していく。

外発は、自動車関連産業を誘致していく。地理的に優位な状況がある。誘致のための戦略を整えていく。UJIターンによって人を誘致してくることも大事だと思っている。人口ピラミッドで見た通り、団塊の世代が60歳を超えた。まだまだ動きは鈍いが、去年だけで10組ほど宇佐に来た。今UJIターン専用の窓口を作って、NPO法人にそれを任せている。これは、今後かなり出てくるのではないかと見ている。UJIターンで来た人は高いスキルを持っている。田舎では考えられないような技術を持っている人たちは、今までの知識や経験を活かしたいという潜在的な要望はあると思う。そんなに高い賃金はいらないが、しかしタダでは困るという話になる。

そこで、有償ボランティアのような戦略が大事ではないかと思う。低コストで地域のために自分の経験を生かしてもらうという戦略が大事で、企業誘致だけではなく、人の誘致も大事である。

内発は、6次産業化によるコミュニティビジネスの創設である。農林水産業は1次産業、それを加工していくのが2次産業、それを流通に乗せて売っていくのが3次産業である。今までも接点はあったが、あまり強くはなかった。6次産業は、1次〜3次産業を機能的に連携させて、地域にある資源に付加価値をつけて地域に落ちるお金を増やそうというものである。宇佐市自体をひとつの会社組織のように捉え、1〜3次産業に従事している方が機能連携して、農山漁村の総合産業化を図っていく。コミュニティビジネスをいかに戦略化していくかがこれからの地域開発のポイントになると思う。まずは宇佐市にある1〜3次産業者を同じテーブルに乗せて、どういう資源があるか、どう付加価値をつけるか、本当に売れるのか話し合う。人材を育成し、加工品を作って体制を整えていく。

もう一つは観光である。観光は、交流人口の増加に即つながる。内なる力のためには、外から人が来てお金を落としてもらわないといけない。従来の観光では駄目で、観光やまちづくり、文化が一体化しないとならない。この4月から観光まちづくり課という組織を作った。観光を総合産業としてとらえ、とにかく交流人口を増やすという考え方で今やっている。

そのヒントはグリーンツーリズムにあった。旅行に行くときに、「るるぶ」という雑誌を見ると思うが、その意味は見る、食べる、学ぶ、の下の文字をとって「るるぶ」となっている。グリーンツーリズムはそれだけではだめで、その上に「つくる(農家体験)、語る(農業者の宿主と身近にコミュニケーションをとる)、学ぶ(農業や地域のことを学ぶ)」こういうのが加わってこそ、グリーンツーリズムになる。

グリーンツーリズムをやろうという話は全国でいろいろあったが、当時の所管官庁の運輸省観光局は、「農家に泊まるのは旅館業法の民宿になる」と言った。例えば、台所は二重に作って衛生管理をしっかりしないと困る、お客が泊まるなら最低何平米以上ないといけないなど言った。ヨーロッパではグリーンツーリズムはかなり進んでいた。日本の運輸省は頑として首をタテにふらなかった。それで、大分県の担当者が業を煮やして勝手にゴーサインを出した。まちづくりランキングで、大分県のグリーンツーリズムを認めた判断がナンバーワンとなった。今度は国のほうが驚き、大分県方式を認めようといった。これは地方自治のあるべき姿だと思う。国がどんどん規制をかけて、自分のところの権限や既得権益を大事にするのではなく、現場感覚から考えていく。このやり方は今では日本標準方式となっている。今は年5〜7000人が来ている。申し合わせをして受け入れ態勢にみがきをかけている。







9. 
地域内分権

 

 地域を考えるにあたって、地域内を分権していかないといけない。日本全体を見ても分かるが、東京一極集中で日本という国が元気かというとそうではない。当然いろいろなところが元気でないといけない。九州で言えば九州で福岡だけが良いということでも困る。

宇佐市の中で考えても、いろんなエリアごとに生き生きしていないといけない。平松前大分県知事が、グローバルに発想して、ローカルに行動するのだと言っていた。先般、モンテカセム前APU学長が、逆も真なりと言った。ローカルに発想して、グローバルに行動するのも真ではないかという話である。地球環境のように、大きく発想してローカルに行動するのも一つの考え方だが、今はローカルなほどすごく良いものがある。そして行動するときにグローバルに行動する。今はパソコンを開けば世界とつながっていて、グローバルに行動できる。地域にある小さな素材を一つ一つ掘り起こし、みがきをかけていく中に、グローバルに展開していくヒントがある。

それで、どういうことをしているかというと、まちづくり協議会をどんどん作っている。限界集落という言葉を聞いたことがあると思うが、集落ごとに、65歳以上人口が50%以上のところが限界集落という。失礼な話で私は限界集落という言葉を使わないが、マスコミからそう言われると集落の人は、「自分の集落は限界集落だ」と思ってしまう。宇佐市でも50箇所以上あるが、実際困ったことになる。この時期になると、草が生えてくる。今までは地域の人が草刈りをして車の通るスペースを確保していたり、小さなお祭りでもみんな出てやっていたりしたが、それができなくなってきた。一つひとつの集落で難しくなったのなら、小学校くらいのエリアを単位として、地域住民と行政の協働システムを作ろうとした。今ではそれを4つ立ち上げている。

これからは、「協働」が大切である。今までは、地域住民は行政に要求する。例えば、「ここは道路が悪いから、より良くしてくれ」などである。行政はそれにいかに応えていくかという関係だった。地域の有力者がいる所は道路が良いなど、そういう話だった。それは本来の行政ではなく、まちづくり協議会を作って、行政が対等の立場に立って協働していくのが大事。環境部会、安全部会、文化部会、農業部会、開発部会などがあり、こういったことをまちづくり協議会で全部やってもらう。そうして、自分で、このまちは今こういうことが課題だから、こういうのが必要だと話したときに、そこに行政も支援していく。

そういうことで、今までの陳情行政から脱却できると思う。そのための進め方には段階がある。

@     郷土を愛する、誇りに思う。この気持ちがないとまちづくりはできない。

A     郷土が寂れていくのではないかと危機感を持つ。

B     仲間を募って知恵を出す。

C     実践する。

D     継続する。継続するのはなかなか難しい。

継続するためのポイントは、キーパーソンの存在、楽しく、負担感なく実践する、行政は事務局的役割で支援して表に出ないことである。

人には4つの「ジンザイ」がある。

・人材・・・いわゆる優等生のこと。

・人在・・・ただまちに住んでいるだけの、こういう人が一番多い。まちづくりに関心がなく、自分と自分の職場や周辺にしか関心がない。

・人罪・・・足を引っ張る人のこと。まちづくりでも建設的な案を出すと必ずけちを付ける人がいる。

・人財・・・人の宝。この人はまちづくりのキーパーソンになれる方。

4つめの「人財」をたくさん作らないといけない。やり方はいろいろあるが、「若者」や、「ばか者(ばかになってやってくれる人)」、「よそ者(外から来た人は、こんなに良いものがあるのになぜやらないのかということによく気付く)」を探すことである。







10. おわりに

 

 まちづくりは究極的には人づくりに集約される。よく、「組織も人なり」、「事業も人なり」と言われるが、人づくりが財産である。今日本全体が将来への不安や閉塞感を持っていると思うが、人づくりをしていくことで日本は必ず浮上していけると思う。地域も同じだと思う。私の地域も高齢化率は30%を超えて、田舎のほうは40%を超えている。有効求人倍率も0.5もいかない。そういう状況だが、人づくりをやり、目標を持ち、そして、方向性、戦略を出して、人の知恵を結集していっている。

究極的には、人の宝である「人財」がまちのなかにあふれかえれば、まちづくりは成功していると思う。私は、立命館大学が人づくりのために、APUを作り、国際的に対応できる人材育成に努めていることを、校友として本当に誇りに思う。

最後に、私が法学部にいたころ、末川博先生の最終講義で、「未来を信じ、未来に生きる」ということを教えていただいた。これをみなさんにも贈りたい。







 質疑応答

問 国はなぜ国家戦略を作らないと思うか。

答 日本が高度成長期にあったとき、全国総合開発計画というのを作った。全総のときは所得倍増計画、新全総は拠点開発戦略(インフラ整備)がうまくいっていた。そういう時代が昭和35年ころから昭和の終わりまであった。バブルの崩壊後、国家戦略を作る方向感を見失ったように思う。方向性のない投資を行ってきた。個別省庁ごとに計画はあるが、トータルとして日本の計画がないように思う。



問 4つのジンザイという話に興味を持ったが、人財というのがとくに良いと思った。そのキーパーソンを活かした具体的なイベントを教えてほしい。

答 すべての分野が究極的には人材育成だと思う。以前、一村一品運動というのをしたが、それは大分県は一体感がなく、自分たちで誇れるものを競争したらどうかということで始まった。そのときに、一村一品運動を主導する人たちを育成する塾をつくった。それまでは、まちづくり関係者はアウトサイダーだった。そのジンザイをどう育成していくかということで、塾を作った。蔵の中に光をあててくれたという感じである。こうやるという方程式はなく、いろんなアプローチで人材育成をしていく。

 

問 ファームステイの次の交流産業として考えていることがあれば教えてほしい。

答 観光は総合産業だと思う。見て食べて遊ぶだけならsightseeingで良いが、そうではなく、まちづくりも観光の中に入ってくる。スポーツも良いテーマになる。私どもの商工会が、軟式野球の少年野球で、優勝を逃したチームを集めて試合をやっている。それで旅館が満杯になり、昼食も千食以上出た。スポーツという切り口のイベントでも地域の波及効果が出てくる。田舎には使っていないスポーツ施設が山ほどある。通常の観光の次元ではなく、知恵をしぼればいくらでもあるのがこれからの観光のおもしろいところである。



 

 


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