立命館大学
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日本代表として中国に訪問した立命館大学訪中団。実際に見て感じた、中国の姿とは?
立命館大学と中国との交流がスタートしたのは、
2007年4月中国・温家宝首相が立命館大学に来学したときから。以来、交流を深めてきました。
今年2008年3月、中国と日本の両政府がそれぞれ1000名の青年・学生を招待し、日中青少年友好交流年開幕式を実施しました。
その式典に立命館大学も招待を受け、総勢308名にも及ぶ学生、研究者などが訪中。
演奏や演技を繰り広げたほか、中国の大学と学生交流や研究交流を行いました。
今回、日本を代表して訪中した学生たちに、実際に自らの眼で見た中国の姿や中国の学生たち、
さらには訪中後まもなく発生した四川大地震についても想いを語っていただきました。
 
 
 
 
 
 
(1)それぞれの期待を胸に参加した、2008年立命館大学訪中団
   
司会 今日は、みなさんの「立命館大学訪中団」での体験を多くの人に知ってもらうために、いろんな話を聞きたいと思います。まず、訪中団に参加が決まったときにどう感じましたか?
   
二村 中国は、この前の四川大地震や環境問題とかさまざまな所で注目されています。メディアから受けた自分の印象を色濃く持ちながら、でも実際はどんな国だろうという期待もあり、複雑な心持ちのまま行きました。
   
大萩 僕の場合、実は昨年に訪中できるチャンスがあったのですが、残念ながら行けなくなってしまって。でも今回、邦楽部のメンバーで参加することができ、うれしかったです。立命館大学で邦楽をやっていてよかったと思いました。
   
宮本 今回の訪中は楽しみでした。中国というのは囲碁発祥の地でもあるし、アマチュアの部も盛んなので、「プロは強いけれども学生はどうなんだろう」といった話をみんなとしながら期待を膨らませていました。
   
山本 応援団は、スプリングコンサートと時期が重なってしまったことと準備時間も少なくてギリギリで、みんな慌ただしく参加したという感じでしたね。
   
可知 僕は学術交流のグループに参加しました。学部では環境問題をずっと研究していたので、中国へは2度ほど行ったことがありました。でも、北京と上海はまだ行ったことがなく、すごく行きたいと思っていました。個人的には、3月にちょうど就職活動をしていて、最初は迷いましたが、中国の大学生と交流できる機会があるのは貴重だと思い、行ってみようと決意しました。グループで何を発表するかを考え、準備も大変でしたが、楽しかったです。
   
五嶋 私たち立命館大学放送局(RBC)は、学生の視点から交流の様子などを撮影して、番組をつくろうと思い参加しました。
   
私は中国から、立命館大学の大学院に勉強に来ています。今回は、引率・通訳として参加させていただきました。最初は100人も引率するのはちょっと大変そうだと思いましたが、参加して楽しかったです。
   
 
   
(2)自らの眼で見た中国は抱いていたイメージと違った
   
司会 訪中団では、学術シンポジウムを行ったり、日中青少年友好交流年開幕式など、さまざまな交流を行ったわけですが、どんなことが印象に残っていますか?
   
可知 大気汚染がひどいとニュースや新聞で目にしていたのですが、実際行ったら、とても良く晴れていて、悪い印象は受けなかったですね。また、中国の学生は環境問題に対して高い意識を持ち、学内でレジ袋を使わなかったり、大学内で長年にわたり環境の研究を行っていることも知り、行く前に抱いていたイメージと違いました。
   
山本 メディアは中国に対していつも悪い方向にばかり報道していたので、私も悪い印象しかありませんでした。しかし、実際は中国の学生もすごくいい人ばかりでした。私が心に残っているのは、吹奏楽のステージの打合せのとき私たちのやりたいことと向こうのステージマネージャーとの意見がくい違って、「ここの曲はいらない」と急に言われたりしました。でも、通訳の方が一生懸命交渉してくださり、何とかステージが完成し、中国人の方も最後は感動してくれました。同時に、この経験から、言葉の壁の大きさも実感しましたね。
   
二村 私も、文化交流フェスティバルで何度か司会を務めたのですが、1回もリハーサルがなくて大丈夫かなと不安に思っていたら、しっかりと進行できていて驚きました。
   
司会 中国には中国の時間の流れ方というのがあって、日本人の常識からすると、ずいぶん違いますね。でも結果的には、きちんとしてくださるんだよね。
   
宮本 囲碁は、中国と日本で若干ルールが違うんですが、「どっちのルールでするの?」という話になったとき、言葉が通じないからもめてしまって、私自身も言葉の壁を感じました。
   
五嶋 私の場合は、言葉は通じないけど、中国の人に親しみやすさを感じましたね。いろんな場所でカメラ撮影していたら、多くの人が話しかけてきてくれました。中国の方は人情味のある人が多いんだなと感じました。
   
 
   
(3)中国の学生は一生懸命に勉強している。
   
大萩 僕は邦楽部なので、中国の民族音楽とか民族楽器に興味があったんですが、演奏を見ただけでレベルの高さがわかりました。しかも北京大学といえば、学術的にもレベルの高い大学ですよね。学びと課外活動が高いレベルで両立していることに驚きました。
   
司会 中国のみなさんは、本当に一生懸命勉強していますよね。大学生活で勉強も一生懸命しながら、課外活動もしっかりしている。これは、見習うべき部分です。
   
山本 私も、中国の学生と話したのですが、多くの学生が英語を話していました。「中国では大学までに4年間英語を勉強するから話せる」と言っていたことに、「私も何年間も勉強しているのに・・・」と少しショックを受けました。また、アニメをはじめ、日本や日本の文化についても貪欲に学ぼうとする姿勢を感じましたね。
   
五嶋 私も北京大学の学生にインタビューをお願いしたとき、中国語も英語も普通に話せる上に、「日本語で話しましょうか」と言ってくれてすごく恐縮しました。語学だけを見ても、中国の学生は勉学に励んでいて、日本との違いを考えるとすごく焦りました。
   
司会 大学生というのはまず根本的に勉強というのがあって、その上でいろんな活動があるわけです。今回、たくさんの日本人の青年が中国政府に招待されましたが、100人以上も招待されたのは立命館大学だけじゃないですか。それはすごく喜ばしいことだし、みなさんも誇りに思って頑張ってほしいですね。
   
 
   
(4)中国を知ることで、日本の魅力も再発見した。
   
司会 今回の訪問で、みなさんが学んだことや得たことはありますか?
   
二村 世界のどこにいても情報を得ることができるけど、そういうものは断片的なものでしかないということを感覚的に感じました。例えば自分が知らない国のことであったら、ひとつの情報を得て、その国を知ったつもりになるのではなく、常にその対象を学ぼうとする姿勢が大事なことを学びました。
   
宮本 私は、今までは他国に対してあまりに考えなさ過ぎだったと思います。他国や国際関係についていろいろと考えるきっかけになりました。
   
大萩 僕の場合は、中国に行ったことで、逆に日本がちょっと好きになりました。日本を客観的に見えるようになった部分が結構あると思います。外から日本を見る大切さを学びました。
   
五嶋 今回「RBCは、学内メディアとして何ができるのか」をすごく考えましたね。交流の様子をしっかりと収録して、それを日本の学生に伝える明確な目的を持てました。
   
日本での留学中、報道されているような中国じゃなく、もっと良い部分の中国を知ってほしくて、日本の学生と積極的に交流することを心がけていました。今はみなさんの話を聞いてすごくうれしくて、通訳として働いた成果があったと思います。
   
 
   
(5)自分の足りないもの、成長した点もみえた中国訪問。
   
司会 今回のような活動を経験して、何か心の変化はありましたか?
   
山本 開幕式の直前、自分たちの出演の前に胡錦濤国家主席が来られたこともあり、すごく緊張しました。そこで自分たちは日本の代表という意識が芽生え、吹奏楽部がいかに影響力のある団体かも実感できたし、活動を通じて中国の人たちともっと交流を広げていける可能性があることを感じました。
   
二村 僕が中国に行ったことで、後輩たちが国内コンクール以外にも海外の合唱団との交流にも意識を高めてくれたと思います。
   
司会 可知君は、環境という学術のシンポジウムで中国の大学生たちと同じテーマで発表したよね。
   
可知 日本の環境問題だけじゃなくて、隣にある中国、またアジア、世界というふうに自分の研究をする上での視点が広がったのは大きかったと思います。
   
司会 これはひとつの国際交流であり、みなさんにとって貴重な機会だったと思います。これらを経験して、これから何がしたいか、お話を伺いたいと思います。
   
宮本 上海交通大学で通訳をしていた学生が、今年の4月に立命館大学に留学してきたんです。その子を通じてまたほかの留学生とも仲よくなりました。これは中国に行った一番の収穫だと思います。これから彼女に日本のいいところを知ってもらい、私も彼女から中国のことを学びたいですね。
   
山本 今回の経験では、メディアから受ける中国のイメージと自分たちが体験した中国のイメージが全然違うということが一番の驚きでした。もっとアジアにも目を向けて、みんなに伝えて、悪いイメージをなくしていけたらいいなと思うようになりました。
   
二村 僕は、専門分野は英語文学なんですが、中国文化がどう変容してほかの国に越境したのか、本国の文化と離れた場所での違いはどうなのか、中国文化というものを絡めながら、研究という視点で貢献していきたいです。
   
大萩 僕は、中国語ができずあまり話せなかったんです。音楽の話もできなかったので、これからもっと勉強していきたいですね。
   
司会 言語というのはコミュニケーションのツールですから、そういう意味では大事なんだけれども、もっと大切なことは、何を話すかという中身。言葉がわかっても、自分が語る中身がなければ、意思が伝わりませんよね。そこが大事だということも知っておいてほしいと思います。
   
可知 僕は、将来的に、今勉強している環境分野での仕事を通じて、中国を初め、アジアの国の持続的な発展に貢献したいという思いがあります。今回の訪中で、自分の足りないところや逆に成長しているというところが実感できたので、残りの大学生活に活かしていきたいですね。
   
 
   
(6)四川大地震の復興に、自分たちにもできることがある。
   
司会 みなさんは、四川大地震があったことについて、どんなことを感じましたか。
   
宮本 外国のことですけど、交流してすぐのことで衝撃が強かったです。人ごととは思えず、ニュースを見るたびに「自分は何もできないのか」とちょっと歯がゆい思いをしました。
   
大萩 日本から救援隊も向かいましたが、そういう人的支援がベストだと思います。
   
二村 僕も人的支援が一番大事だと思うんですが、それだけでは足りないと感じるんです。アメリカの同時多発テロ事件のように、落ち着いた後でも精神的にショックを抱えた人がたくさんいると思うので、僕たちの普段やっている活動を活かしていければいいですね。
   
可知 パフォーマンスや演技で被災者を直接勇気づけることは難しいかもしれないですが、学内や学外でチャリティーイベントなどを行い、自分たちの考えていることや想いを行動で表すことで、少しでも力になれるんじゃないかなと思います。
   
山本 つい最近中国に行った私たちだからこそ訴えかけられるものがあると思います。ぜひやってみたいですね。
   
司会 魯さん、今の話を聞いてどう思いますか?
   
はじめ可知君から、「何かやりたい」と聞いたときは、とても感動しました。それで可知君と相談して、中国を訪問したメンバーで恩返しとして何かできたらいいなという話をしていました。
   
司会 大学としても、みなさんの意欲を大事にしたいので、もっとみなさんの中で具体化してほしいですね。このメンバーが集まったことをひとつのきっかけにして、みなさんもぜひ考え、行動してみてください。私たちもできる限りのサポートを必ずしますから。みなさん、頑張りましょう。
   
 
   
 
 
種子田 穣
種子田 穣
立命館大学学生部長
 
魯 芳 さん
魯 芳 さん
政策科学研究科
博士課程前期課程
中国と日本の架け橋となるために、
今回の交流会では通訳として参加。
二村 洋輔 さん
二村 洋輔 さん
文学研究科博士課程前期課程
人文学専攻
学生代表の大役を任された今回、メンネルコール(男声合唱団)代表として独唱も披露。
宮本 春香 さん
宮本 春香 さん
文学部4回生
囲碁研究部に所属し、中国の大学生と対局を経験。レベルの高さを肌で感じるいい機会に。
五嶋 翔一 さん
五嶋 翔一 さん
情報理工学部3回生
立命館大学放送局(RBC)として、今回の訪中を記録。交流の様子を編集した番組を製作。
可知 健太郎 さん
可知 健太郎 さん
政策科学部4回生
環境問題をテーマに研究し、今回も環境班のメンバーとして参加。初の北京と上海を経験。
山本 由香里 さん
山本 由香里 さん
産業社会学部4回生
応援団吹奏楽部の一員として訪中。開幕式典では、観客を魅了する演奏を披露。
大萩 康喜 さん
大萩 康喜 さん
法学部4回生
邦楽部のメンバーとして尺八を演奏。生で聴いた中国の伝統音楽が音楽活動の刺激に。