環境システム工学科HP 環境システム工学科

環境問題と社会経済の関わりを分析する研究

環境システム研究室

担当教員/天野 耕二・吉川 直樹

環境といっても、ただやみくもに「水をきれいにしよう!」「ごみをリサイクルしよう!」というのではありません。この地球で人間が生きているかぎり、水は汚染され、ごみも排出されます。大切なのは、どうやってバランスを取っていくのかを考えることです。様々な問題について、ライフサイクル(いわば、ゆりかごから墓場まで)全体を考えて評価するライフサイクルアセスメント(LCA)という重要な考え方があります。特に地球環境問題は複雑で、あちらを立てればこちらが立たずということがよくあります。環境システム研究室では、このようなLCA的な手法を用いて研究を進めている「環境問題のコンビニ」。特定の専門性にとらわれず、研究に必要な学問分野は全て取り込んで、社会の現実に即した研究をしているのが特徴です。

国産青果物の需要およびその消費に伴う温室効果ガス(GHG)排出量

環境管理計画策定のための現象解析及び政策分析手法に関する研究

環境計画・環境政策研究室

担当教員/市木 敦之

たとえば琵琶湖の場合、集水面積が広大で大小100以上の河川が流入しているため、その水質保全のための適切な水域管理施策を策定し、汚濁物の流出負荷量を制御する具体的な施設整備を行うためには、集水域からの汚濁物流出量や流出特性が把握できる必要があります。そのため、汚濁物の現存特性や発生・堆積・流出といった挙動特性を明らかにし、汚染のメカニズムを解明するとともに、環境管理モデルを用いた政策シミュレーションを通じて適切な水域管理施策を検討・提言することに取り組んでいます。具体的な研究テーマをいくつか列記すると以下のようなものです。
・都市や農地における汚濁物質・微量有害物質の動態解析
・都市活動に由来する大気汚染物質の現存評価
・環境中に存在する微量有害物質の生態リスク評価
・琵琶湖集水域における汚濁物流出管理支援システム
の開発とその有用性の評価
・琵琶湖の水質形成過程とそのモデル化

インドネシア・カプアス川における船上からの河川水質調査風景

環境に配慮した建設系材料およびその配合技術の開発と応用

環境マテリアル研究室

担当教員/岡本 享久

(1)セメント系硬化体からなる新規発音体の創造と環境教育の融合
●高性能セメント系硬化体を用いた新規の弦楽器および管楽器の製作技術開発(’08及び’09年度全国手作り楽器コンテストに、コンクリート製アルプホルンにて出場し賞を獲得)
●新規発音体が人に与える癒し効果の定量評価;官能検査によるセメント系硬化体の癒し効果の評価(演奏会の開催など、'11年度手作り楽器コンテスト大会予選・通過【2012.1.21全国大会】)
(2)地域性、快適性および耐震性に配慮した古民家再生の推進
●日本古来の建設材料と建造技術から成る古民家の歴史的・文化的価値調査、古民家が保有する自然エネルギーの評価と分析
(3)多孔系セメント系硬化体(ポーラスコンクリート)を用いた環境問題解決への挑戦
●ポーラスコンクリートを用いた植栽;自然の力を活かす植栽工法及び浄化工法の提案
(4)早期開放型舗装用コンクリートの開発
●材料の大部分を国産の石灰石から賄うことができる早期開放型コンクリート舗装技術をLCC、LCAから検討

コンクリート製アルプホルンの製作中。日々の研究室活動のモットーは「明るく、楽しく、逞しく」。

安全な水道水のための物理化学的処理方法の研究

環境衛生工学研究室

担当教員/神子 直之

私たちの生活を支えているとても身近な水道。炊事、洗濯、風呂、時には飲み水として水道水を私たちは使っています。
ところが最近、クリプトスポリジウムという病原体がその安全性を脅かしている可能性があることがわかってきました。クリプトスポリジウムは、感染した温血動物から排出され、環境中で生残し、塩素消毒に負けない殻の中で次の温血動物の体内で増殖するチャンスを待っています。
そのようなクリプトスポリジウムに対抗する手段として、水に紫外線を照射して消毒する方法が有効です。しかし、紫外線のあて方が小さ過ぎれば消毒は不十分だし、あて過ぎは装置や運転が不経済なものになります。そのような紫外線消毒を、適正に設計、運転するための様々な検討を行っています。

紫外線ランプの下に、微生物を入れたシャーレを置いて消毒する。

持続可能な地域づくりのための景観の計画

景観計画研究室

担当教員/笹谷 康之

学外の住民、事業者、小学生などと連携してフィールドワークを行い、地域固有の魅力的な資源を再発見して、環境まちづくり、景観形成などを提案しています。方法としては、写真、映像、アニメーション、音声などを組み合わせて、コンピュータ地図に登録して、メディアを組み合わせたコンテンツを制作して、一般の人々が地域の実態をヴィジュアルに捉え、将来像を理解しやすくする表現を試みています。具体的には、昔の地図や写真から読み取った街の過去の景観や現在の景観を3次元グラフィックスで復元して、その特徴を踏まえて、将来の持続可能な社会の景観を3次元で示しています。また、多様な価値を有している里地や里山を対象に、食料やエネルギーの供給地、水源の涵養などの国土の保全、生物多様性の保全、地域の経済的な基盤、レクリエーション活動の場としての、循環的で複合的な空間活用を提案しています。

小学生が描いた地域の将来像の絵の登録作業をサポートしている。

気候変動による水資源・沿岸域の脆弱性評価と統合的流域管理手法の構築

流域環境情報研究室

担当教員/佐藤 圭輔

近年、世界の様々な地域で水資源争奪や沿岸浸食などの問題が深刻になりつつあります。将来的に温暖化や気候変動が進行した場合には、人々の生活や産業に対して安定した水供給が益々困難になるでしょう。食糧やエネルギー資源の多くを輸入に頼る我が国においては、海外の環境変動を我が国の重要な問題に位置づけ、効果的な管理手法の提案と積極的な協力を実施していく必要があります。本研究室では、琵琶湖流域をフィールドとした現地調査と汚濁負荷物質の分析実験を実施し、大気-土壌-水-底質連結型の流域統合モデルを開発しています。また、この手法を世界の国際河川流域に展開するため、最新の地球環境情報、GIS、衛星RSなどのIT技術を活用し、モデリング手法によって水資源問題や沿岸影響の科学的構造を分析しています。さらには地域の制約条件や環境容量を考慮した最適な施策設計を行い、より持続可能な管理手法の提案を目指しています。

琵琶湖流域のGIS-RS鳥瞰図とフィールド調査の様子

持続可能な社会の創成に向けた交通システムの実現

交通マネジメント工学研究室

担当教員/塩見 康博

交通は我々の社会・経済活動や日常生活を根底で支える社会システムです。しかし、都市部では交通渋滞が慢性化、交通事故も後を絶ちません。また、地方部では車社会化が進み、中心市街地はシャッター街となり、住民の足である公共交通サービスも衰退する一方です。さらに、非効率的な交通システムは多大なエネルギー消費を招くと共に、大気汚染などの環境悪化の原因となっています。本研究室では、ITS・情報通信技術の活用を念頭に、円滑・安全・快適かつ環境親和性の高い交通システムの実現に向けた研究を進めています。具体的には、道路交通流に関する理論的・実証論的研究、高速道路交通管制システムの高度化、災害に対しても頑健な道路ネットワークデザインに関する基礎的研究、公共交通のサービス水準評価に関する研究などに取り組んでいます。

高速道路での交通情報提供の様子(オランダ)

安全な社会基盤整備のための親環境型建設保全技術の開発

建設保全工学研究室

担当教員/建山 和由・石森 洋行・内田 慎哉・横山 隆明

情報通信技術(ICT)を利用して道路、鉄道、上下水道などの社会基盤施設の建設や維持管理に関わる情報を綿密に収集し、それらの情報に基づき、使用する建設機械や資材などの施工方法や品質管理の最適化をはかる技術の開発を行っています。その一環として、汚泥やスラグ、廃コンクリート等の廃棄物については、それらに含まれる有害物質を適正に管理すると同時に、材料のもつ長所を最大限に活かしたリサイクル方法を確立することで、廃棄物の有効利用・減容化に寄与する研究も行います。また、社会基盤施設を安全・安心して利用してもらえるように、非破壊試験技術を援用した高精度・定量的な維持管理マネジメントシステムおよび寿命予測手法の開発に取り組んでいます。解析を援用した新しい非破壊試験技術により適確かつ効率的に診断するための手法ならびに誰もが簡単に活用できる可視化診断ツールの創造も行っています。

琵琶湖や飲み水を汚れからまもる

水環境工学研究室

担当教員/中島 淳

水環境の汚染や障害の認識、その原因と機構の解明、および浄化や修復のための技術に関する基礎・応用研究をすすめることにより、人類社会の福祉に貢献することをめざしています。
●琵琶湖グループでは・・・湖沼の富栄養化を引き起こす生物利用可能リンを測定して、流域から湖沼に流入したリンの挙動を研究しています。琵琶湖や周辺の内湖の調査もしています。
●砒素グループでは・・・バングラデシュの大学やNGOと共同して、地下水の砒素汚染の機構解明と持続可能な水供給システムについて研究しています。衛生学的指標として、水の大腸菌ファージなども測定します。現地調査にも行きます。
●水再生グループでは・・・生活排水の高度処理技術を研究しています。膜を用いた活性汚泥法や、生活排水からのリン除去方法、タイのバンコク近郊での生活雑排水の再生・再利用などをテーマにしています。

砒素で汚染した地下水を飲んでいる子供たちに役立つ技術とは・・・

循環型社会の評価手法とシステムデザイン

循環型社会研究室

担当教員/橋本 征二

「循環型社会」は、持続可能な社会に向けた一つの社会像を表す言葉です。リデュース、リユース、リサイクル(3R)に象徴される資源・廃棄物の循環だけでなく、自然界における炭素や栄養塩の循環、社会における人と人との循環など、より広がりをもった社会像として語られることもあります。本研究室では、日本や諸外国を対象として、以下のような疑問に答えるための研究を行っています。
●循環型社会とはどのような社会か? 循環型社会への進捗度をどのように計測・評価すればよいか?
●社会における物質循環の状態はどうなっているか、将来どうなるか? どのような資源循環・廃棄物管理の技術システムを作っていくべきか?
●循環型社会についての人々の意識はどのようなものか? 循環型社会を形成するために、どのような社会システム(制度・仕組み)を作っていくべきか?

近年廃棄物の問題と資源の問題がより密接になっています。

大気質・悪臭の評価と制御

大気環境工学研究室

担当教員/樋口 能士

大気の質や不快なにおいについて、特にヒトの嗅覚(鼻)を用いた新しい客観的な評価方法の研究をしている。日本では、悪臭の評価に「嗅覚測定法」という方法の利用が法律で定められているが、これを広く大気の質の評価に適用するための応用方法を検討している。また、大気汚染物質でもあり悪臭物質でもある気体状の有機化合物(VOC、揮発性有機化合物)を、微生物を用いて処理する装置を開発している。この装置は一般に「生物脱臭装置」あるいは「バイオフィルター」と呼ばれているが、その実用化のために、汚染物質の高い処理効率と微生物の活性や増殖のきめ細かい制御を目指している。

道路沿道空気の捕集、ヒトの鼻と機械の双方を使って道路空気の汚染の程度を評価している。

実用化を想定した生物脱臭装置試験機。ガスの流れやフィルター素材に独自の構造を有している(特許申請済)。

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