2012年12月17日更新

女性の働きやすさを国家レベルで探る

筒井 淳也
立命館大学産業社会学部准教授
筒井 淳也(立命館大学産業社会学部准教授)
博士(社会学)。1970年福岡県生まれ。1993年一橋大学社会学部卒業、1999年同大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得満期退学。2006年から立命館大学で現職。主な研究分野は、家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、経済社会学など。趣味は「以前はギターだったけど……」として、最近は京都のカフェめぐりという。「御所周辺にいい店が多いですよね。落ち着けるカフェを探しながら、のんびりと街歩きするのが好きなんです」
社会

女性が仕事と出産・子育てを両立させるのは難しいと考えられてきた。職種や会社にもよるが、子どもはキャリアのブレーキになることから、出産をためらう気持ちはよく分かる。

だが、「先進国では、女性が働く国ほど出生力(出産の実績・頻度)が高いのが普通なんですけどね」と筒井淳也は指摘する。彼は女性の就業や家族と労働のあり方などをテーマに調査・研究を続けてきた、いわば「女性の味方」だ。

「女性に仕事と子どもの二者択一を迫る先進国は、ドイツ、イタリア、韓国、それに日本だけといっていいでしょう。男は外で働き、女は家を守るという役割分業意識が背景にあり、そうした国で女性が働くようになれば必然的に出生力は低下していきます。日本はあまりにも顕著ですが、実際にこれらの国は少子化に直面しています」

近年は育児休暇を取って子育てに協力する「イクメン」が増えてきたとされるが、それでも二者択一という社会環境が変わるわけではない。

「先進国で出生力の高い国はスウェーデンとアメリカです。社会制度の面では対極にあるといっていい国ですが、それぞれ理由があります」

筒井によれば、スウェーデンは女性の公務員比率が高く、民間企業の就職者が少ないという。仕事と育児を両立しやすい環境を国が提供しているわけだ。一方のアメリカも夫婦共働きが多いのだが、育児の支援サービスにフィリピンやメキシコなどからの移民が従事しており、労働力を輸入することでコストが大幅に抑制されているのである。

「民間企業では熾烈な競争にさらされており、待遇改善にも限度があるので、女性の公的雇用も一つの方法として分析を進めています。ほとんど研究されていない分野なので、取り組む価値は高いです」ちなみに、日本における公務員の女性比率はOECDでは最下位レベル。中央政府に限っても20%程度と世界的にも低水準である。

「ただ、前提として、男性の労働時間の短縮や非正規雇用の待遇改善など、女性が安心して仕事と子育てを両立できる仕組みを整えることが大切です。日本には男女がもっと幸せになれるよう工夫できる余地がたくさんあります。その可能性を探るために、研究を進めていくつもりです」

AERA 2012年12月17日発売号掲載 (朝日新聞出版)

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