研究テーマの概要

循環型社会の評価手法とシステムデザイン

「循環型社会」は、持続可能な社会に向けた一つの社会像を表す言葉です。リデュース、リユース、リサイクル(3R)に象徴される資源・廃棄物の循環だけでなく、自然界における炭素や栄養塩の循環、社会における人と人との循環など、より広がりをもった社会像として語られることもあります。世界の人口が増加し、人々がより豊かになっていく中、地球上の限られた資源を適正な水準で循環的に利用していく社会経済システムの構築は、持続可能な社会に向けて欠かすことのできない課題です。そのような技術や社会のシステムとはどのようなものなのか。本研究室では、主にシステム論的なアプローチから、循環型社会の構築に役立つ研究を志向し、これを行っていきます。具体的には、日本や諸外国を対象として、以下のような疑問に答えるための研究を行っています。

循環型社会とはどのような社会か?循環型社会への進捗度をどのように計測・評価すればよいか?

循環型社会が目指すべき社会であるとしたら、そうした社会へ近づいているかどうかを何らかの指標を使って計測・評価し、その進捗状況を点検する必要があります。一方、指標を考えるためには、循環型社会がどのような社会で、何が鍵となる要素なのかを明確にする必要があります。このようなことから、循環型社会のあるべき姿に関わる分析や、循環型社会の進捗度を計測・評価する手法の開発を行っています。代表的な研究成果として、循環型社会像の比較分析社会の物質循環を計測する6つの指標の開発などがあります。

社会における物質循環の状態はどうなっているか、将来どうなるか?どのような資源循環・廃棄物管理の技術システムを作っていくべきか?

循環型社会に向かうためには、まず、社会における物質循環の状況を把握し、それが将来どうなるかについてのシナリオを考えた上で、どのような技術システムを導入することで現在の物質循環を改善することができるかを検討する必要があります。このようなことから、経済社会における物質フローの把握と将来のシナリオ分析(物質フロー分析:MFA)、資源循環・廃棄物管理に関わる技術システムの環境面からの評価(ライフサイクルアセスメント:LCA)などを行っています。代表的な研究成果として、建設鉱物のMFAプラスチック製容器包装リサイクルのLCAなどがあります。

循環型社会についての人々の意識や行動はどのようなものか?循環型社会を形成するために、どのような社会システム(制度・仕組み)を作っていくべきか?

社会の変革において人々の意識は重要な要素です。望ましい資源循環の技術システムがあったとしても、人々の協力がなければ実現しません。ごみの有料化などの経済的インセンティブの付与や、各種リサイクル法などの法的な仕組みが導入されていますが、改善すべき点も多々あります。このようなことから、循環型社会に関わる意識と行動の分析、循環型社会づくりを支援する制度に関わる分析などを行っています。代表的な研究成果として、小型家電回収促進手法の分析温室効果ガスインベントリにおけるインセンティブの検討などがあります。

※「芽が出る理系マガジン+R」(Vol.3 CREATIVITY 2013年度)にレアメタルに関する研究の紹介記事「レアメタル問題を数値化し、眠れる資源を未来につなぐ」が掲載されています。

※「R-GIRO四季報」(Vol.21、2015年7月)に水循環システムに関する研究の紹介記事「アジア太平洋地域の水資源を持続させる水再生・循環のシナリオ」が掲載されています。(当該箇所PDF