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第1回VSL研究会【報告】

7月25日(水) 10:00~12:00
場所
【衣笠】 研究会室1 (学而館2階)
備考
【テーマ】 「ソーシャル」な関心をもつ若者の動き方/学び方の現在
 2012年度第1回VSL研究会では、「『ソーシャル』な関心を持つ若者の動き方/学び方の現在」をテーマとし、講師には、社会起業家やソーシャルビジネス等を研究テーマとされ、若手の実践者とのつながりの深い西田亮介先生(立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授)をお招きしました。



 西田先生からは、80年代以降の「ソーシャルメディア」の発達と「新しい働き方」論の歴史を関連づけてレビューしながら、現在のソーシャルビジネスへの関心の高まりについて示されました。1995年以降は特に、社会貢献とビジネス/働き方が結びつく流れが見いだされたものの、戦後に時限付きで設計された日本型システムが残存してきたため、人々が「とびつく」ほどのものにはなりえなかったことがまず確認されました。しかし、人口減少社会への突入などの中で、現行システムが孕む問題の深刻さが可視化されていき、また、首都圏も東日本大震災の被災を経験する中で、その認識は強化され、ソーシャルビジネスへの関心が高まっていることが指摘されました。

 こうした社会的背景の中、若者は過剰なグローバリゼーション志向と安定願望の間で引き裂かれ、そのことによる危機感や不安が「ソーシャル」な動きへのコミットメントを促し、即時性/拡散性/相互浸透性を兼ね備えたメディアの発達がその流れを後押ししているのではないかと論及されました。西田先生からは、この動向を巡る主題は若者の変容ではなく、寧ろ日本社会のグローバル化であり、私たちに求められているのは、従来とは異なる「豊かさ」の価値尺度の設計を試みながら、「モデレートなグローバル化」への移行ではないかとの投げかけがなされました。

 問題提起後の討議では、「モデレートなグローバル化」を導くソーシャルアントレプレナーシップが涵養されるためにはどのような体験機会や環境を整えるべきなのかといった論点にも議論が及びましたが、営利/非営利の境界が曖昧化し、その中間領域が拡張する中、NPO創業者に限らず、企業経営者と出会い、共にビジネス経験を積む場を設ける必要性などが確認されました。その他、本学サービスラーニングセンターの実践を発展せていく上で有意義な示唆が得られました。



 ここ数年、確かに「ソーシャル」な活動へ興味関心を寄せる若者は増えています。しかし、彼ら/彼女らの問題意識の持ち方やネットワーキングの態様、活動の組み立て方は、これまでの実践者とは異なったところがあります。今回の研究会では西田先生によって、その背景に関する認識を肥やす機会を得られました。異なった社会的背景のもとで、異なった関心の持ち方をして、異なった動き方/学び方をしておれば、当然にこれまでとは異なった形態の実践になります。「ソーシャル」な関心を持つ現在の若者に対し、従来と同じように動き、学ぶよう「矯正」する必要は基本的にはないと思われ、サービスラーニングセンターに求められているのは、彼ら/彼女らにフィットする学びのデザインを探究し、新たな動きが新しい形で伸びることを支援することかもしれません。

*当日の発表資料については、西田先生のブログで公開されています。
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