Interview04

就活本番。テレビの仕事にも興味があります。

どんな心構えで臨めばいいですか?

現代社会専攻 3回生 松本 理沙

日本放送協会(NHK) 大阪放送局
コンテンツセンター ディレクター 松本 翼 (2023年 現代社会専攻 卒業)

現代社会専攻3回生の松本理沙さん。これから就職活動本番を迎えます。社会課題の解決に貢献したいという思いの中、今、強くひかれているのが、テレビ局での記者や番組制作の仕事。すでに採用選考が進んでいる局もあるらしく、今からどう準備すればいいのか、どんな就職活動をすればいいのか、切実な疑問がいっぱいです。
そこで、仕事の内容や就職活動について聞くために、NHK大阪放送局でディレクターを務める卒業生の松本翼さんを訪ねました。先輩のはからいでニューススタジオを見学させてもらった理沙さん。機材の説明や収録時の話も聞いて、すでに先輩・後輩の会話が弾んでいます。

さんしゃ先輩プロフィール

松本 翼

京都府出身。2019年、現代社会専攻に入学。所属していた永野聡先生のゼミで「60歳からの人生ゲーム」を開発し、高齢者施設などでフィールドワークも行う。課外ではバドミントンサークルで活動、塾、児童館、スーパー銭湯でのアルバイトも。2023年、日本放送協会(NHK) 大阪放送局に入局。ディレクターとして情報番組のコーナーなどを担当中。「趣味がない」ことが悩みだが、自らの傾聴力を強みに個性を磨き、今後は音楽・芸能分野の番組を担当したいと考えている。

テレビで見ていたセットが目の前に。
すごくテンションが上がりました!

松本(理)
スタジオ見学させていただき、ありがとうございました。普段テレビで見ているセットが目の前にあって、すごくテンションが上がりました!
ディレクターのお仕事って具体的にどんなことをするのかを教えていただけますか?
松本(翼)
実は、仕事でスタジオに入ることはあまりないんですよ。ディレクターの仕事は、何を取材したいかを見つけるところから始まり、実際に何度か取材をして、どんな流れで伝えるかの構成を考え、「ロケ」と呼ばれる現地での撮影をしに行きます。カメラマンさんに撮影の指示もしながらロケを終えたら、場合によっては自分で編集もして、最終的には放送する。スケジュール管理もふくめ、すべて一人でやる仕事ですね。逆に言えば働く場所も時間も比較的自由。お子さんがいる方などはリモートワークもうまく活用されていると思いますよ。
松本(理)
取材したいことがあるとして、どの枠で放送するかはどう決まるんですか?
松本(翼)
自分から提案して枠を勝ち取る場合と、あらかじめ決まった枠を埋める場合とがあります。提案の場合は、内容を簡単にまとめて提出し、面白いとか、今の社会に必要だと認められたら枠をもらえます。私はまだ1年目なので、5分から10分程度の短いコーナーや番組の制作を経験中。短くても結構大変なんですけどね。
松本(理)
取材テーマを見つける時、本当はこれがやりたいけど、世間的にはこっちが求められてるんじゃないかと考えることもあるのですか?
松本(翼)
それはベテランのディレクターさんも悩んでいることなので、経験を積みながらうまく折り合いを見つけていくしかないと思っています。正解はその都度変わると思いますね。だから「世間が求めているのは何か?」は知っておく必要があります。新聞を読んだり、SNSを見たり、細かい情報収集を常に行うことも仕事のうちだと思っています。
松本(理)
これまでに印象深かった仕事はなんですか?
松本(翼)
1年目の夏に行った、初めての生中継ですね。夏、金魚すくいの匠の元を訪れ、「すご技」を見せてもらう内容でした。面白くしようといろんな仕掛けも施してたんですが、もしミスしたらリアルタイムで関西中に流れてしまう!って考えるとすごく緊張しました。無事に放送を終えた時の達成感、カメラマンさんや、出てくださった方々と「あー良かった」ってなる、あの瞬間が忘れられません。
松本(理)
それはドキドキするでしょうね!
この仕事の大変なところとやりがいを教えてください。
松本(翼)
事件報道などの場合、被害者側の方に、聞かれたくないだろうことを聞くのはつらいです。でも、聞くのが大変なことほど放送する意味があるもの。そこを乗り越えてやりがいを感じるようになっていくのではないかと思いますね。
嬉しいのは、取材した方、視聴者、両方に喜んでもらえた時ですね。テレビならではのやりがいかなと思います。

興味の範囲が広いから「今、興味があること」を
なんでも取材できるディレクターを志望しました。

松本(理)
私は社会課題の解決に貢献できる仕事がしたいのですが、志望する業界や企業を絞ることがすごく難しいと感じています。先輩がテレビ局を志望されたのはどうしてですか?
松本(翼)
実は僕も、興味の範囲が広すぎて業界を絞れなかったんです。恥ずかしい話ですが、名のある企業を手あたり次第に受けていました。そんな中で、「今、興味があること」を取材して伝えられるテレビ番組のディレクターという仕事は、自分に合ってるのではと考えるようになったんです。
松本(理)
そうだったんですね!テレビ局を受けるのに、どんな準備をされたんですか?
松本(翼)
説明会にはきちんと出席し、感想を求められた時は、思いを込めて強い志望を伝えていました。NHKには立命館の卒業生もたくさんいるので、連絡してお話を聞きに行きましたね。理沙さんもいろんな人に話を聞いてみてほしいです。立命館ならどこにでも卒業生がいるし、キャリアセンターが公開している情報を活用して先輩にいきなりメールを送っても、皆さん気軽に時間をとってくださいましたよ。
松本(理)
私もそうします。テレビ局に関しては今、苦戦しているんです。
松本(翼)
私も準備できていない時に受けた局はダメでした。まだ大丈夫ですよ。
それから、NHKの場合はちょっと特殊で、同期に同い年の人があまりいません。大学卒業後、海外留学してから入る人、いろんな経験をしてから入る人…22歳で入る人の方が実は少数派なんです。だから、そんな考え方もありだと思います。ただ、今この時期にしっかり活動して選択肢を増やす努力はしておいた方がいいかな。
松本(理)
初めて知りました。少し視野が広がったような気がします。ありがとうございます。

教えて!先輩さんしゃの学生生活

Q永野ゼミでの思い出を教えてください。

A「60歳からの人生ゲーム」開発です。

ゼミのみんなで「60歳からの人生ゲーム」を開発しました。高齢化社会を迎え「高齢者がどんな最期を望んでいるか」を知ることが大切だと考えたのですが、いきなりそんな質問をしても答えてもらえません。そこで、「死」をゴールに、さまざまなイベントを通して、これまでの人生について考え、語ってもらえるゲームを開発したのです。高齢者施設などで実際に使ってもらい、いろんなお話をお聞きして、卒論に活かすこともできました。
もうすぐ、大学で、永野ゼミの学生と卒業生の懇親会があります。翌日にロケがあるのですが、みんなに会いたいので出席するつもりです。現役のゼミ生には就活のアドバイスもできそうですね。

60代から生涯を終えるまでの人生・最期について考える「60歳からの人生ゲーム」をゼミのみんなで開発

ふとしたきっかけが、進路につながることも。
さんしゃにはその「きっかけ」がたくさんありました。

松本(理)
大学での学びは仕事にどう活きていますか?
松本(翼)
永野先生のゼミでは、毎月のように全国いろんな場所でいろんな方にお話を聞く機会がありました。おかげで、それがどんなに楽しいか、行かなければわからないことがいかにたくさんあるかを知ることができました。
NHK志望のきっかけもゼミ活動です。当時NHKアナウンサーだった三宅民夫さんとドキュメンタリーを作る機会があり、いろんなお話をお聞きしながら番組を制作したのがすごく楽しかったし、学生の話をていねいに聞いてくださるお人柄にもひかれて「将来こんな人になりたい」と思いました。
大学入学時点では自分の興味や関心がどこにあるかがわからなくても、ふとしたきっかけが進路につながることもあります。さんしゃにはその「きっかけ」がたくさんありましたね。
松本(理)
私もそう思います。私は多文化共生に興味を持って孫先生のゼミに所属しているのですが、きっかけは、文化の違いや食生活の違いなど「そうなんだ」ですませていたことを、大学では「なぜそうなるのか?」を深く学べたからだと思います。ダブルメジャー制度で人間福祉専攻の授業も履修したことで、物事を多面的にとらえる力もついたと感じています。
松本(翼)
テレビの業界では、どうやって若い人に見てもらうかというのが大きな課題です。理沙さんは、テレビを見ていますか?
松本(理)
もちろん見ています。昔はニュースの時間になるとチャンネルを変えていたんですけど、大学で社会学を学んでいると「社会のことを知る」ってすごく大事だなって気づきました。「専門特殊講義」という授業で、朝日新聞・朝日放送の記者や編集者の方から、1つの記事や番組が完成するまでの過程を聞いたことがあります。何重にもチェックが入るメディアはネットニュースよりも圧倒的に信憑性が高いと思ったので、それ以来、テレビや新聞を通じてニュースに触れるよう心掛けています。新聞は文字と写真だけですが、テレビなら例えばアナウンサーの表情や声のトーンからも伝わるものがあるので、見ていて関心が高まります。
松本(翼)
本当ですか!局のみんなに聞かせてあげたい。
どんな番組を作りたいとか考えたことはありますか?
松本(理)
ドキュメンタリーです。例えば今度ゼミでお話を聞きに行く、移民や在日朝鮮人が多く住む大阪市生野区です。私はゼミでこの地区の歴史や伝統を学びましたが、普段の生活では知る機会があまりないんですよね。テレビの良さは、自分から情報を取りにいかなくても、何気なく見た番組を通して知ることができる点だと思っています。今後、日本でも移民は増えてくると言われているので、テレビを通して伝えたいと思っていることの1つです。
松本(翼)
その姿勢はすごく大事だと思います。苦しい胸の内を話してもらうのはすごく難しいですが、理沙さんの人柄やしっかりした考え方があれば、懐に入って本音を語ってもらえる取材ができるでしょう。
さて、学生生活もあと1年ですね。学生にしかできない経験を積むことも、ぜひ大切にしてください。
松本(理)
在学中に国内外いろんな場所を訪れて、人とのつながりを味わい、文化にも触れたいと思います。多様性がテーマの美術館や博物館があることをゼミで知ったので、作品の背景にある社会思想や見せ方の工夫も体感したいと思っています。
松本(翼)
クリエイティブな仕事をするには、何か突出した趣味などがあるとすごく強みになると思います。僕もまだ1年目なので、これから専門分野を作っていくところ。こんなに優秀で、しかもテレビが好きという方と、同じ業界で働けることを心から願っていますよ。頑張ってくださいね。
松本(理)
ありがとうございます!

総括

就活に際して、自分のキャリアビジョンが不透明であることが不安だったのですが、テレビ局では、こんな感じで仕事をしてキャリアを積むんだというイメージが明確になり、少し霧が晴れたような気がします。
自分が何にやりがいを感じるのか、これからさらに自己分析を進めたいと思います。テレビ局への志望はあきらめかけていた部分もあったのですが、NHKもまだエントリーできるので、改めて頑張ろうと思います!

学生プロフィール

松本 理沙

大阪府出身。2021年、現代社会専攻に入学。多文化共生をテーマとする孫片田 晶先生のゼミに所属。学生の目線で社会問題を見て新たな価値観を持つことの楽しさが、勉学へのモチベーション。課外活動は月2回のテニスサークル。書店でのアルバイトでは現代小説の書棚を担当、整骨院受付のアルバイトでは患者さんにお願いして就活の面接練習を行うことも。就職活動で忙しい今、息抜きは本を読むこと。大阪からの通学時間もスマホではなく読書に費やし、月10冊が目標。好きな作家は東野圭吾。最近面白かったのは湊かなえの『人間標本』。