Interview03

地元で小学校の先生になります。

どんな風に頑張ったらいいですか?

子ども社会専攻 4回生 木下 結友 (石川県立小学校教諭 内定)

高槻市立土室小学校 教諭 原口 加菜子 (2017年 子ども社会専攻 卒業)

子どもが大好きで、小学校教諭を目指し子ども社会専攻に入学した木下結友さん。努力のかいあって教員採用試験に合格、地元の石川県で小学校の先生になることが決まりました。
憧れの仕事に就けることへの喜びと期待はいっぱい。でも本当に自分にできるのかな?という不安もあって、現在いろんな情報を収集中。そのたびに「頑張らなきゃ」と肩に力が入ったり「でもどうやって頑張ればいいの?」と逆に迷ったりしてしまうこともあります。
そこで、子ども社会専攻の先輩で、高槻市立土室小学校1年生担任の原口加菜子先生を訪ね、小学校教諭の仕事のリアル、育休明けの生活などについて聞きました。

さんしゃ先輩プロフィール

原口 加菜子

和歌山県出身。2013年、教員を志望し子ども社会専攻に入学。人間福祉専攻竹内謙彰先生のゼミで子どもの発達に関する卒業論文を執筆。書道部でも活動。大阪府教員採用試験に合格し、2017年、小学校教諭として大阪府高槻市立土室小学校へ赴任。2歳児の母として仕事と家庭の両立に奮闘中。休日は、大学時代を過ごした京都へ行くことも。京都タワーを見ると「帰ってきた」という気持ちになり、つい写真を撮ってしまう。ストレス解消法は友達と話すこと。

時間を上手に使っても終わらない仕事があったときは
区切りをつけて帰ることも大切だと思います。

木下
地元の石川県で小学校教諭として採用されました!
嬉しい反面、いろいろ不安もあります。今日は、原口先生から小学校の先生の仕事についてリアルなお話を聞きたくて来ました。
原口
おめでとうございます。よかったですね。
私は教員になって7年目、今年度は1年生の担任です。授業以外にも本当にいろいろな仕事がありますよ。クラス運営、生徒指導、保護者へのお便り作り…学校運営の業務を教職員全員で分担する校務分掌もあります。私は体育部として運動会の実施方法を話し合っている最中。細かいことでは棚の移動や大掃除など、挙げ始めたらきりがないくらい多くの仕事があります。
木下
お子さんもいらっしゃるとうかがいましたが、1日のスケジュールはどんな感じですか?
原口
2歳の子どもがいます。育児休暇は1年だけ取得して復帰しました。
朝、教室で子どもたちを迎えたいため、7時40分頃に学校に来ています。授業が終わるのは15時前。17時退勤が目標ですが、宿題作り、学年だより作り、会議出席などで18時頃になることもあります。帰宅すると、夫が子どもにご飯を食べさせてくれているため、私も急いで食事をして、子どもとお風呂。今はバタバタの毎日ですね。
木下
お子さんが生まれてから仕事の仕方は変わりましたか?
原口
帰宅時間を意識するようになりました。働き方改革で職場全体として早く帰ることが奨励される雰囲気。時間を上手に使って、それでも終わらない仕事があったときは、区切りをつけて帰ることも大切だと思います。
子どもを持つと、クラスの子どもたちがご家庭にとってどれだけ大切な存在か、どんな点を心配されるのかもわかるようになりました。一人ひとりのいいところをたくさん見つけて個人懇談などの機会にお伝えしようとより意識するようにもなりましたね。
木下
私も将来子どもを育てながら働くかもしれないので、帰宅時間のことは気になっていました。
自分の育児経験を子どもたちや保護者との関わり方にも活かすことができる仕事なんですね。

「授業が分かった、できた、楽しい!」という体験が
学校に行きたい気持ちにつながる。

木下
どんなところにやりがいを感じますか?
原口
やってみようと考えたことをすぐに実践に移せるのが小学校のいいところです。例えば、今年は子どもたち自身に考えさせる機会を多く作ろうと考え、実践しているところ。「どうしたらもっと仲良くなれるかな」などのテーマについてみんながニコニコできるように考えてみようと一人一人が一生懸命考えて、自分たちで役割やルールを決められるようになってきた様子を見るととても嬉しいです。最初は混乱しないか心配でしたが、子どもに任せてみることも大事だと実感しました。
ダンスや運動など、特技があればそれをクラス活動に活かすこともできる仕事です。私は特技といえるものがないのですが、その分、できない子の気持ちをわかってあげられるのかなと思っています。
木下
私も特技がなくて、強みのある人がうらやましかったのですが、確かに、できない私だからこそ、そちら側に立って支えてあげられるんですね。
気になるのが授業の準備です。大学の模擬授業ではすごく時間をかけて準備していました。それを1日に何コマ分もやるんですよね。どうやって時間をうまく使っていけばいいかわからなくて。
原口
わかります。私も最初は1コマの準備に3時間かかったこともありました。でもだんだん要領がつかめるようになりますよ。
まず、指導書も参考にし、子どもにどんな力をつけさせたいのかを考えてから、子どもと同じノートを作ります。1年生の算数だったら大きなマスのノートに、子どもに書かせるのと同じことを書くんです。そして、自分が話す言葉も簡単に書いています。余裕があれば板書の計画もあった方がスムーズに授業できますね。
木下
なるほど…
原口
今は子どももいて以前ほどは時間をかけられないのですが、1年目からコツコツ頑張った蓄積があるので助かっています。毎年授業づくりをしていく上で授業の中で気づいたことを書き込んでいくと前回の反省を活かしてより良い授業づくりができると思います。
「子どもは授業がうまい先生についてくる。だから授業が一番大切」と教えられたことがあるのですが、今、それを実感しています。「授業が分かった、できた、楽しい!」っていう体験が、学校に行きたい気持ちにつながると考えています。
木下
「授業が大切」と聞いてはいましたが、あまり実感が持てていませんでした。でも今のお話は心に刺さります。授業の準備は特に、最初からしっかり頑張りたいと思います。

教えて!先輩さんしゃの学生生活

Q大学生活の一番の思い出は?

A採用試験に向けて仲間と頑張った日々です

課外活動では、書道部で活動していました。でも一番の宝物は、仲間と協力しながら採用試験に向けて頑張った日々。本当に楽しかったから、今でもあの時に戻りたいくらいです。当時の友人とは今でも毎日のように連絡し、支え合っています。
先生方やPSTルームのスタッフさんの面倒見の良さも忘れられません。いろんな相談もしたし、模擬授業や面接の練習でも手厚いサポートをいただきました。特にお世話になったのは子ども社会専攻教員の岡本尚子先生です。仕事で自信がなくなった時、ほめ上手な先生からもらった嬉しい言葉を思い出して「また頑張ろう」と思うくらい心の支えになっています。今でもたまに連絡して話を聞いてもらっているんですよ。

※PSTルーム(PST=Primary School Teacher):小学校教員になるための教材研究・模擬授業準備・採用試験に向けての学習で活用できる施設
書道部の作品

「この先生がいるから学校に行こう」と
思ってもらえる、安心感のある先生に。

木下
地元の小学校は教育学部出身の人が多いので、学んだ知識や技能などに何か違いがあるのかが気になっています。実際にはどうですか?
原口
違いはないですね。現場では出身大学や学部など一切関係ないし、そのような話をしたことはありませんよ。木下さんも1回生の頃から教員になることを見据えた専門的な学修をしてきましたよね。自信を持って現場に立ってください。
木下
安心しました。逆にさんしゃ出身の強みってありますか?
原口
小学校の先生って、民間企業の営業職や大学の先生など、いろんな経験を持つ方がいらっしゃるんです。さんしゃは他専攻の授業もとれるし、いろんな人と関わる機会もありますよね。社会について幅広く学べて、価値観の違う人ともうまくやっていく力が自然と身につけられたことは強みだと思います。
私は子どもの発達について学びたかったので、その分野の専門家である人間福祉専攻の竹内先生のゼミに所属していたんですよ。教員志望の人以外の人間関係が築けたのも良かったと思います。
木下
私も、学部共通科目で他専攻の人と子どもに関するグループワークをした時、私は教育の視点から、他専攻の人は福祉やメディアの視点など、それぞれ別の視点から話すのがすごく面白いと感じました。
原口
在学中、早くから採用試験の勉強に集中している人を見て「私はこれでいいのかな」と思うこともありました。でも、そんな時に違う専攻の人と話すと「自分らしく頑張ればいい」と思えて。気持ちの切り替えもしやすい環境でしたね。
木下
私は以学館のPSTルームでよく勉強していました。息抜きに外に出れば、キャンパス内の自然で気分転換できましたし、春は桜並木が本当にきれいで、ぼーっと眺めるのが楽しみでした。一人暮らしなので学食のごはんが美味しいのもありがたかったですね。
そうそう、最近、さんしゃのある以学館のトイレがホテルみたいにきれいになったんですよ。
原口
いいですね!特に女子学生にとっては嬉しいことですね。
さんしゃでの学びを通じて、木下さんはどんな先生になりたいと思っていますか?
木下
子どもたちにとって安心感がある先生になりたいです。この先生がいるから学校に行こう、先生とこんな話したい、と思ってもらえる先生です。
原口先生は、どんな目標をお持ちですか?
原口
「居心地のいいクラスにしたいな」といつも思っています。子どもたちにとってはもちろん、私自身にとっても。今、クラスに入るとすごく安心できるんですよね。1年をかけて、居心地のいい関係を子どもたちと築けたんだなと感じて嬉しくなります。そういう場所をこれからも増やしていきたいですね。
木下
わあ、私の理想のクラスです。私も子どもたちとそんな関係が築けるかな。
原口
絶対にできますよ。お話ししていて、木下さんの謙虚さ、誠実さをすごく感じました。そのままできっと大丈夫です。

総括

原口先生から、率直なお話をたくさんお聞きできてすごく勉強になりましたし「そのままで大丈夫」と言ってもらえたことも嬉しく、力になりました。
私の憧れる居心地のいいクラスを作ってらっしゃる原口先生と出会えて「こんな先生になりたい」「こんな風に頑張ればいいんだ」ということが明確になりました。春から子どもたちと精いっぱい向き合いたいと思います。

学生プロフィール

木下 結友

石川県出身。2020年、子ども社会専攻に入学。野原博人先生のゼミに所属し、教育心理学分野のメタ認知に関する卒業論文を執筆。大学の近隣にある公立小学校での学習支援員活動を通して支援の必要な子どもとの関わりも学ぶ。将来、学校以外の場における子どもたちの支援も視野に入れつつ、まずは学校現場での仕事を通して、教育や支援の方法を学びたいと考えている。教員採用試験後は、カフェでのアルバイトや旅行なども満喫中。モチベーション回復法は非日常を味わうこと。外の空気を吸い、いつもと違う道を散歩するだけでリフレッシュできる。