<Animation Archive Project>


平成 10 年 6 月 11 日

「人材育成におけるアニメーションアーカイブの活用に関する研究」
研究計画書

 1 研究テーマ

 人材育成におけるアニメーションアーカイブの活用についての研究
  〜アーカイブの方法論とその活用に関する問題解決のために〜

 2 研究期間

 平成 10 年 4 月 1 日から平成 11年 3 月 31 日

 3 研究団体名

 立命館大学 政策科学部 細井研究室 AAPチーム
 代表者 溝口達洋

 4 研究課題の背景

 日本のアニメーションが新しいメディア文化として登場して、早三十余年が過ぎた。初期には子供向けの低俗なメディアとしての認識も少なくなかったが、今や一つの文化としての地位を確立し、しかも日本のアニメーションは『ジャパニメーション』と呼ばれるほどに、質・量とも世界のトップを走っていると言っても過言ではない。その内容も、ただ単にエンターテイメント性のみを提供するに止まらず、その時々の社会背景や世相が反映されたり、哲学、宗教、精神面、環境問題をテーマとして取り上げるなど、社会的・文化的色合いをも色濃く有する作品も少なくない。
 活字離れが叫ばれて久しい現代社会において、幼い頃からアニメーションに慣れ親しんだ若年層の世代はもちろん、中・高年の世代にも動画、声、音楽という構成要素で成り立つアニメーションは馴染みのあるメディアであり、様々な研究・教育の教材としての応用展開も望める幅広い可能性を持ったメディアと言える。
 しかしながら、現段階ではアニメーションというメディアを社会的に活用するための研究体制や基盤などが確立されておらず、アニメーションは未だ見て楽しむだけの存在であり、文化として成熟したとは言い難い。そこで、現存するアニメーションをデータベース化することによって、過去のアニメーションを活用可能なリソースとして整備し、さらには実際のアニメーション制作の現場というものを疑似体験させることにより、未来のアニメーション制作に携わる人材育成の場、楽しみながら学んでいく『エデュテイメント』の場を創造、活用していくことを目的とする。

 5 研究の対象と目的

 そのための具体的研究内容として、以下の二つを提示する。

  (a)利用者のニーズに応えられる、フレキシブルなアニメーションアーカイブの開発
  (b)そのデータベースを活用した新しい人材育成システムのコンセプト構築と試作。その
    具体案の一つとして
疑似声優体験(Virtual Voice Play、略してVVP)システムの提案

 1)アニメーションアーカイブの開発
   ・幼少期からアニメーションに慣れ親しんだ我々学生の視点から、より利用者のニーズ
    に近い、柔らかな(フレキシブル)アーカイブの構築。
   ・アーカイブ構築に当たっての具体案としては、大まかなジャンル分けをベースにして、
    作品名、監督などはもちろん、シナリオ、原案、キャラクターデザイン、作画監督、キャ
    ラクター、声優など、利用者が多様な視点から検索するときにもヒットするような検索項
    目の設置。
   ・今回のプロジェクトに関しては、『声優』という視点から特化したアーカイブ製作を行うた
    め、例えば名ゼリフや必殺技のコールなどを音声データとして乗せたり、ということがア
    ーカイブ製作上の一つの案としてある。

 2)VVPシステムの構築
   ・アニメーションのあるシーン、いわゆる名シーンをピックアップし、その部分の台本を用
    意することで利用者にキャラクターの声を当てる(アフレコを疑似体験してもらう)システ
    ム。
   ・様々なアニメーションの様々なシーンを提供していく、例えば一人でやって来る人には
    ヒーロー・ヒロインものを、グループでやって来る人にはグループものを、カップルでやっ
    て来る人には恋愛ものを、親子連れにはファミリーものを、という風に色々なスタイルを
    提供することで、幅広いターゲットの獲得を狙う。
   ・VVPの前提となっているアニメーションアーカイブを利用することで、将来的には利用者
    のニーズに対応した作品、シーンの提供を目指す。

 3)VVPシステム活用による人材育成の展開
   ・利用者が持ち込むオリジナルの作品(例えば、クラブで制作した作品等)にもアフレコ
    できる場所を提供。民間レベルのアニメーションや映像制作に対する協力体制、並び
    にアフレコや制作の現場を体験する広い窓口としての開放を行う。
   ・アニメーション専門学校生のアニメーション作品を対象にしての声優コンテスト、或い
    はオーディションといったものを展開。実力者には専門学校の斡旋等、デビューへの道
    のりを用意する。

  などが考えられる。


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