待機児童数の推移
待機児童数の推移
1995年から2000年は、厚生労働省「保育サービス需給・待機の状況(平成12年4月1日)」
1999年は、厚生労働省「保育所の入所待機児童数(11年4月)等について」
2001年から2009年は、厚生労働省「保育所の状況(各年4月1日)等について」
2010年から2014年は、厚生労働省「保育所関連状況取りまとめ(各年4月1日)」
より作成
なお、保育所定員と入所者数は、後に修正されていますが、いずれも発表当時の数のままにしています。

<解説>
 2014 年で保育所利用者数は保育所定員の97%に達しており、年や場所のミスマッチが生じることを考慮に入れると、飽和状態にあると言えるでしょう。さらに、保 育所定員が増加しているにもかかわらず、飽和状態である充足率がほぼ同様で、むしろ上昇しているということは、利用したいと思っていても空きがないために 利用を断念している潜在的な利用希望者が多く存在していると推測できます。
 それでは利用希望者はどのくらいいるのでしょうか。厚生労働省は、 1995年から待機児童数の調査集計を発表しています。上の折れ線グラフがそれにあたります。厚生労働省は2001年調査より待機児童の定義を変え、「従 来ベースでは、(1)他に入所可能な保育所があるにも関わらず第1希望の保育所に入所するために待機している児童や地方単独保育事業を利用しながら待機し ている児童について、待機児童数に含んでいた。」(「保育所の状況(平成13年4月1日)等について」)ものを除きました。そのため、2000年から 2001年にかけて、従来ベースであれば34153人から35144人へと待機児童が約千人増加しているにもかかわらず、折れ線グラフでは、34153人 から21031人と1万人以上大幅に減少したかのように見えてしまいます。そのため、ここでは別の折れ線にしてあります。2010年から、参考として地方単独保育施策の利用者数を公表していますので、 旧定義と同じではありませんが、その数を加算したものも「旧定義」として提示しています。それをみると、2010年からの待機児童数の減少は、地方単独保 育施策の利用者が大きく拡大していることも反映しているのではないかと考えられます。
 旧定義が妥当な定義であったというわけではありません。2014年調査の段階での定義は別紙のとおりです(2015年調査での定義については、朝日新聞2015年8月3日付を 参照してください。*補足)。そこでは、入所申請され要件充足だが未入所の者と定義されています。まず①入所申請されていることが必要です。入所申請されていて も、②休職中は状況把握して、③保育所以外(国庫補助による家庭的保育等、地方単独保育施策、認定こども園)で保育されている児童、④入所保留者、⑤転園 希望者、⑥入所可能保育所があるが入所しない者、が除かれています。しかし、①については、保護者は入所申請の前に保育所を調べますが、その際に入所困難 とわかれば、申請せずに、祖父母あるいは未認可保育所等の対処をとります。③については、保育環境等の点で、保育所を希望する者もいます。⑤についてはも 同様です。⑥については、たとえば入所可能として登園に30分以内の保育所があげられていますが、勤務場所とは反対方向に30分の場所であったりすると、 往復で1時間かかってしまいます。いずれも、待機児童の定義から除外することは適当ではないように思われます。
 *補足:新聞報道によれば、2015年 調査では、②について調査時点で求職活動を休止していれば除外、育児休暇中の者は除外できる、③の範囲に認可をめざす施設・幼稚園の長時間預かり・幼稚園 の一時預かりを含め、幼稚園・認定こども園・地域型保育などへの入所希望者は除外する、との新たな定義に変更したと伝えられています。
 それでは、いったいどの程度の潜在的待機児童が存在するのでしょう。推計は困難ですが、元経済産業省官僚でNPO法人社会保障経済研究所代表の石川和男氏は、「何らかの保育サービスを必要とする待機児童」を185万~345万人と推計しています。実に、厚生労働省の考える待機児童数の約100倍にのぼります。この数字が妥当か否かはともかく、厚生労働省の言うよりもはるかに多くの待機児童が存在することは確かだと思います。そうすると、おそらく現在の待機児童解消策(参照:平成26年版少子化社会対策白書) で不十分であるだけでなく、考え方自体を転換する必要があるのではないでしょうか。私自身は、これまで保育サービスが働く者の利益のためという発想であっ たのに対して、保育サービスによって労働者が働き続けられることは企業にとっての利益であることから、これまで等閑視されてきた企業責任を果たすべきであ るとの視点が必要だと考えています。

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