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唐 詩 と 日 本


は し が き

 中国は長い詩歌の歴史を誇っている。当然、各時代に特色があって、それぞれに優れた詩人が現れ、名作が詠われた。しかし、その中でも詩仙李白や詩聖杜甫という巨星が大きく輝き、あまたの名家がそれを囲む星のようにきらめいた唐代(西暦618〜907)の詩の天空こそ、最も美しいものとして仰ぎ見られてきたといえよう。また日本への影響においても、やはり唐に優る時代はあるまい。唐詩が日本でどのように受けとめられたかについては、これまで多く論ぜられているが(例えば村上哲見氏『漢詩と日本人』1994年・講談社)、筆者が興味を覚えるいくつかの事柄をここに記し、唐詩の絢爛たる世界へのいざないとしてみたい。それでは、先ずは1300年ほど時代を遡って説き起こそう。


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