講師・天沼澄夫(あまぬま・すみお)氏
昭和21年生まれ。立教大学経済学部卒業。
昭和44年キングレコード入社。営業、洋楽販促、営業企画室長を経て洋楽部長、国際事業部長などを歴任。
平成5年に取締役、平成9年に常務取締役に就任。
現在、株式会社キングインターナショナル社長。
主として営業企画畑を歩き、ワールドミュージック、日本の伝統音楽、クラシック、ヒーリング・ミュージック、朗読など多様なジャンルで商品化を行う。
手掛けた新譜タイトル数は1万を超える。また300を超える海外レーベルを輸入している。
「多様な音楽マーケットの創造」
はじめに
今日は私がこれまで体験したことのなかから、多少なりとも役に立ちそうなことをかいつまんでお話したいと思います。「多様な音楽マーケットの創造」というタイトルの観点は、音楽マーケットは「オリコン等」のチャートだけではないということです。レコード会社の合言葉は「アーティストの育成」ですが、もう一方でヒットチャートには当たらない音楽という別のマーケットがあって、タイトル数ではそのほうが圧倒的に多い。しかもそれはなかなか表には出てこない。そういった音楽について、今日はお話したいと思います。
1.日本と世界の音楽マーケット
(1)日本の音楽マーケットの変遷
日本のレコード産業直近50年の歴史のなかでまず注目していただきたいのは、1998年以降は音楽の売り上げが下がってきた時期ですが、ここ2年間で変調が起こっています。ふたたび上昇に転じてきたんですね。CD、音楽DVD、音楽配信の3つを足してみると、音楽の売り上げは増えてきています。
(2)世界のマーケットと日本
世界と日本の音楽マーケット比較してみると、日本でつくった原盤が日本の音楽マーケットを占める比率は、2006年でいうと74%を占めています。アメリカではポップスを中心に93%。これは売られている原盤の93%が自分の国の原盤だということです。当然といえば当然ですが、イギリス(50%)、ドイツ(46%)、フランス(61%)などをみてみると、自国のものも半分近くあるものの、このあたりは国境が接近していますから海外ものが多くなっています。さらにスイスは9%、オランダも16%しかありません。一方でトルコは92%、インドは90%です。これは自国音楽産業が成熟しているという側面よりも、インターナショナル・レパートリーがほとんど聴かれていないということだと思います。
また、日本の音楽マーケットの特質で、「再販売価格維持契約」通称「再販」と呼ばれているものがありますが、再販制とは、どこのレコード屋さんでも一定期間、新譜を同一の価格で売ることが法律で守られているわけです。これは日本だけです。それから貸しレコードも日本にしかありません。ビデオレンタルはどこにでもありますが、CDレンタルは世界で日本だけです。
(3)多様な音楽ジャンル
邦盤のポップ、ロックスが、みなさんが一番関心のあるジャンルだと思いますが、カタログ数で言うとこのジャンルは日本の音楽マーケットの32.4%、つまり3分の1を占めています。洋盤ポップ、ロックスはビルボードなんかで上位に入っているものが多いですが、ありとあらゆる洋盤を含め16%です。それからクラシック16%、演歌10.8%、その他の邦盤(ジャパニーズ・ヒップホップ、ジャパニーズR&Bを含め、民謡、童謡、純邦楽など)10.6%、ジャズ7.1%、アニメ5%です。これらをすべて合わせた13万5000タイトルが、日本で出ているわけです。この数は異常な数で、アメリカではとてもこんな数は出ていません。これを全部在庫で揃えると億単位の資金が必要になり、とても大変なことになります。実際のレコード店では5000とか1万タイトル持っていれば在庫が豊富なほうです。HMVやタワー・レコードなどでは5万とか10万くらい揃えていますし、アマゾンだとほとんど揃っています。いずれにしても、この10万以上というカタログが常時揃っている国は、世界でも日本しかありません。多様な音楽ジャンルが供給されていることに対して、再販制度の効用はあると思います。
(4)民族音楽の魅力
どこの国でも自国の音楽がありますが、よその国の音楽に興味を持つということは、非常に知的レベルの高い国民性だと私は考えています。今は民族音楽よりもワールドミュージックと呼ぶほうが多いと思いますが、このワールドミュージックが世界で一番盛んなのはフランスです。圧倒的にレーベルの数が多い。次が日本です。アメリカで民族音楽が売れないわけではありませんが、ヨーロッパほどは売れません。たとえば日本では世界遺産などに関連したテレビ番組やDVDなどがよくあります。旅の番組なども反応が非常にいい。これは、好奇心が強いという日本のひとつの特性であると思います。
民族音楽に関しては、やはり小泉文夫先生の功績が大きいと思います。1970年代から80年代にかけて、先生はそれまでアカデミックな研究対象でしかなかった民族音楽をキングレコードから千円盤で出して、聴いて楽しむことのできる対象にしました。いわゆるワールドミュージックという名前に衣替えしたのが80年代後半から90年代のはじめですが、そのころからワールドミュージック・ブームが到来します。ワールドミュージックがエンヤやジプシー・キングスなどのいわゆるポップスの領域になってくるにしたがって、非常に売れるようになってきました。2000年代になるとブームは沈静化したものの、小さなレーベルが無数に出てきました。そして数え切れないくらいの民族音楽のCDが発売されだし、今に至っているということです。
これはどういうことかというと、欧米ポップス一辺倒に対する反省、自分の国の文化やアイデンティティを求めて見直したらどうかという動きが広がったからだと思います。韓国や中国など、アジアでも自分の国の文化的、伝統的なものをもっと取り入れるべきだという流れが増えてきています。世界が同一化するなかでの自分たちの独自性はなんなのか。世界がひとつのマーケットになってしまう危機感。アメリカの音楽が世界を席巻するという資本の論理、つまり同一の楽曲が世界中をかけめぐることで、何かが失われていくという喪失感がでてきたのではないかと思います。そうしたなかから、自国文化を少しずつ取り入れるエスノ・ポップのようなものが出てきたのではないかと思います。
(5)純邦楽なんてつまらない?
純邦楽とは、いわゆる日本の民族音楽です。日本の音楽といえば、踊りが入っていたり、聞き取れない歌詞があって、リズムが難しくてちょっと退屈というイメージですが、捉え方をちょっと変えるだけで、非常に面白いものになります。
日本の楽器のルーツはほとんどが日本ではなくシルクロードです。三味線やお琴と同じようなものは東アジアのどこにでもありますし、東アジアをさらにさかのぼれば中近東や地中海まで繋がることになります。ですから現在邦楽器と呼ばれているものでも、日本に原型があったのではなくて、交易の結果もたらされたものであることがわかるんです。そういった音楽が邦楽として発展したのは文化爛熟の江戸時代だと思います。その時代をわれわれは良く知りませんが、聴いてみるとそのレベルの高さには驚きます。また1600年代末、元禄のころ日本では歌舞伎が大ブームでした。そのときの題材でもあった「心中もの」が大流行して、本当に心中する人が続出するという事態も起こっています。日本の歴史や文化の把握において、目で追って文字を読むよりも、音楽を聴きながら理解できるということもあると思います。
最近国際化のなかで思うのは、もっと日本の固有の文化を知らないといけないということです。日本人が国際的であることは、日本のことを知ることだと思います。
(6)広大無辺のクラシック
これもすごい世界です。圧倒的なレパートリー、そして歴史の波を超えてきた名曲は不変です。またビバルディの「四季」やベートーヴェンの「第九」は、楽譜はひとつしかないのに演奏は100種類以上という、「同曲異演奏」の面白さもあります。それと、コンピレーション。好きな曲や名曲、なんでもいいですが一枚のCDに集めたものです。あとはやはり最近のビジュアル系アーティストですね。これは普段みなさんが使っているビジュアル系という言葉とは異なり、いわゆる個性的な見栄えのするアーティストを送り出す傾向があります。それに癒し系志向も高まっています。クラシックは13万5000タイトルのなかの16%を占めていますから、かなりすごい数です。2万タイトル以上のものが、今販売されているわけです。
(7)朗読、ドキュメンタリーも一大市場
朗読やドキュメンタリーもの、落語や浪曲、講話、法話、そして隠れたベストセラーである「般若心経」などのお経も根強いマーケットです。これらはけっしてチャートには入りませんが、すべてあわせると膨大な数のタイトルが出ています。朗読はそれこそ日本古来の文化です。たとえば、「源氏物語」はあの当時本で出版されていたわけではなく、紫式部が宮廷で本当に読んで聴かせたんです。書物として流通したのは随分あとの話です。最近では全国津々浦々、朗読ブームです。とくに中高年を中心にして盛んですね。あるいは「詩のボクシング」とでもいいますか、詩を朗読しあって勝ち負けを決めるというゲームも出てきました。
このような流れのなかで、90歳を超える長岡輝子さんが宮沢賢治の詩を朗読したCDを出しました。それが2年間で10万枚を超える大ヒットになったんです。彼女は賢治と同じく岩手の花巻出身です。聴いてみると、語感に賢治のふるさとのイメージが想い起こされます。ちょっと音を聴いてみましょう。
つぎに『京ことばによる源氏物語』。お聴きいただくのは「桐壺」です。まったくの話し言葉で「源氏物語」を語ったもので、これもよく売れています。
(8)輸入盤の楽しみ
数は少ないけれどバラエティがあるものといったら、これはもう輸入盤しかありません。私のかかわっているキングインターナショナルという会社では、300近いレーベルを海外から輸入しています。クラシック、ワールドミュージック、ジャズ、カントリーなど、あらゆるジャンルを輸入していて、私どもの会社だけで1万5000タイトルくらいの商品を扱っています。それだけで日本のマーケットの1割です。ただし物によっては、1枚だけしか輸入しないものもあります。輸入盤は1枚から数万枚売れるものまで多種多様なんですね。これらをレコード屋さんで探すというのは、まるで迷宮散策のような楽しみです。しかし在庫がなくなると、日本のように簡単に取り寄せられないのが難点です。コンスタントに輸入できるわけではないので在庫が非常に不安定です。
ここまでくると、ダウンロードの世界は通用しません。パッケージを歩いて捜し求めて楽しむという世界です。大きなレコード店では、輸入盤がその店の評判を左右するほど、切り札的存在になっています。
2.音楽商品マーケティングの実例
個人的な音楽の好みは、100人いれば100通りあると思いますが、この細かいニーズに応えて商品企画をする場合は、企画の練り上げがポイントになります。2つの実例を挙げて説明しましょう。
(1)「ワールド・ミュージック・ライブラリー」
「エスニック・サウンド・コレクション」というタイトルがあります。現在では「ワールド・ミュージック・ライブラリー」に名前を変更しましたが、このシリーズを私がかつて手掛けました。当時、全30タイトルで1枚2500円。キャッチコピーは電通さんと一緒に練り上げました。たとえば「初めて聴くのに懐かしい」、「心の奥地がゆすぶられる」。もうひとつ「生まれる前にどこかで聴いた」というのもありましたが、ちょっと奇をてらいすぎかなということで使いませんでした。このキャッチコピーだけで1週間、10日と議論を重ねました。ジャケット・デザインはタイポグラフィーのデザイナーでもある美登英利さんにお願いをしました。また、阪急交通社とオープンの懸賞をタイアップしたり、吉永小百合さんや渡辺貞夫さんといった有名人によるエッセイも依頼しました。それに日本語だけではなく、英語でもライナーノートをつくりました。30タイトルにその後120タイトル近くが追加され、結果、全世界で120万枚の実績になっています。年月をかけた数字ではありますが、現在もつながっています。実際に海外のレコード屋さんでこのシリーズが並んでいるのを見ると嬉しくなりますね。音楽産業人冥利に尽きます。
それでは音を聴いていきましょう。(以下の6曲の一部が教室内に流されました)
●Turkish Military Band Music of
Ottoman Empire
テレビコマーシャルでよく使われているので、もうご存知のかたも多いと思います。とっても親しみやすい、オリエンタルでエキゾチックな、トルコの軍楽ですね。モーツァルトもトルコの民族音楽にすごく影響を受けました。
●Music of Greece
ギリシャの音楽とひと言で言っても、歴史もありますし地域もさまざまです。今日お聴きいただくのは「肉屋の踊り」という非常に印象的で、ノスタルジックな曲です。とてもメランコリーでいいですよね。日本人の感性にも触れる気がします。
●バグダッドのウード/琥珀色の夜
今たいへんな状況になっているイラクの音楽です。ウードという楽器が主に使われますが、日本の琵琶の原型といってもいいと思います。この独特の音程は表現できないですね。小泉先生は「微分音程」と表現していましたが、その音程もリズムも西洋のものとはまったく違います。この揺れる音程は日本でいう「小節(こぶし)」に似ていますが、やはり民族音楽の魅力はこの「小節」にあるのではないかと思います。イラクは自国の音楽が8〜9割の国ですから、こういった音楽以外はあまり聴かれていないという実態はありますね。
●モンゴル聲遥(しょうよう)/ホーミーとオルティン・ドー
これも聴いたことがあると思いますが、ホーミーというダブル・ボイスの音楽です。彼らが開発した、唸るように違う音程を同時に出すという独特の歌唱法です。もちろん本場の人たちにはかないませんが、日本でもこれができる人が続出しています。
●原色の音絵巻/バリのケチャとバロン・ダンス
これも観光で有名になりましたが、バリのケチャ。これは伝統的といっても20世紀になってつくられた民族音楽です。日本でもいろいろなところで紹介されて一気に有名になりました。有名な「プリアタン村のケチャ」です。
●大地躍動/中央アフリカの歌と踊り
もっとも素朴な楽器のひとつ、中央アフリカでよく演奏される「親指ピアノ」という楽器です。この楽器を彼らが弾いているのを聴くと、ヒーリング音楽を聴いているような感覚になります。(ここで先生は実際に親指ピアノを取り出して、その素朴な音を聞かせてくださいました)
以上の民族音楽のテイストをポップに取り入れた音楽なんかが、最近では当たり前になってきています。音楽のジャンル同士のクロスオーバーというか、そういった各国の民族固有のものがポップスの世界で取り入れられて、今までにない新しい世界ができあがっています。
(2)日本の伝統音楽
次は日本の伝統音楽シリーズです。これはさきほども申し上げたとおり、純邦楽というものです。私はむかし、レコード会社の営業として、京都地区を担当していたのですが、毎日のように京都のレコード屋さんを回り思ったのは、なぜこの純邦楽は京都でよく売れるのかということでした。後々に本社に戻って企画をやるようになって、京都だけで売れているものを全国で売るにはどうしたらいいだろうということを考えました。コンセプトは「地味な純邦楽を学生やクラシック・ファン向けに再構築する」というもので、全部で10タイトル。このときも輸出しようということで英文対応にしました。ジャケットのデザインは、前回大成功だったので美登英利さんにまたお願いしました。
タイトルですが、「雅楽」のままだと面白くないので、「平安のオーケストラ」というように置き換えました。当時スタッフと考えたものをいくつか紹介します。能楽は「室町の仮面劇」、歌舞伎は「江戸のグランド・オペラ」、筝(そう)は「江戸のバッハ」、尺八は「禅・スピリチュアル」、打は「日本のカーニバル」、三曲は「江戸の室内楽」。よくレコード会社では1000枚が最小単位として扱われます。1000枚以下はやるなということですね。このシリーズは世界で15万枚の実績を出しました。この年には企画賞のようなものを頂いた記憶があります。では聴いてみましょう。(以下の2曲の一部が流れました)
●GAGAKU
「青海波(せいがいは)」という曲です。雅楽は楽器も多岐に渡ります。これは宮内庁の中で録音したものです。なにか妙に懐かしい、落ち着く感じがします。最近ではヒーリングとしても使われています。
●SO
筝曲。いわゆるお琴ですね。これは「乱れ」という八橋検校の曲です。彼は1614年に生まれて1685年に亡くなりましたが、バッハが生まれたのは1683年ですから、バッハが生まれるころにはもういなかった人です。有名な「六段の調べ」はいわゆる組曲ですが、このようなものが17世紀半ばに日本で作曲されて楽譜も残っているというのはすごいことですね。バッハは音楽の父ですが、それに先立つ1世紀も前に日本にもそれに匹敵しうる器楽が生まれていたんです。このことはあまり意識されませんが非常に興味深いと思います。この日本の伝統音楽シリーズは、ジャケットも絶賛されましたしなかなか売れました。
われわれは研究や保存のためにやっているわけではないので、売れるためのコスト計算やプロモーションもしなければなりません。その先になし得た実績やいただいたお褒めの言葉は、レコード産業人としてやりがいを感じますし、音楽産業の向上、普及に多少なりとも役に立ったかな、という思いがしています。
3.さいごに ―成熟市場の将来―
それでは最後に、成熟市場はどうなっていくのかをお話したいと思います。ご存知のとおり、配信・ダウンロードビジネスがじわじわと上がってきています。昨年は534億円というダウンロードの売り上げでした。ついにシングル盤を抜いたんですね。今年はどうなるかというと、私の予想では700億円くらいだと思います。一方、パッケージの売り上げが3400〜3500億円ありますから、ダウンロードが逆転するということはまだまだありませんが、最近ある業界誌がアンケートをもとに予測を立てました。アンケートの集計によるとパッケージと配信の販売比率は、5年後にはパッケージ60:配信40くらいだろうということです。これはあくまでも予測ですから、何の裏づけもありません。しかし私もこのくらいじゃないかな、と思います。
そういったなかで、音楽マーケットはどのように変化するかといいますと、パッケージのままでも、配信になっても、人々が音楽を求めているということについては変わりません。また、つねにポップスのヒット曲は求められます。これは活力があるので、音楽産業やレコード会社の目標です。カタログ件数でいえば数%しかなくても、その数%が半分の売り上げを占める場合だってありうるんですね。
先々の予測ですが、レコード会社は軽量化します。パッケージが少し減るのと同時に、マイノリティの音楽、民族音楽、実用的な音楽など、ありとあらゆる音楽のニーズそれぞれにマーケットができ、それに合わせた独立系の小さなレコード会社が間違いなく増えます。現実にヨーロッパではメジャーレーベルと、その他のインディペンデンツにはっきりと分かれています。そこでは数人で会社を経営していることがほとんどです。日本のように大きなレコード会社がいろいろなタイトルを出す国というのは少ないですね。アメリカでもインディペンデンツのレコード会社は無数にあります。日本でいうインディーズと同じようなものですが、このような小さなレーベルが膨大な数になってくるだろうと思います。これが音楽業界の活性化につながると思います。
アーティスト、いわゆる表現者も必要ですが、今日はその方たちをプロデュースするという立場からのお話をしました。みなさんもいずれ、そういった仕事に関わっていただけたら嬉しいなと思っています。今日の話はこれで終わります。ありがとうございました。
以下、質疑応答の要約
Q.講義のなかで先生がおっしゃられた「ビジュアル系」とは具体的に?
A.「ビジュアル系」というとロックのアーティストを思い浮かべるが、ここでいう「ビジュアル系」は文字通り、「見栄えするアーティスト」という意味。外見だけではなく、演奏そのもの、聴衆とのやりとり、喋りのうまさ、情報を発信できる、さまざまな意味において、個性的で魅力のあるアーティストのこと。
Q.「生産金額」と「売上金額」の違いは?
A.「生産金額」とは、レコード会社が一年間でどれだけレコードを生産したか。レコード協会は長年「生産枚数」と「生産金額」の両方を出してきた。「正味売上金額」というのは各社が持っているものだが、おそらく将来的には発表数字は「売上金額」に切り替わるだろう。当面は「生産金額」で発表している。ただしダウンロードだけは「売上金額」。
Q.いわゆる伝統音楽の場合の著作権について。
A.伝統音楽は基本的に著作権はない。作者不明の伝承物もあるし、作者がいてもクラシックの大多数は期限が切れているので、これについては払っていない。しかし創作的な民族音楽や、クラシックでも現代音楽になると著作権の対象になる。民族音楽を商品化するうえで多少有利なのは、著作権料を払うことが少ないこと。