第7回 2007.6.2
反畑 誠一 先生(音楽評論家、立命館大学客員教授)
テーマ「学習成果とその活用」


講師:反畑誠一(たんばた・せいいち)氏

 

これまでの講義を振り返って
〜学習成果とその活用〜


 今日はこれまで開かれた6回にわたる講義について、みなさんから届いている追加質問を幾つかピックアップしながら、お話していこうと思います。

 
1.ポピュラー音楽界の巨人たち

【Q、ビートルズが国民音楽を称賛することによってアメリカで差別されていた黒人音楽が受け入れられるようになったとありましたが(第5回石坂敬一先生の講義「ザ・ビートルズ〜イギリスと日本〜」)、そのように音楽が多くの人々の心や考え方を変えたことは他にもあるのですか?】

先日石坂先生に再びお会いすることができたので、ポピュラー音楽界の巨人たちを何人か挙げてもらいました。

ローリング・ストーンズ:長年活躍していて、日本でもライブをしていますね。彼らはロンドンの出身です。活動を始めたのは1962年から。世界最高のロックバンドと言って良いでしょう。ジャンルはロック、特にブルースロックですが、ロックをこれだけメジャーにしたという意味において、大変な功績があると思います。

ザ・アニマルズ:彼らもイギリスのロックバンドで、特にブルース色が濃いのが特長です。60年代の半ばにビートルズと一緒に世界的人気を博したグループです。ザ・ビートルズとも親交があり、ボブ・ディランの「朝日のあたる家」をブルース的解釈でカバーしています。

チャック・ベリー:アメリカ出身でロックンロールの神様です。アメリカとイギリスはよく「ブリティッシュ対USA」というかたちで競争になりがちですが、ジョン・レノンは彼のことを「マイ・ヒーロー」。つまり本当に自分自身の歌詞を書いた人として評価しています。独特のギター奏法、「ダッグウオーク」が話題になりました。2005年に著作権が侵害されたとしてカラオケ業者3社を訴えています。

.B.キング1932年生まれですが、未だに現役で活動を続けていて、すごいと思います。ブルースギターの名手ですね。エリック・クラプトンはじめ多彩なビックアーティストとコラボレートしており、名実ともに大御所です。

ボブ・ディラン:アメリカの歌手で、詩人で、作曲家ですが、彼はものすごい才能の持ち主です。どんな才能かというと、ノーベル文学賞にノミネートされたほど作詩力があるのです。また、彼の存在は他に特別の意味で影響力があります。「戦争と平和と音楽」いう3つの関連の中で、音楽の存在がいかに大きいかという点で、ボブ・ディランは非常に重要な位置を占めています。

1960年に入るとアメリカでは公民権運動が始まりました。黒人やほかのマイノリティグループに対するさまざまな差別に抗議をして、白人と同等の権利を求める運動が、この頃は盛んだったのです。最大の盛り上がりは1963年8月28日、マーチン・ルーサー・キング牧師率いる50万人を超える人々が、ワシントンD.C.で大行進を行ったことです。この出来事をピークに、64年に公民権法が定められました。

ボブ・ディランをはじめとするフォークソング歌手の特色は、メッセージソングとも呼ばれていることにあります。音楽で世の中の平和を訴え、多くの人々へ影響を与え、支持されたという点では、ボブ・ディラン以外にもジョーン・バエズという女性の存在も大きいでしょう。

ジョーン・バエズ:ボブ・ディランと並んでフォークの代表的存在です。1960年から75年まで15年間にわたり、アメリカはベトナム戦争に突入します。犠牲者は、北ベトナムと南ベトナムを合わせると220万人以上、アメリカ側や他の国も合わせると330万人を超えました。彼女は世界中の音楽ファンに平和の大切さを訴え、音楽でこの悲劇を乗り越えようとした人です。

1963年の公民権運動でもそうですが、メッセージソングを歌って、それを世の中の人が共鳴するということがありました。しかしその後も9.11や、今ではアフガンやイラク戦争などでも犠牲者はたくさん出ています。しかしデランやバイエズが歌ったような歌は生まれていません。これはどうしてなのだろうか?と思います。

【Q、ビートルズはイギリス発の世界的ミュージシャンですが、日本人で世界に影響を与えたミュージシャンは誰ですか?また、ビートルズに匹敵するようなミュージシャンが日本で生まれる可能性はあるのでしょうか?】

再び石坂先生と一緒に日本の音楽家の名前を、6人挙げてみました。

富田勲:シンセサイザーの奏者で、作曲家でもあります。世界的にもシンセサイザーの演奏の素晴らしさ、新しい音楽の創作性においては偉大な存在です。坂本龍一はYMOという3人組をつくって世界的に活動をしていましたが、YMOの4人目といわれる松武秀樹(マニピュレーター=シンセサイザーを操る人)は富田勲に師事していたのです。

武満徹:彼は日本の現代音楽の巨匠です。現代音楽というと難解だと思うかもしれませんが、武満さんの演奏活動や作品はそうではありません。新国立劇場がある東京オペラシティには「武満ホール」がありますが、いまだに彼の偉業を讃えています。

オノ・ヨーコ:音楽をこよなく愛し、ジョン・レノンにあれだけの影響力を与えた人です。オノ・ヨーコなくしては、ジョン・レノンはなかったという意味においても、欠かせない人です。

小澤征爾:指揮者の世界最高峰として、いまも活躍されています。

坂本龍一:「戦場のメリークリスマス」をはじめとした映画音楽も手がけているし、幅広く創作、演奏活動を続けています。これからも「世界の坂本龍一」でしょう。

久石譲・大野克夫:日本の楽曲が世界で聴かれることによって著作権使用料が入ってきますが、久石さんは2006年の著作権使用料徴収額第1位でした。大野克夫さんはザ・スパイダーズという、グループ・サウンズバンドのメンバーでした。テレビアニメーション「名探偵コナン」の音楽をずっとつくっている人で、著作権の徴収額第5位です。

【Q、10年後にはレコードは一切生産していませんという先生の言葉(第5回石坂敬一先生の講義「ザ・ビートルズ〜イギリスと日本〜」)が、私のなかで大きな問題になっています。なぜなら私はDJになりたくてレコード収集をしているからです。ターンテーブルを使うDJにとってレコードがなくなるというのは大問題です。今後DJはパソコンで音楽を流すことになるのでしょうか?】

 これは誤解です。アナログレコードはなくなりませんし、ましてやパッケージもなくなりません。ただ、流れとしてアナログ盤をつくる工場はどんどん閉鎖されています。今までは大手レコード会社はアナログ盤を製造する工場を持っていましたが、その工場も限られた数になってしまいました。しかし専門の工場は残り続けていくでしょうから、アナログ盤も専門的に製造されていくことになると思います。安心してください。

 

2.著作権について

【Q、著作者と著作権者がわかりにくいです。】

たしかにややこしいので、整理をしましょう。たった一文字入るだけでどう違うのでしょうか。

著作権は、著作物を創作した人に与えられます。その著作権を持っている人を「著作者」と呼びます。ここで「著作者」は、@原始的権利者とA継承的権利者に分けられます。@原始的権利者、つまり原点になる著作者は「著作者と映画製作者」です。A継承的権利者は、@及び著作権者から著作権の譲渡を受けた者。さらに、相続及び法人の解散により著作権を継承した者です。つまり「著作権」は譲渡できるのです。それを受けた人が、「著作権者」になります。「著作者」とは、著作物を創作した人のこと、「著作権者」とは、著作権を持っている人のことです。

著作者が持つ「著作権」にはさまざまな権利が含まれています。具体的なものをいくつか紹介しておきましょう。
●複製権:印刷、コピー、録音、録画などの方法によって著作物を再製する権利。
●上演権:著作物を公に上演したり、演奏する権利。
●上映権:著作物を公に上映する権利。
●公衆送信権:著作物を放送、有線放送したり、インターネットにアップロード(送信可能化)したりして、公に伝達する権利。
●頒布権:映画の著作物の複製物を公衆に譲渡・貸与する権利。
●譲渡権:映画以外の著作物の原作品や複製者を譲渡によって公衆に提供する権利。
●貸与権:映画以外の著作物の複製物を貸与によって公衆に提供する権利。

著作権の歴史は、1986年にスイスのベルヌで締結されたベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)のときにできた約束事が元になっています。これは著作権の歴史や音楽産業史でも必ず出てくる条約ですので、覚えておいてください。

著作者の権利は、「著作権」と「著作人格権」を含みます。この「著作者人格権」は「著作権」とは違って人に譲渡することができません。さらにこの「著作者人格権」のなかにある「同一性保持権」は前にも話したとおり、森進一さんの「おふくろさん」のように、その創作物をつくった人の許諾なしに変更してしまう=創作者の人格を傷つけてしまう、ということがないように保護する権利です。森進一さんは「おふくろさん」の「著作権」ではなく、「著作隣接権」を持っているに過ぎません。ここで「著作隣接権」という言葉が出てきました。具体的にはシンガーソングライターは、作詞・作曲家としては「著作権」を持ちますが、歌手としては「著作隣接権」を持つことになります。ほかにもこの「著作隣接権」は、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者の4者が、その創作物に対して持っている権利です。これは1961年の隣接権条約=ローマ条約(実演家等保護条約)で締結されました。日本では1970年、著作権法の全面改定で、著作隣接権が新たに認められました。実演家とレコード製作者には、この隣接権とともに「請求権」も認められました。そのなかにある「レコード二次使用料請求権」の対象となるのが、今でいう「着うた(R)」です。「着うた(R)」はCDをもとに音源を使っているわけですので、レコード会社が持っている隣接権を二次的に使用したことになり、使用料を請求することができるわけです。

基本的なことですが、「条約」とか「協定」という言葉がいくつも出てきます。「条約」というのは国家間の合意で法的拘束力を持っています。「協定」というのは「条約」の一種ですが、狭義の「条約」と本質上異ならず、法力も変わりません。ですから、戸惑わないように、ひとつひとつの言葉を確認していってほしいです。

【Q、IPマルチキャストについてもっと詳しく教えていただきたいです。最近YouTube(*1)などで音楽が出回っていますが、対策などはとられているのでしょうか。】
*1)YouTube:インターネットで動画共用サービスを行うアメリカの企業。

 今なぜこれが問題になっているのか、を簡単に言うと、放送、とくにテレビがインターネットで見ることができるようになったからです。この場合の権利やメカニズムはどうなっているのでしょうか。ここでは「マルチキャスト」という用語が出てきます。この言葉を理解しておくと、今問題になっていることが理解しやすいかもしれません。

マルチキャスト(multicast)
 ネットワーク上で複数の宛先に対し、一度に同じ内容のデータを送信する仕組み。インターネットを利用する場合に、「IPマルチキャスト」と呼ぶ。IPマルチキャストでは、複数の配信先コンピューター(ホストグループ)に対して、1つのIPアドレス(マルチキャストアドレス)を指定する。マルチキャストアドレスを宛先に持つデータは、ネットワークの途中にあるルーターなどで、配信先の数に応じて複製される。同じホストグループに所属する端末は、この複製されたデータを受信する。送信側サーバはユニキャストのように、端末と1対1でデータを送信するだけで、同一の内容を持つデータを複数の宛先に届けることができる。動画や音声のように容量が大きいデータをインターネットで流す場合は、ネットワークへの負担を減らす効果がある。IPマルチキャストを利用するためには、マルチキャストに対応したサーバと端末用ソフトが必要。単にマルチキャストに対応するIPアドレスの容量をさす意味で用いる場合もある。
(日経用語辞典)

通信と放送の融合についてよく言われますが、放送とは違うメディアが出てきています。そのなかで、従来あるコンテンツの権利がどうなるのかというところで、この「マルチキャスト」というメディアが昨今注目を浴びています。要するに法律の整備をしなくてはならないのです。今までは、放送用に製作した作品の著作物は「放送」に限られていました。ところがマルチキャストが出てきて、それがネット上で流れるようになったのです。これは約束事が違う、というわけです。

 

3.産業革命より重要な転換

 そこで、今日の「学習成果とその活用」ということで、「コンテンツ」について、お話したいと思います。最近はよく耳にする言葉で、いちいち断り書きはありませんが、一時は「情報内容」という注釈がついていました。その「コンテンツ産業」について、去年の講義をもとに下のようにまとめてみました。

 文化コンテンツ産業とは : 文化コンテンツの開発、製作、生産、流通、消費及びこれらのサービスに関する産業(柳珍垣韓国文化院院長)。

 コンテンツ産業とは : 米国は「エンタテインメント産業」。英国は「Creative Industry」。日本は「コンテンツ(情報の中身)」と知的創作物の折衷。

 21世紀は、文化産業から各国の成敗が決定するであろうし、最後の勝負どころは文化コンテンツ産業である」(ピーター・ドラッカー)

 コンテンツ産業革命というのは、イギリスで起こったいわゆる産業革命よりも重要な転換期であると、私は思っています。次にその流れを、以下のように記してみました。

●産業革命より重要な転換(1)
インターネット:ARPANET(米国国防省高等研究計画所ARPA)が導入した、コンピュータ・ネットワーク(1969)。
マイクロソフトやインテル登場(1970〜80)はタービュランス(乱気流、大荒れ、混乱、社会不安)の時代。
メディア・アテンションのフェーズ(1990)。
バブル崩壊(2000)。
大規模な構築ステージ(2000〜2030)

●産業革命より重要な転換(2)
21世紀の最初の20〜30年間に経済に深い変質が起きる。
知的に交信が始まり、プリミティブ(原始的)だが経済の神経ができ始める。
想像もしなかったような新しい産業が勃興。
21世紀の最初は米国がリードするが、技術は世界に拡散。
情報革命は筋肉もエネルギー(産業と鉄道革命)も供給しない。供給は神経系。
長期的にみれば、産業革命より深く、重要な転換。

●産業革命より重要な転換(3)
情報スーパーハイウェイ=物理的なITインフラ(1990年代)。
大規模な構築ステージ=I(情報)インフラで情報そのものに関する革命的変化が起きる。
Iインフラの本質は、インターネットの「あちら側」に作られる情報発電所ともいうべき設備だった。
最初に気づき、創業7年で大成功した、グーグル(Google)という企業の存在。

 

 冒頭で音楽界の巨人を紹介しましたが、今度は現代における4大巨人の存在に注目してみましょう。

ゴードン・ムーア:インテルの創業者(1965)です。半導体性能は1年半で2倍になるという「ムーアの法則」があります。

ビル・ゲイツ:みなさん知っていますね。1955年生まれ、マイクロソフトの創業者(1975)です。PC時代を切り拓いた天才ですね。かつては産業用に使われていたコンピュータが、私有で使えるようになったんですから、感動です。これを「こちら側」と呼んでいます。

ラリー・ペイジ、セルゲイ・プリン1973年生まれ、若いですね。彼らがグーグルの開発者です。まだ大学生だった頃ですよ。パソコンの「向こう側の無限の世界」、「あちら側」のまったく新しい、世界中に蓄積・更新されている知のすべてに瞬時にアクセスできる可能性を構築したんですね。いまだにこの旋風は吹き荒れています。この次も5人目、6人目が出てくるかもしれません。

これを、産業革命だと思う捉えかたが重要です。そしてここで終わるのではなくて、これから先に何が起きるのかをみんなで勉強したいと思っています。ITの話が出ると苦手だという人もたくさんいます。しかし今の私たちの生活と切り離すことのできない伝達手段であり、産業の柱でもあります。

 

4.音楽著作権の管理システム

 音楽著作権の管理システムをもう一度復習しておきましょう。一番上にいるのは「作詞・作曲家」=「著作者」です。そして彼らの作品を預かって管理するのが、@JASRACです。この場合は「譲渡」ではありませんよ。「管理」、「信託」です。ほかに預ける先としてはA音楽出版社、それからB仲介業務企業というのもあります。2000年まではJASRAC一団体しかありませんでしたが、仲介業務法の改正で、届け出れば誰でもこの仲介業務ができるようになりました。代表的な会社の名前ではe-Licenseという会社があります。インターネット関連の著作権の管理はこの会社などが行っています。著作権とは「権利の束」ですから、切り離すことができるわけですね。ほかにも数社ありますが、JSARACが60年をかけて培ってきたノウハウは、世界に誇れるもので、簡単には真似できない管理システムです。

 作詞・作曲家はいろんなルートで著作権の信託契約を結ぶことができます。たとえば作家が直接JSARACに預けなくても、音楽出版社と信託契約をして、それから音楽出版社がJASRACと契約をすることもできるわけです。

 ちなみにJASRACと個人契約するためには何が条件かというと、書類などさまざまな様式がありますが、原則として「過去1年以内に第三者によって日本国内で著作物が公表されていること」です。この「公表」が曲者です。しかも「第三者」つまり、自分の作品が多くの人に知られていなければなりません。たとえばラジオで放送されたとか、コマーシャルで使われたとかです。そういうものじゃないと、扱ってくれません。実績のないものを預かっても商売にはなりませんからね。自分でつくったものはもちろん「創作物」なのですが、それを預かってくれるかどうかというと話は変わります。それを覚えておきましょう。

 さきほどいったように、著作権は「権利の束」とも呼ばれます。ひとつひとつの細かい権利は「支分権」と呼ばれ、それを束ねているのが「著作権」です。

 一枚のレコードをつくったら、レコード製作者にはどんな権利が生まれるのでしょうか。まず「著作隣接権」には複製権、送信可能化権、譲渡権、貸与権。そして「請求権」にはレコード二次使用料請求権、貸与報酬請求権、私的録音録画補償金請求権、という権利が生まれます。「私的録音録画補償金請求権」は、あくまでも「私的」であれば録音・録画してもいい、あるいは教育にも使用してよいのですが、カラオケ教室で配ったり、会員化すると違法になってしまいます。ナップスターという団体はうまいこと考えたもので、自分で作ったファイルを交換するというサービスを思いつきました。しかしナップスターはこれを会員化してしまいました。今流行りのSNSなどと同じです。ともかく、ファイル交換は違法です。このように「隣接権」によってレコード会社などはビジネスが成り立っています。

 それから覚えておいてほしいのは、権利の在り方は変化するということ。契約書と権利回収構造、細分化と高騰。細分化の例でいうと、IPマルチキャストに絡んでいる権利は次のようになっています。肖像権、商品化権、上映権、ビデオグラム化権、放送権(PPV=ペーパーヴュー、VOD=ビデオ・オン・デマンド、プレミアム・ペイ=WOWOW方式、ベーシック・ペイ、衛星放送権、BS+CS、フリーテレビ上映権、CATV権)、ブロードバンド権、モバイル権、リメイク権。番組販売権、サブライセンス権、フォーマット権。

新しいメディアができると、権利はこのように細分化していくということを表したいい例です。これらの権利はすべて、複製権、著作隣接権のなかに含まれています。

 

5.さいごに 

 もしも自分が著作者だったら、権利によってどのくらい広がりがあるのでしょうか。次のような場合を想定してみましょう。

〔音楽著作権ビジネスの一例〕
著作権使用料計算書より。JASRAC→音楽出版社→著作権者(宣伝・プロモーション会社)=著作権の支分(原版権の所有)
楽曲名:「ABCDE」
作詞者:立命館花子、作曲者:立命館太郎
大手レコード会社(楽曲使用者)より、シングルCDを製作・販売
テレビドラマのエンディングテーマに使用
「着うた(R)」でダウンロード
カラオケ・通信カラオケにも採用

 この場合どうなるかというと、ディスク、テープ、出版、オルゴール、映画録音、教科書用図書、ビデオグラム、外国入金、貸与、私的録音補償金、貸ビデオ、放送用録音、外国入金(映画録音)、コマーシャル放送録音用、自社出版印税、通信カラオケ複製、インタラクティブ録音、インタラクティブ出版、インタラクティブ複製、通信カラオケ送信、生放送、テレビ放映、レコード放送、BGM、上演、演奏、社交場、有線放送、映画上映、ビデオ上映、演奏権外国収入、カラオケ、インタラクティブ送信。

なんと、33種類もあります。ヒット曲が一曲出ただけでもやはりすごいのですね。

 

 講義はこれで終わりますが、今日はそれこそインタラクティブな講義にしたつもりです。一方的な投げかけではなくて、双方向で講義を進めることができたでしょうか。

 

―講義中に使用した楽曲等―
ローリング・ストーンズ「サティスファクション」
B・B・キング「スウィート・シックスティーン」
ボブ・ディラン「風に吹かれて」

―参考資料―
「著作権とは何か〜文化と創造のゆくえ〜」(福井健策著、集英社)
「ライブ・エンタテインメントの著作権」(福井健策・二関辰郎著、社団法人著作権情報センター)
「コピライト」No.549(社団法人著作権情報センター)
「著作権法の解説」(千野直邦・尾中晋子著、一ツ橋出版)