山崎先生

講師: 山崎 芳人 (やまざき・よしと) 先生

1948年、長野県生まれ。1971年、武蔵野美術大学造型学部卒業。
大学時代よりアルバイトをしていたキョードー東京へ入社。最初の仕事はナイトクラブ等での外人ストリッパーのパンツ(舞台で脱いだ直後の)拾い。その後、外国人ミュージシャンのアメリカ軍キャンプ公演での楽器車の運転、楽器運び、設置、坊や等何でもやらされる。
日本国内での外国人アーティストのコンサート需要が大幅に増え、年間約300日、外国人アーティストの国内ツアーのツアーマネージャーを努める。
販売、宣伝等の興行全般を経験する。
1984年、アメリカでのメジャーエージェント"WILLIAM MORRIS AGENCY"社との共同プロジェクトの担当となり、本場のエンタテイメントビジネスの神髄を勉強する。その後"エンタテイメントはパブリックの物"をモットーにして、マーケットの拡大につとめる。
2000年、キョードー東京代表取締役社長に就任し現在に至る。
日米共同プロデュース(blast等)による全米ツアーの企画、南アフリカ連邦、インド等これまで紹介されることが少なかった国々のエンタテイメントの紹介に積極的に行っている。

山崎先生
第6回 2008年5月17日
 「ライブ・エンタテインメントにおける巨大資本が牛耳る世界戦略」
「ライブ・エンタテインメントにおける巨大資本が牛耳る世界戦略」


はじめに

 今日は、ライブ・エンタテインメントの世界において、巨大な資本がマーケットをコントロールしつつあるということについて話していきたいと思います。その中で、ものすごいスピードで推移している世界観や、日本の立ち位置についても説明していきたいと考えています。またこれから話すことは、ワシントン州立大学でメディアエンタテインメントを教えておられる北谷賢司先生が書いた『ライブ・エンタテインメント新世紀』という本の内容が中心になっています。この本の3分の1は、ライブ・エンタテインメント業界の古い体質を暴露したもので、3分の2は現在のライブ・エンタテインメントの世界的な価値観が表現されており、非常に面白い本です。表紙には「マドンナ、ストーンズ公演からカジノ産業まで」と書いてあります。この言葉は、今日のテーマである「巨大資本が牛耳る世界戦略」にまでつながっていきます。とはいえ人様のテーマを勝手に使うのは申し訳ないと思い、自分でも勉強しましたが、最終的に直接先生のところまでお伺いしました。その際にこの講義の話をしたら、非常にいいプレゼントをいただきました。北谷先生がワシントン州立大学での講義で使用された北米ライブ・エンタテインメントの歴史資料です。今日は、それを邦訳したものをご説明します。

 2年前の夏、東京と大阪でマドンナのコンサートがありました。みなさんも、コンサート会場に行くとダフ屋がチケットを売っているのを見たことがあると思います。しかしこのマドンナ公演では、ダフ屋は一切いませんでした。これが、1つのスタートポイントになります。ダフ屋とは主催者とはまったく別の第三者によるビジネスです。これに関して、ライブ・エンタテインメントにおいて主催者とアーティスト以外のビジネスが成り立っていいのかという疑問がありました。そしてこのマドンナ公演でついに、アーティストと主催者側がネットオークションでチケット販売をするという画期的な試みをスタートさせました。つまりダフ屋が入り込む余地がなくなったのです。結果的には、通常の日本公演で予想していた約3割増し(推定)の収益が得られました。これが、エンタテインメントビジネスです。3割増しになるということは、仮にアーティストのギャランティーが1,000万円だとすると、1,300万円になります。また、より素晴らしい舞台装置も作れますし、いろいろな意味で有効活用できます。このチケット販売システムは、ライブ・エンタテインメントに関わるビジネスはそれに携わっている人たちが自らやるべきだという近代的な考え方を示しています。つまりアーティストや主催者がビジネスをすることで、ダフ屋に商売させない。そういったことが、ここ2〜3年で実際に行われているということを、みなさんにも知っていただきたいと思います。


1.北米ライブ・エンタテインメント産業の変遷(1960's〜2008)

 1960年代は、地域プロモーターの時代でした。日本も同様で、東京なら東京、京都なら京都といった地域別のプロモーターがアーティストと契約し、興行していました。地域プロモーターは、ビル・グラハムという伝説の人がサンフランシスコで自営劇場でのコンサート事業を近代化し、顧客のニーズに合ったマーケティングを作ったことにはじまります。日本の戦後も地域プロモーターの時代はありました。その後、この会社は買収を繰り返しながら大きくなり、1997年にはSFX社に57億円で買収されました。

 このような流れの中で、1970年代にシーズンチケット制が誕生します。シーズンチケットとは野球でいうと、1試合ごとにチケットを買うのではなく、シーズン中であれば何回も観戦することができるチケットのことです。シーズンチケットは、年間を通して安定した収入を得るための1つの方法として生まれました。このシーズンチケット制は、アラン・ベッカーという人が1966年にヒューストンにつくったPACE社が最初に始めました。この会社は、スーパークロスなどのサーキットを身近で観戦できるシステムを構築しており、全米22都市で劇場の興行権も獲得しています。こうして演劇、ライブ、音楽コンサート、モータースポーツも複合経営しながら全米企業に成長したPACE社は、1998年SFX社に148億円で売却しました。

 1989年、これまでの地域プロモーター制とは違って、地域のベネフィットやリスクを含めすべて自分たちでやろうというマスター・プロモーター制が生まれました。カナダのトロントのプロモーターが、ローリング・ストーンズの北米55都市ツアーの興行権を約80億円の保証金で獲得したことに始まります。その後も北米だけではなく世界ツアーの興行権を獲得し、マスター・プロモーター制が確立されました。この時、エンタテインメントビジネスは、「地域」から「国」へ、そして「世界」へと巨大に広がっていきました。このマスター・プロモーター制は1990年から始まり、日本にも上陸しました。つまりアメリカの巨大なプロモーターが、今やアメリカを含む全世界の興行をコントロールしているのです。世界のエンタテインメント産業は、これまで想像もできなかったほどの巨大なビジネスになりました。この30年間で起こったローカル・プロモーターからマスター・プロモーターへの移行は、今後も続いていくだろうと考えられます。

 みなさんもコンサートに行くとTシャツなどのアーティストグッズを買ったりすると思いますが、このマーチャンダイジングも大きなビジネスの1つです。あるいは、人より高いお金を払ってでもいい席でライブが観たいというお客さんのために、プレミアム席の販売なども始めています。

 1990年代以降、ライブ・エンタテインメントの企業は買収を繰り返しながら大きくなっていき、世界制覇を目指していくようになりました。その中には、さきほどのSFX社も含まれます。しかしそのSFX社も1999年、クリア・チャンネル社というネットワーク会社に買収されました。1960年代、サンフランシスコ1都市だけだった会社は全米に広がり、企業買収を繰り返しながら全世界に広がっていきました。SFX社を買収したクリア・チャンネル社は1,376のラジオ局を運営する会社で、利益は2,500億円にものぼる企業体となりました。売り上げ額は、実に1兆円。想像もできないぐらいの巨大組織です。2005年にはエンタテインメント事業部門をライブ・ネーション(Live Nation)社として分離しました。

 このライブ・ネーション社の対抗馬が、AEGグループです。AEGグループは石油王の富豪フィリップ・アンシューツが作ったロサンゼルスを中心に進出している巨大組織です。今のところはまだ、ライブ・ネーション社がAEGグループの3倍近く差をつけてリードしていますが、この2社が世界2大プロモーション会社です。この2社は今後も世界制覇を進めていくはずですし、いずれみなさんの耳にも入ってくるだろうと思います。

 アメリカにおいて、メジャー・リーグの観客動員数は年間7,400万人でトップです。一方、ライブ・ネーション社はメジャー・リーグに次ぐ6,100万人です。5,700万人のディズニーより多く、また、NBA(全米プロバスケットボール協会)、NHL(北米プロアイスホッケーリーグ)、NFL(米プロフットボールリーグ)を合わせた動員数よりも多い。ライブ・ネーション社はそのくらい巨大な組織です。アメリカの各ライブミュージック関連会社の興行数や動員数を比較すると、ライブ・ネーション社は圧倒的にリードしています。

 ライブ・ネーション社は現在、ポテンシャルの高いアジアに注目しています。マドンナ、U2、ポリスなどのアーティストを、北米ツアーと一貫したかたちのコンテンツとしてアジアに持ち込んでいます。彼らの方法は、すべてを自分たちだけでコントロールするということです。また日本でのライブチケットは、チケットぴあやローソンチケットなどを通して流通していますが、ライブ・ネーション社はチケット流通までもコントロールしています。劇場やコンサート会場などの「表現する場」も、チケット流通も、宣伝媒体も、すべてをコントロールしていくのが、ライブ・ネーション社の戦略です。


2.米国の大手プロモーター概略

 次は、巨大プロモーターのビジネス内容を簡単に説明したいと思います。

 ライブ・ネーション社は、アメリカにおいて野球場などのいわゆるドームツアーの約75%をコントロールしており、世界の興行権をコントロールすることをひとつの戦略としています。今後は、日本のアーティストが日本国内でドームツアーを行う際にも、アメリカの巨大資本が関わってくるだろうと予測できます。チケット流通についても、プレミアム席をネットオークションで売買するようなことがすでに行われていますし、これからも増えていく可能性があります。しかしチケットをネットオークションで売買することには問題もあるでしょう。われわれ主催者側は、ライブ・エンタテインメントとはパブリックなものだと考えています。高額のチケットを買うことができるようなごく少数の人のためだけにライブ・エンタテインメントがあってはならないと思います。しかし入場料金を一定にしても、それを購入した第三者がネットオークションなどで販売している事実もあるため、どこかで線引きが必要です。

 ライブ・ネーション社は昨年、12億円の損失を出しましたが、従業員数4,700人という巨大組織です。2005年実績では、観客動員数はさきほど述べたように6,100万人。保有している会場は117(アメリカ:75、イギリス:42)におよび、さらに33会場を運営しています。ライブ・ネーション社の戦略は、ライブを中心とした事業の上から下まですべてを、自分たちでコントロールすることです。

 ライブ・ネーション社は、劇場やコンサートホールなどの「表現する場」、アーティストを宣伝するためのラジオ局、そしてチケット流通も持っています。チケット大手流通会社のチケットマスター社を介さずに、自社で販売しながら業界をリードしています。そして最終的に必要なアーティスト契約のために、巨額の資金を支払っています。たとえばマドンナの場合は、ライブツアーなどのコンサート活動だけではなく、CDやDVDなどのパッケージ・エンタテインメントのような、彼女の音楽活動に付随するビジネスすべてを囲い込む形態で契約をしています。その契約期間は10年間、契約金は126億円です。これは非常にすごいことなのです。「向こう10年で120億円払います」なんて、ふつうはなかなか言えません。それでも、ライブからパッケージングまで含めたトータルのエンタテインメントというかたちで囲い込みました。マドンナ以外にもライブ・ネーション社と契約しているアーティストは、世界をリードしてきた中年が多いのです。また一方で、新人アーティストも発掘していこうという意欲も持っています。その際にもやはり、アーティストを囲い込むという方法を採っています。ライブ・エンタテインメントを主なビジネスとしている企業が、音源まで作っているのです。日本では、コンサート・プロモーターとレコード会社は別々です。しかしアメリカのように、日本もいずれ一緒になるだろうと思います。レコード会社がライブ・エンタテインメントに興味を持つのは当然のことですが、ライブ・エンタテインメントの会社がレコード事業に参入するということは、これまでの音楽の世界ではあまり考えられてきませんでした。

 ライブ・ネーション社は、ここ1年半ほどでもさまざまな会社を次々に買収しています。2008年2月には、ドバイの大手プロモーター会社の株式の65%を買収しています。ライブ・ネーション社の舞台や演劇関係の部門は、2008年1月にキー・ブランド・エンタテインメント社に約95億円で売却されました。この会社は、ライブ・ネーション社から演劇興行部門を買収したことによって、業界最大手となりました。またこの会社には、日本のTBSとローソンチケットが、トータルで約10%(9億5,000万円)の出資をしています。キー・ブランド・エンタテインメント社の制作担当役員は、元ウォルト・ディズニー『ライオンキング』のプロデューサーです。戦略の1つとして、ブロードウェイのヒット公演を全米・カナダ・日本の多くの都市に持ち込みました。

 ベース・エンタテインメント社という別の会社は、クリア・チャンネル社演劇部門の責任者が独立して作った会社です。この会社とキー・ブランド・エンタテインメント社の2社が、現在もっとも演劇関係を活発にリードしている会社です。その起爆剤の1つとなっているのが、ラスベガス公演です。ブロードウェイの公演は当然ある程度の収益が見込まれていますが、ラスベガスにはこれまで舞台関係のマーケットがほとんどありませんでした。そこでラスベガスにもミュージカルを持ち込んだのですが、ブロードウェイでは2時間15分くらいの作品も、ラスベガスでは90分ほどに縮められているようです。なぜかというと、長時間エンタテインメントに時間を費やすと、ギャンブルを楽しむ時間が減ってしまうからです。夜8時から舞台が始まり10時半に終わっても、みんなホテルに帰るかお酒を飲みに行く程度でしょう。しかし9時半に終われば、スロットマシンで遊ぶ余裕があります。


3.ライブ・エンタテインメント市場の日米比較

 日本とアメリカのライブ・エンタテインメント市場を比較してみましょう。@入場料金の合計は、日本では1兆1,150億円。この数字の中には、ライブ・エンタテインメント以外にもスポーツやテーマパークなどの入場料も含まれていて、うち約10%が音楽や演劇関係です。ちなみにこの数字は、化粧品やセメント産業と同じぐらいの規模です。アメリカはどうかというと、入場料の合計は日本のおよそ3倍にあたる3兆3,896億円です。Aライブ・エンタテインメントの延べ動員数は、日本では3億3,881万人。アメリカでは20億2,429万人なので、日本の約6倍です。Bライブ・エンタテインメントに従事している就業者数は、日本は12万人、アメリカは3.7倍の43万人です。アメリカの人口は日本の2.3倍ですが、就業者数や動員数の差はもっと大きいですね。C国民1人あたりの市場規模は、日本は8,731円、アメリカは1万1,827円で、日本の約1.4倍です。D国民1人あたりのライブ・エンタテインメント参加回数は、日本では2.7回、アメリカは7.1回です。Eライブ・エンタテインメントの入場料の単価は、日本を1とすると、アメリカは0.7なので、日本よりも3割程度も安い。この日本の単価の高さが、日本においてライブ・エンタテインメントの消費が少ない原因の1つではないかと考えられます。また好き嫌いが激しいことも、要因となっているのかもしれません。

 なぜ日本では入場料金が高いのでしょうか。そこには日米市場の構造的な違いがあります。主催者である運営団体は法的身分により、営利団体と非営利団体の2つに大別されます。このことに関して日本では、社会的支援などのサポートが少ないのです。寄付金や助成金収入の割合を見ると、音楽の場合は全体の約20%しか助成金を受けていません。これに対してアメリカでは、約50%が助成金を受けています。演劇関係の場合は、日本では助成金を受けている団体は10%にも満たないのに対し、アメリカでは約40%にも上ります。芸術文化に対する支援の寄付金は、日本は200億円ですが、アメリカではなんと1兆5,000億円です。こういったことが、日本では入場料が高い要因の1つだろうと考えられます。それ以外にも、税控除の問題やエンタテインメントに対する考え方の根本的な違いもあると思います。またエンタテインメントビジネスを、文化啓蒙活動と勘違いしている政府も原因の一つと考えられます。エンタテインメントの世界はあくまでもビジネスの世界なのだということを、きちんと理解してくれていないのです。ほかにも、新聞社や放送局や広告代理店の退職者に再就職のポストとして教授職を提供し、トレンドの表面を追うだけの大学の問題。あるいは、自分たちでは世界に通用する専門家を育成できない企業の問題など、さまざまな問題が指摘できます。そういう私たちの会社も同じで、自分たちの会社のなかで世界に通用する専門家を育てられていません。以上のような問題点が、日本のエンタテインメントビジネスを国内に封じ込め、世界戦略をなかなか発することができないという現状を作り出していると思います。

 アメリカの興行界は買収を繰り返すことによって発展してきたため、現在は2つの大手企業に集約されています。この2社はコンプライアンスを重視する企業なので、ビジネスの透明性をきっちり要求します。逆にいえば、日本のエンタテインメントビジネスは透明性がなく、どんぶり勘定という古い体質が指摘できます。このあたりが、日本のエンタテインメント産業の今後の発展における、1つのキーワードになると思います。

 世界のマーケットで競争力を高めるには、ビジネスモデルとしてマスター・プロモーター制の確立、シーズンチケット制の導入を参考にすべきだと思います。ドームやアリーナでのツアーを実施している国内アーティストなどの場合、事務所とプロモーターという明確な区分はなく、アーティストの事務所がマスター・プロモーターと同じようなポジションにいます。場合によってはアーティストが社長だったりしますので、マスター・プロモーターとはちょっと違います。どちらにせよアーティストがコントロールしているということも、マスター・プロモーター制の1つの参考例になるのではないでしょうか。このシステムが今後どこまで続いていくのかは分かりませんが、売れているアーティストの多くが自主事業を全国で行っているようです。日本でも、世界制覇とまではいかずとも、国内においてはマスター・プロモーター制が広がりつつあるのではないかと思います。

 消費者のニーズに合った作品を作るためには、当然ながら"作り手本位"ではなく、お客さんの意向に沿った"観客本位"の発想ができる優秀なプロデューサーを育てていく必要があります。わが国のエンタテインメント産業は、世界各国で高い評価を得る優秀なコンテンツを創出する能力を有しています。民間事業者の工夫や努力、官による環境整備や支援によって、ライブ・エンタテインメント産業が21世紀の日本を支える新しい主力産業の1つとして発展していく可能性は十分にあると考えられます。


さいごに

 以上、世界戦略について説明をしてきました。最後に、アジアの中における日本のポジションについてお話します。アメリカの知的レベルの高い人たちから見ると、非常に残念なことに日本はすでに重要ではないというくらい、日本に対する価値観が下がってきています。アジア研究の中において、かつては注目の的だった日本は今は見る影もありません。ある学会では、発表された21本の論文のうち日本に関する論文は3本だけで、あとの18本はアジアの日本以外の国に関するものだったそうです。アジア研究において日本の占めている割合は、かつてのインドネシアやフィリピン程度に低下しているといった話もあります。このことを、ぜひみなさんに考えていただきたい。これから先、日本がアジアのリーダー、世界のリーダーになっていけるよう、みなさんにぜひ努力していっていただきたいと思います。


―以下、質疑応答―

Q.講義では、マドンナやU2などトップアーティストを例に、世界的な観点からお話をされていたと感じた。その一方で、日本におけるいわゆるアンダーグラウンド・ミュージックについてはどう考えているか。

A.エンタテインメント自体、その対象が1人でも大勢でもアーティストと観客の貴重な1対1の関係だと思っている。また、大きなものだけではなく小さなものも大切にするというわれわれの姿勢は変わらない。しかしビジネスの話になると、大きな規模で見越していかなければ企業が成り立たないのも事実。だからといって、トップアーティストだけがすべてだとは決して思っていないし、これは私たちの重要なテーマだと思っている。

Q.海外では、レッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズなど、年配のアーティストが多いように感じるが、日本の年配アーティストといえば、サザンオールスターズや松任谷由実くらいしか思い浮かばない。なぜ日本では年配のアーティストが売れないのか。

A.ある部分においてはそれも事実かもしれないが、最近は60代ぐらいの年配アーティストが非常に元気だと感じている。先日の南こうせつさんのコンサートは、非常に寒かったのにも関わらず同世代の人たちが何時間も盛り上がっていて、ものすごいと思った。今後も日本では、マドンナやローリング・ストーンズなどに負けないくらいの中年グループがどんどん活躍するのではないか。それとは逆に、年配の人たちにアピールできるような若いアーティストが育って欲しいという期待感も、大いにある。


【参考文献】
・『ライブ・エンタテインメント新世紀』北谷賢司、ぴあ総合研究所、2007年
・『NEWSWEEK』阪急コミュニケーションズ、2005年12月7日号





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