JASRAC寄附講座 コンテンツ産業論1 立命館大学産業社会学部

10月15日

 第三回目は、社団法人全国コンサートツアー事業者協会の山本幸治氏より、「コンサートビジネスの歴史と現状」についての講義が行われた。(以下はその要約)

コンサートの歴史は浪曲(言葉に節をつけたもの)を移動して歌い出したのが始まりだ。その後、ベトナム戦争の反戦活動で、平和を願う気持ちを歌に込める「ソングライター(フォークソンガー)」が生まれた。また、大阪万博でアマチュアのフォークソンガーを呼んでコンサートを行ったことをきっかけにコンサートスタッフ部門が発展した。

人気アーティストは出世魚のように誕生する。コンサートプロモーターの目に止まるところから始まり、50人の会場、100人の会場、1000人の会場と順々に大きな会場でコンサートを行う。そして、チケットが売り切れるようになると人気アーティストと認められる。人気アーティストになると、コンサートプロモーターは「戦略」を仕掛ける、例えば、4000人の需要には4000枚のチケットを用意せず、その半分の2000枚しか販売しない。すると、チケット取れなかった2000人に「見たいのに見れなかった」という気持ちが生まれ、いわゆる「飢餓状態」を作り出すことができる。その飢餓状態が次のコンサートのチケットの売れ行きにつながる。

コンサート現場からの課題は3つある。1つは「著作権の問題」である。興行師(コンサートプロモーターの前身)の時代は、著作権がどういうものか理解されていなかったが、現在ではコンサート会社が著作権協会にコンサートの内容を申請し、使用料を納め、その使用料がアーティストへ支払われる仕組みになっている。また、最近では新たに携帯電話による著作権問題が出ている。コンサート中に携帯電話で通話することで会場にいなくてもその音楽を聞くことができるという著作権侵害だ。しかし、携帯電話を規制する方法が無いので、対策を施せないでいるのが今の現状だ。2つ目は、「事故に関する問題」である。ライブではダイブや放水で怪我をすることがあり、死亡事故につながるケースもある。しかし、ライブの事故の場合加害者は特定できないため、治療費・裁判費・給料手当などはコンサート会社が保証しなければならない。そのため、コンサート会社はしっかりと保険に入らなければならない。3つ目は、「チケッティングに関する問題」である。ダフ屋はチケットの無い人に高く売り、余っている人からは買取りをしている。金券ショップやインターネットオークションでは、安くまたは高く不当な値段で取り引きされている。ダフ屋は「迷惑防止条例」で取り締まることができるが、金券ショップは古美術商免許の基に営業しており、法律にふれないので取り締まることができない。「本当に聞きたい人に定価で行き渡るようにしたい」というのがコンサートプロモーターの願いだ。

コンサートプロモーターは「曲やアーティストに惚れる商売」だ。コンサートが始まる瞬間、音楽が鳴り出す瞬間に「寒気がするほどの嬉しさ」を感じる。またコンサートが終わった後の客の表情を見たり、感想を聞いたりして、それらを楽屋で話題にする時「プロモーターの喜び」を味わうのだ。


「1.コンサートツアーへの道程」

「2.コンサート周辺の変化」

「3.現場からの課題」

「4.新たな動き」


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