JASRAC寄附講座 コンテンツ産業論1 立命館大学産業社会学部

10月22日

 第四回目は、文部科学省スポーツ・青少年局(元文化庁著作権課長)の岡本薫氏より、「『著作権ビジネス』とは何か?−コンテンツ・ビジネス、権利ビジネス、リスク・ビジネスー」についての講義が行われた。(以下はその要約)

著作権を一言で表すと、「人の作ったもののパクリは駄目」ということだ。「パクリ」とは、「無断で使う」ことである。そしてこの「使う」には「使用」と「利用」の二つの意味がある。「使用」が視覚的な意味(見る)であるのに対して、「利用」は「許可がいる」という意味であり、著作権に関わってくる。

著作権問題を考える時、まず「自由」の概念について理解してもらわなければならない。人間というのは、誰もが自由に(欲求のままに)行動したいと思っているものであり、その「自由に行動したい」人間が複数集まると、自由と自由(欲求と欲求)の対立が発生する。対立は放って置くと紛争や大混乱に繋がってしまうため、対立を無くすために「ルール(法律・契約)」が必要となる。

「自由」の概念を踏まえて、著作権問題を考えてみよう。著作権を持っている側の「クリエイター」は、自分の作品(曲)を守りたいと思っているため、「著作権を強くする欲求」を持っている。一方で著作権を利用する側の「ユーザー」は、音楽(曲)をできるだけ安く手に入れたいと思っているため、「著作権を弱くする欲求」を持っている。ここで、「自由」の概念から、欲求と欲求(自由と自由)の対立が発生する。また、「クリエイター」の「作品を守りたいという欲求」も、「ユーザー」の「音楽をできるだけ安く手に入れたいという欲求」も限りがなく、お互いに不満の状態が続く。そして両者の不満のぶつけ合いは、「自分を弱者にすること」でエスカレートする。「クリエイター」は、「作品が無料で取り引きされるのでは、儲けにならない。稼ぎが無いと生きていけないので自分は弱者だ。」と言う。「ユーザー」は、「自分の少ない稼ぎではCDを買うことはできない。CDを買うことができない自分は弱者だ。」と言う。そして両者共、「弱者である自分を助けるために、著作権を強く(あるいは弱く)して欲しい」と主張する。この両者び対立が著作権問題なのである。

著作権問題の解決策は、両者が契約(ルール)を交わすことだ。しかし、今まで見てきてわかるように、著作権問題の両者は「どっちもどっち」である。そしてこの両者の間に入って著作権問題に携わる者はこの「どっちもどっち」を前提にルール(契約)を作らなければいけない。注意しておきたいのが、「ルール」と「モラル」を混同してはいけないということだ。「ルール」は「法律上」の約束事、「モラル」は「思想上」の約束事であり、モラルで物事を決めてはいけない。例を挙げると、「羊の肉を食べて良いか」をモラルによって決めようとすると、宗教の問題であり結論が出ない。結局、著作権問題のルール(契約)は、「クリエイター」と「ユーザー」が譲歩し合うことによってしか成立しない。しかし、両者の欲求は限りが無いので、両者共に納得のいく「譲歩の具合」は無く、著作権問題の解決は難しい。



「著作権政策の『戦略5分野』」
  ・法律ルールの整備
  ・円滑な流通の促進
  ・国際的課題への対応
  ・教育の充実
  ・司法救済制度の充実

「著作物等のマーケットの特徴と問題」
  『多くの権利者』と『多くの利用者』は市場  の中で『出会う』ことが困難。

「著作権契約を勧めるパターン」
  ・1対1(着メロ業界で成功)
  ・N対N(これから成功させるべき)
  ・N対1
  ・1対N

   

「リスクビジネス」
  著作権で映画を作る時の保険


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