JASRAC寄附講座 コンテンツ産業論1 立命館大学産業社会学部

10月29日

 第五回目は、吉本興業株式会社の中井秀範氏より、「吉本興業におけるブロードバンドコンテンツ戦略」についての講義が行われた。(以下はその要約)

吉本興業は「劇場」、「ラジオ」、「テレビ」と常に最新のマスメディアを利用してきた。その中で「ラジオ」を導入するいきさつはとても印象的だ。当時吉本興業の芸人の給料は、何本もの劇場講演をして1ヶ月70円だった。しかし、ラジオ業界のNHKはたった1本の放送収録で70円を支払うといって芸人を口説いた。吉本興業は大反対をして阻止しようとしたが、芸人は出演し、NHKと吉本興業の争いは新聞にも取り上げられ大問題に発展した。しかし、その後そのテレビ出演をきっかけに劇場に来るお客の数が増える結果となり、吉本興業は喜んでNHKと提携した。

そして今はブロードバンド(インターネット)の時代が来た。ブロードバンドのメディアとしての優位性は、「常時接続」、「参入障壁の低さ」、「双方向性」、「時間軸に縛られない」、という4つである。「常時接続」とは「いつもつながっている」ということである。「参入障壁の低さ」とは「放送するのに免許がいらない」、「大資本が必要な産業ではない」ということである。「双方向性」とは「送り手と受け手がイコールの関係(N対N)である」ということであり、「時間軸に縛られない」とは「テレビのような時間表が無い」ということである。

吉本興業において有料コンテンツ足り得るものは、「儲かるもの」、「本当に便利なもの」、「楽しいもの」の3つである。「本当に便利なもの」とは「一度使うと手放せないもの」であり、携帯電話が例に挙げられる。今となってはもう携帯電話の無い生活は考えられない。「楽しいもの」について、一度テレビで放送されたものをDVD化して売れるのは「ガキの使いやあらへんで」や「ダウンタウンのごっつええ感じ」の2作品ぐらいだ。その理由としては、出演者がその時々の「時事ネタ」をしないからではないだろうかと推測している。

今CD等は逆輸入されると、定価の約半額で販売される。しかし、半額で取り引きされるのは、そのCD(コンテンツ)がそれだけの価値だということではないだろうか。お金を払ってコンテンツを買う人というのは、そのコンテンツの価値(お金を出して払うだけのものかどうか)をきちんと理解している。本当に欲しいと思ったら、逆輸入を待つこと無く、予約をして買ってもらえるはずだ。故に「本当に欲しい」と思わせる作品を作ることが、われわれコンテンツを作り出す側の力によるもので、腕の見せ所だ。



「自前メディアの取得」
  ・Fandango!、casTY、
   ブロードバンド(インターネット)
  ・ヨシモトファンダンゴTV(デジタルCS)
  ・携帯電話

「ブロードバンド時代の価値観」
  
・時代ー意識テクノロジー
  ・生産物ー結びつき
        (個の連立と連帯感)
  ・権力ー意志ある個人
  ・富ー存在感
  ・プライベート
 

「Heart of Entertainment」
〜これだけがあればビジネスはやっていける〜
・御代を頂戴して、作品を提供する
・お客様に、代金以上の満足感を与える
・また、見ていただける、買っていただける


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