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11月5日
第六回目は、社団法人日本書籍協会の五味俊和氏より、「文字・活字文化の振興と出版界の現況」についての講義が行われた。(以下はその要約) |
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日本では読解力の低下が深刻な問題となっている。政府は対策として平成17年7月29日に「文字・活字文化振興法」を定めた。この法律は、文字活字文化が長い歴史の中で民主主義の発展に欠かせないものであり、それを振興させることで知的で豊かな国民生活や活力のある社会を作り出すことを目的に制定された。そして、文字・活字文化を様々な活動における文化的所産と定義している。また、地域・学校・家庭は等しく豊かな文字活字文化を受ける環境にすること、文字・活字文化の振興には国語が日本文化の基盤であること、図書館や教育機関は体制を整えることなどが定められている。法律制定の他に「ブックスタート」、「読み聞かせ会」、「朝の10分間読書」などの読書推進運動も実施している。その中で小中学校などで行われている「朝の10分間読書」は大変成果を上げている。「朝の10分間を読書の時間と決め、どんなジャンルの本でも良いので読書をする」という運動だ。 日本の出版概況について、出版販売額は1961年から好景気の時代は順調に上がっていたが、1996年を境に徐々に下がっていった。ここ6年の対前年比も常に下回っている。しかし2004年になり、スケールは小さいが前年比を上回った。販売額は年間約2.3兆円で、販売部数は年間約37億冊(一人あたり37冊)である。平均単価は書籍が1250円、雑誌が430円である。これは、他の先進国に比べて大変安い。その理由は日本の定価制度がしっかりしているからだ。他の国では、電化製品のように書籍も定価割引があるため、値引きを見込んで定価を高く設定しているのだ。しかし、日本では書籍は必ず定価で販売されるので、値引きを含めない安い定価を設定できる。出版物の流通は、委託販売がメインである。書店で売れなかった出版物は、取引会社を経由して出版社に返品される(返品が利く)。出版社は返品された出版物を在庫として書店・読者からの注文に対応する。 図書館は「無料貸し本屋化」・「コピー天国の助長」という点で著作権と関わっている。図書館はベストセラーを何十冊も購入し貸し出しをして、無料の貸し本屋になってしまっている。また、図書館にはコイン式コピー機が設置されていて、安くでコピーができてしまう。外国では、コピーの料金は日本に比べて大変高い。色々な対策が考えられているが、解決に至っていないのが現状だ。 |
「文字・活字文化の振興」 「出版と流通」 「著作権と出版者の権利」 |
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