JASRAC寄附講座 コンテンツ産業論1 立命館大学産業社会学部

5月14日

矢島 靖夫 「音楽産業の過去・現在・未来〜ネットワーク配信の進展を視座において」

矢島氏の講義は日本レコード産業の歴史を振り返ることから始まった。1909年に日本で蓄音機とレコードの生産が始まったが、そのわずか3年後の1912年に浪曲を無断で複製するという「桃中軒雲右衛門」事件が発生したことなど、海賊版の問題が長い歴史を持つことを伺わせるエピソードもいくつか紹介された。なお、1912年時点ではこれを取り締る法律がなく、レコードメーカーの敗訴となっている。1920年になってようやく原盤製作者に複製権(コピーライト)が与えられ、レコード産業の基盤が整った。

続いて矢島氏は私的録音の問題について、「私的録音によって著作権者の権利が犯されている。だが、私的録音に必要なハードのメーカーは私的録音を野放し状態にし、行政も『音楽業界や消費者の意見が一本化されていないから』と言って動いてくれない。消費者が『規制を強化してほしい』なんて言うはずがない」と語った。

近年の規制緩和の流れの中で、CDや本などの再販制度について、「今は資本の活動を100%保障する時代であり、消費者の選択肢を増やし、利便性向上のためにも再販制度はなくすべきだ」との意見を耳にする機会が多い。だがこれに矢島氏は次のように反論した。「再販制度があることによって、値崩れしないため、お店はあまり売れないが価値あるレコードも売ることができる。メーカーも生産を続けることができる。その結果、日本は世界一レコードの種類が豊富になっている。また、無名の新人アーティストに投資することもできる。例えばアメリカでは、ドラッグストアや量販店がよく売れるタイトルだけを安く売っている。量販店はドラッグストアはCDで儲からなくても、お客が店に来てくれれば他の商品で儲かるから安くできる。その結果、専門店は潰れ、メーカーは売れるものしか作れなくなっている」

 


「技術の進歩と共に、音楽の入れ物は変わっていく。だが、形は変わっても同じ著作物であり、保護されるべきだ」

「『強い者が勝つ』のが日本社会。あたりまえではあるが、それを肌身で感じてきた」

「音楽は安ければいいというものではない」


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