JASRAC寄附講座 コンテンツ産業論1 立命館大学産業社会学部

7月2日

もず 唱平 「地方から発信する音楽コンテンツ創造プラン」

関西や他の地方に拠点を置いて活動を続ける歌手の名前をあなたは1人でも挙げることができるだろうか。テレビで目にする歌手は10人いたら10人とも東京に住み東京で活動していると言っていいだろう。当然、歌手だけでなく作詞家も作曲家も、音楽に携わる人すべてがほとんど東京に拠点を置いていることは容易に想像できる。そんな中、関西に拠点を置いての音楽活動にこだわっているのがもず唱平氏。そのこだわりゆえに見えてきた日本音楽業界の姿を語ってくれた。

講義の冒頭でもず氏が強調したのは、知的財産権が国益につながる重要な権利であり、国家政策として知的財産戦略を推進することの重要性だった。もず氏はアメリカの例を挙げ、「アメリカで著作権は著作者の死後50年間保障されていたが、ディズニーの死後50年が目前に迫り、ディズニーのキャラクターを自由に使えると世界中が期待していた。ところが、アメリカは著作権の保障期間を死後70年とするよう法律を変え、70年が近づくと、今度は95年に延長した。これはアメリカ政府が、単にディズニーの利益となるだけでなく、国益になると考えたからだ」と語り、アメリカでは数十年前から知的財産権を国家戦略の中心に位置付けていることを明らかにした。

続いて日本の地方別に見た著作権ビジネスの現状に触れた。「著作権料の支払額を地方別に見ると、人口数に比例している。つまり、地方格差はない。しかし、著作権料の受取額を地方別に見ると、東京対関西で250対1になっている」と著作権料の分配がほとんど東京に集中していることを明らかにした。もず氏はこの現象について「情報発信機能が東京に集中しているため、物を作る人が東京に集まっている。東京以外の地方からは情報発信ができないのが現状だ」と解説した。しかし続けて「インターネットの普及によって、この格差が是正されていくだろう」と将来的には東京一極集中が緩和されていくとの予測を示した。

最後にもず氏の活動の1つである大阪音楽祭について「大阪の行政や経済界に出資を呼びかけ、10年かけてようやく開催できた。関西のミュージシャンにもチャンスを作りたい」と思いを語り、学生にも参加を呼びかけた。

もず昌平写真

「知的財産権は国益につながる権利」

「著作権ビジネスは日本の基幹産業である鉄鋼業より産業規模が大きい」

「ネットビジネスが情報産業の主役を演じつつある。音楽著作権を切り口にしても、時代が変わろうとしているのがわかる」

「大衆音楽の評価はクォリティの問題ではなくアイデンティティの問題。固有の事情に向かって深度を深め、個性化したものを発信すると、世界に愛される作品になる」


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