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2016/7/28

No.55「 産社 ありのままの自分との出会い 」
●1998年卒業:寺田 栄里子さん

出雲から出たい! その思いで立命館へ

 大学を卒業してから、間もなく20年を迎えようとしています。

 私の仕事は酒造り。出雲で「+旭日(じゅうじあさひ」と「八千矛(やちほこ)」という銘柄を醸しています。

 杜氏は旦那様。私は副杜氏。実はお互い産社卒!

 昨年の産社創立50周年の記念イベントの折に、思いがけず出展の依頼を頂いた事から、改めて学生時代を過ごした懐かしい空間で、過去の自分に思いを馳せてみたりしました。その時にはこんな人生を送るとは思っていなかったのですが・・・!!

  実家が造り酒屋だった私は、子供の頃から親や蔵の看板を背負わされているような窮屈さを感じ、とにかく高校を卒業したら出雲を離れようと思っていました。具体的に何かをしたい、なりたいという夢は持てていなかったように思います。

 進路を検討する中で出会えた立命館大学という存在は、なんだか色々と学べる自由がありそうで、何かを見つけられそうで、私をどんどん引き寄せました。やっと地元を離れられる!という不純な動機と共に私の学生生活は始まりました。

何かをやり遂げたわけではないが

 講義を受ける日々以外にも、ソフトテニス部への所属や存心館の食堂のバイト等、学生らしい日々を過ごしました。学外でも手話サークルに通ったりと、時間は貪欲に使った気がします。それはある意味自分探しでもあったのかなと思います。個性豊かな友人たちと出会うにつけ、知識や経験の幅が広がるにつれ、何も無い自分、何も無いと思ってしまう自分に焦る気持ちがありました。せっかく自由になれたのに、なんともったいない・・。 でもそんな自分を救ってくれたのが高垣ゼミの存在でした。「ありのままの自分を認めよう・・」という言葉と、そのもとに集まった仲間たちの存在に、前を向かせてもらえたと思っています。

 結局、何かをやり遂げたわけでも、大きな冒険をしたわけでもなかったのですが、私にとっては後からジワジワと実感するような貴重な4年間になっていました。世界を広げてもらったからこそ自分の狭さを知り、多くの価値観と出会えたからこそ自分の小ささを知れたのです。それは友人との出会いと共に産社で得られた宝物だったように思います。

 卒業後はオーラに引き寄せられ宇治茶の老舗に就職。急遽地元に帰ることになるまでの3年という短い期間でしたが、素晴らしい経験をさせて頂きました。

地元に戻り、今は恩返しの心で

 最初は泣く泣く戻った出雲でしたが、日本の伝統文化でもある酒造りや、酒そのものの味わいの幅、料理との相性や、温度の変化によって深まる魅力に気づき、ズブズブとこの世界にはまっていきました。後継者不足から、自ら酒造りに関わるようにもなりましたが、米や微生物との対話はなんとも奥深く楽しいものです。あえて江戸時代の酒造りを復活させてみたり、流行とは逆をいく味わいしっかりの酒を追求してみたり、熟成酒を育ててみたり・・。どこかで個性派の道を歩んでしまうのは、やはり産社に誘われた性なのでしょうか!いずれにしても、外に出ていなければ、このような展開はなかったはずです!

 

 大きなやりがいを感じる、迷いの無い道をようやく歩みつつある今、これまで支えてくださった方や、ご迷惑をおかけしてしまった方たちに恩返しをするつもりでしっかりとした造り手になっていこうと思います。 そして人と人を繋いでいける魅力を湛えた日本酒を醸していきたいと思います。

●寺田 栄里子(てらだ えりこ)

卒業年月日 1998年3月 卒業
出 身 地 島根県
現 住 所 島根県
勤 務 先 旭日酒造有限会社
ゼ ミ 名 高垣忠一郎ゼミ
所属サークル
団 体
体育会ソフトテニス部