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2017/1/25

No.61「やり残しのないよう、悔いのない一日一日を大切に」
●1978年卒業:辻 利幸さん

悔し涙から始まった

 今から45年も前のことですが、高校2年生の夏、私は自分に腹がたち涙が止まりませんでした。2年生に上がる前に退部した野球部が大阪代表で夏の甲子園に出場することになりました。子供の頃から野球三昧だった中学生の私を野球名門の私学に入れてくれた両親の期待を裏切り、1年生の夏に退部しておりましたので、辞めなければよかったという勝手な悔し涙です。

 退部後の私は遊び惚けてしまい、教科書は教室のロッカーの中に置いたままで大学進学など頭の中にはありませんでした。そんな3年生の4月に担任の先生から呼び出され、「甲子園に出た連中が有名大学に進学できることを悔しく思わないのか?!」「おまえはやればできるんだ!」と暗示をかけられ、関関同立に現役合格という目標を掲げて一日7時間×10か月メニューでの受験勉強が始まりました。

兄貴的な存在の恩師との出会い

 それは、砂を噛むような味気ない受験勉強のはずでしたが、頭の中が空っぽ状態だったので読んだり書いたりすることがどんどん頭の中に蓄積していく実感がありました。

 晴れて入学できた後は大阪の自宅から南海、国鉄、阪急、市電と乗り継ぎ、衣笠キャンパスまで片道2時間以上をかけての通学が待っていたのですが苦にはなりませんでした。それは恩師の口癖である「成せば成る」を達成した喜びの気持ちが大きかったからだと思います。

 3回生からの2年間は、当時入ることが難関とされていた深井ゼミ「国土開発と水資源ゼミナール」でお世話になることができました。研究テーマが決まれば机上での学習だけではなく、現地を訪れて調査をするフィールドワークという手法の魅力あふれるゼミでした。今は亡き深井純一先生ですが、できの悪い私の話にも真剣に耳を傾けてくださり、適切なアドバイスをいただける兄貴的な素晴らしいお人柄でいらっしゃいました。

自分の足で歩いて、見て、聞く

 大学を卒業し、ホテルで勤め始めた時に気付いたことがあります。それは、お越しになるお客様の方が、私より奈良のことをよく知っていらっしゃることがあるということです。これは極めて恥ずかしいことだと思います。それを克服するため休日に時間があれば神社仏閣等を訪ねるように心がけてきました。一回目は電車や徒歩で、二回目は車で訪れて所要時間や情報をノートしていきます。現地で出会った人たちや利用したお店の人たちとも積極的に会話して情報を収集することも楽しい仕事の一つです。天理市の山辺道を歩いていて途中の畑で作業されている農家の方と仲良くなり、ナスやトマトの育て方を教えてもらい、現在趣味で続けている野菜作りに大いに役立ちました。これらはすべて深井ゼミで体得した自分の足で歩いて見て聞く「現地調査」のお陰だと感謝しています。

 ホテルマン人生もゴールが見えてきていますが、やり残しがないよう悔いのない一日一日を大切に精一杯仕事を続けたいと思います。

●辻 利幸(つじ としゆき)

卒業年月日 1978年3月 卒業
出 身 地 大阪府
現 住 所 奈良県
勤 務 先 ㈱奈良ホテル
ゼ ミ 名 深井純一ゼミ
所属サークル
団 体