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2020/8/20

No.85「衣笠キャンパスと周辺の食堂の思い出」
●1986年卒業:菅 滋毅さん

学内&周辺食堂マップ

 今では神戸で3代続く洋食屋のおやじとして偉そうに味の講釈をたれているが、今から35年以上前の貧乏学生時代は味は二の次で、とにかく安く腹の膨れるものを探す毎日であった。

 当時、産社の学舎であった学而館の地下の食堂は、とにかく安かったと記憶する。お金のない時は自販機で素うどんと白飯の食券を買い、友人と二人で「うどんライス」にして分けて食べたりした。今考えると衣笠キャンパスの学生食堂は充実していた。存心館の食堂はセットモノが充実し喫茶メニューもあり、一番新しい学舎だったので女子学生にも人気があったように思う。あまりきれいなカッコをしていなかった私は、女子学生の多さに尻込みして利用回数も少なかったが、法学部の友人と一緒の時や書籍部を利用したついでの時に利用した。しかしながら、味はさておき「ちょっと量が少ないな」と思った以外は記憶がない。

 以学館の食堂はステーキが鉄板に乗って出てきたりして、少しお高めのメニューがあったが、いつも混んでいてあまり利用しなかった。確か、生協の散髪屋があって基礎ゼミで一緒の友人がカットしてもらったが少々トラ刈りになって帰ってきたことを思い出す。

 本格中華が食べたい時は衣笠体育館の中華食堂でラーメンやチャーハンを食べた。特に1,2回生で体育の授業があった時は必ず食べた気がする。とにかくスープがうまく、チャーハンについていたスープも旨かったが、そのうちに朝、校門前で配られる「餃子の王将」の餃子無料クーポン券にひかれて皆で王将に行くようになり、足は遠のいた。

 学食に飽きたら、南側校門の前にあった衣笠食堂で豚肉の生姜焼き定食や野菜炒め定食を食べていた。味は濃いめで、もちろんセルフサービス、確か文学部の学舎の近くだったので学食の続きみたいな感じであった。東側校門の通りは喫茶店や飲食店が並び、今では懐かしいテーブルゲームを並べたゲームセンターでは百円玉を積み上げた学生がインベーダーゲームに興じていた。コーヒー一杯で2~3時間も時間をつぶせる店や、今はもう存在しない「くれたけ」食堂も懐かしい。当時は自宅を改装して学生に昼食を販売してくれるお店もアリ、「今日はお腹が減ってます!」というと無料で大盛りにしてくれたりした。

 当時は夜学もあって夕方も営業してくれる学食に晩御飯を食べに学校に来ていた事もあった。夜のキャンパスは昼間とは全く違う表情を見せ街灯がつきグランドには照明塔が炊かれ夏の蒸し暑い夜は夕涼みにも良かった。

時間の無駄遣いが出来たあの頃

 入学して初めてのゼミコンパは北野白梅町の「串八」だったと記憶する。学校から近く単なる飲み会でも利用していた。ゼミの友人がバイトしていたが、「まかない」が揚げ物ばかりでイヤになりバイトを止めたという話を聞いていたので、私の店では揚げ物ばかりでなくバランスよく「まかない」をバイトに提供したおかげか「まかない」がイヤで辞めるバイトは30年間いなかった。

 等持院南側の「ジャンボお好み焼き」も下宿の友達と晩飯によく行った。当時は店内で鉄板のテーブルで食べる事が出来た。いつも学生でごった返していたのは、ジャンボの名の通りのバカでかいお好み焼きとこれでもかという量の焼きそばが破格の安さで食べられたからだった。なんせ今では考えられない大きさのお好み焼きで食べ終わるとしばらくお好み焼きは食べたくなくなるほどお腹いっぱいになった。

 大学時代の思い出をと言われていろいろ記憶をたどってみたが、サークルに参加したわけでもなく、下宿したわけでもなく、阪急電車に乗って毎日毎日神戸から京都まで通学して、その間にバイトや友人の下宿に転がり込んで朝まで酒を飲んだ思い出くらいしかない。今考えてみても「もう少し有効に時間を使えたら」と思う事もあったが、談話室でタバコの煙をくゆらせながら何時間もぼんやり過ごしたり、阪急京都線で寝込んでしまい京都大阪間を2往復して結局、学校に行かず帰宅したり今ではしたくてもできない時間の無駄遣いをさせてもらえたのは、モノを考える力を養えたのでないかと思う。物を考えるときにあれこれ考えると良い考えが浮かばない。ぼんやり頭の中をテーマも決めずに考えると思わぬアイデアが浮かぶことがある。

 大学時代は味なんか関係ない、とにかく腹が膨れればと思っていたが、それでも「安くて旨い」を求めて店を探していたように思う。財布の中の百円玉を数えながら学食にするか学外の食堂に行くか、たばこ代も考えて決めていた当時の自分はそれなりに充実した学生生活を送っていた。

息子達に本心から「大学は楽しい」と言える

 息子達もすでに大学を卒業し社会人になったが、彼らが入学する時に無駄な時間を過ごす重要性を教えた。仕事に追われ生活に追われ時間に追われる現代で追いまくられながら考えるのではなく、一旦立ち止まって時間をかけて考える事は重要だと私は思っている。毎日コンビニ弁当を食うのではなく、今日は学食で昼飯を食うか、学外のラーメン屋に行くか、ルーティーンを壊すと新しい考えが浮かぶから、無駄なことも考えて頭を休めるのだと教えてきた。

 何やら当時のキャンパスと周辺の飲食店マップの様になってしまったが、当時から家が洋食屋なので飲食店への関心が高く、細かく記憶している。こんな変わり者の話があっても良しとしていただきたい。

 立命館大学衣笠キャンパスで過ごした4年間は楽しかった思い出しかない。息子達に本心から「大学は楽しい」と言えるほど楽しい時間であった。その影響か彼らもそれぞれに自分の学生時代を楽しい思い出として記憶しているようである。もう一回行きたいかと問われたら同じ仲間でもう一度過ごしたいと思う。勉強はからっきしダメで卒業するのがやっと、就職は苦労したが、人生経験を積む上で最高の4年間だったと思う。

 立命館大学衣笠キャンパスには懐かしい我が青春の思い出が詰まっている。

●菅 滋毅(すが しげき)

卒業年月日 1986年3月 卒業
出 身 地 兵庫県
現 住 所 兵庫県
勤 務 先 レストラン 長田の冨士
ゼ ミ 名 松葉 正文ゼミ
所属サークル
団 体
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