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CIISでの授業が始まり2ヶ月が過ぎました。ようやく学校や授業にも慣れてきたなぁと思えるようになりました。

さて、CIISについて興味のある方もいらっしゃると思いますので、私のとっているクラスについての紹介をしていきたいと思います。観察日記(?)のようなものですので、さっと読んで楽しんでいただければ幸いです。

Jungian Psychology and East West spirituality
写真は西山智彦(2006年度 留学)撮影
写真は西山智彦(2006年度 留学)撮影

授業名を見た瞬間「これだ!」と思って、日本からすでに受講することを決めていたクラスです。かなり人気のあるクラスで、私が取っている3クラスの中では一番生徒の数が多く、先生と2人のティーチング・アシスタントを含めると総勢25人です。

先生は、「夜と霧」で有名なV・E・フランクルにも直接学んだことがあるというブレンダンという初老の紳士です。

CIISの先生にしては珍しく(?)いつもきっちりした服装をしています。シャツはアイロンがあたっているし、時々ネクタイもしています。
シャツの裾はもちろん(?)ズボンの中にしっかり入っていますし靴も革靴です。こんな人はあまりCIISにはいないので、かえって新鮮な感じです。

ユング派のセラピストでもあり、ユングについてかなり多方面にわたっての授業になります。

授業は毎週テーマが決まっていて、「ユングと錬金術」「ユングと禅」「ユングとシャーマニズム」など週によって学ぶテーマが違います。

先生の服装から見ても分かるように、かなりカッチリしたアカデミックな授業内容で、毎週のリーディングもかなりの量です。

しかもリーディングした部分ついて毎週リフレクション・ペーパーを書いて提出しなければならず、読んだり書いたりと明けても暮れてもユングの世界に浸らなければなりません。

一度など、この授業がある日の朝方に真っ白な部屋で真っ白な服を着て山盛りの雪見だいふくを食べている夢を見ました。

この雪見だいふくは食べても食べても減っていかず、次第に中のアイスクリームが溶け出して指にも机にもそこら中がベタベタする、という悪夢でした。

ユング的に解釈すれば何かおもしろい心理状況が説明されるのかもしれませんが、この場合ユングの力を借りるまでも無くほぼ間違いなくこの授業に対するプレッシャーだと思われます。

リーディング・アサイメントの一例をあげれば「来週までにかれこれの本を一冊」というようなアサイメントが出されそれについてのペーパーを書きます。

次の週にはまた違う本のアサイメントが出されそれについてのペーパーを提出します。これが12週間繰り返されます。

留学生でなくともあまりの多さに音をあげる事もしばしばです。

私はといえば、いくら努力してもこのリーディングを完了させるのは無理だと早々にあきらめ焦点を絞って読むことにしました。

未読の部分が多いために授業中にはかなりの演技力を要しますが(さも読んだかのような演技?)、今の所なんとか乗り切っています。

しかしこのクラスの特徴はリーディングの量ではなく毎回行われるグループ・ディスカションです。(なぜなら他にも同様のリーディング・アサイメントが課されるクラスがあるので)

生徒の人数が多いため、3グループに分かれてそれぞれディスカッションを行います。

ディスカッションの内容は当日の授業のテーマでも良いし、リフレクション・ペーパーの内容でも良いし、またその時の自発的なテーマでも構いません。

しかし少人数になればなるほど発言の有無が顕著になるため、何か言わなければと毎回かなり緊張します。

しかも、クラスに日本人は一人だけなので、あたかも東洋思想の代表者のようになってしまい「何かおもしろい事をいうのではないか」「自分達の思いもつかない思想や発想をもっているのではないか」という暗黙の期待を背負っているように感じます。

日本人的感覚からか「皆をがっかりさせてはいけない」という妙なプレッシャーがかかってしまい、時どき大言壮語を吐いてしまいそうになりますが、うっかりそんな事をしようものなら後々後悔することも目に見えており、毎回が自分との戦い(虚栄vs.誠実さ?)になっています。

そんな訳で、特に東洋思想が絡むような授業内容の時には一段と無口を心がけてしまいます。けれどもこの「何も言わない」という態度も、このクラスでは何故か「東洋的」と理解してくれるようでちゃっかり助かっているような次第です。

次回はIntegrative Health Scienceというクラスについてお伝えします。お楽しみに。

Integrative Health Science
写真は西山智彦(2006年度 留学)撮影
写真は西山智彦(2006年度 留学)撮影

CIIS報告第二弾です。

前回から随分と時間が経ってしまいましたが、今回はIntegrative Health Scienceというクラスについて報告します。

このクラスは「代替治療」に焦点を絞って学んでいくクラスです。1コマ3時間で、途中で休憩が15分ほど入ります。

このクラスの特徴は何と言っても、ほとんど毎回ゲスト・レクチャラーが1時間程度のレクチャーをしてくれることです。もちろんクラス担当の先生はいるのですが、それ以外に彼女の個人的人脈を通してさまざまなオルタナティブ・メディスン(代替医療の事を英語でこう言います)の実践者の話を聞くことができます。

初回はペルーから来たアマゾニアン・ヒーラーの女性でした。ネイティブ・アメリカンの儀式と同じく、自然とスピリットの力を取り入れて人間を癒していくというメディスンです。他にも鍼灸、ローゼンメソッド、マッサージセラピー、アフリカの薬草治療、ハワイの女神信仰に基づいたヒーリングなど、様々な分野で実際に活躍しているヒーラーやセラピスト達がいろいろなプレゼンテーションをしてくれます。

また、オルタナティブ・メディスンの問題点についても同時に学んでいきます。例えば、デタラメなメディスンが規制されることなく宣伝されてしまうこと、統一された認定機関がないために資格のスタンダードが設定しにくく、プラクティショナーの質に大きな差ができてしまうこと、誰でも簡単に「自称○○セラピスト」と名のれてしまうことなどです。

授業の雰囲気は、私がとった3つのクラスの中では最もアカデミックなものでした。学生同士のディスカッションは少なめで、どちらかというと先生の講義時間が長く、またミッドタームに5枚以上、ファイナルに20枚以上のレポートの提出が求められました。

20枚ものペーパーになると、最初から最後まで自分の考えだけで書き進めていく事はかなり難しくなります。やはり、何冊かの引用文献・参考文献を組み入れながら書いていかなければなりません。このクラスに限らず、自分が学びたいテーマを留学前にある程度絞っておいて、事前に日本でそれに関連した本を読んでおくことはとても大きな助けになります。留学を考えている方は、英語の準備と並行して読書をオススメします。

クラスについてはこの辺にして、今回はサンフランシスコの生活事情も少しお話してみようと思います。まず、サンフランシスコは「寒い!」です。なんとなく暖かいイメージがあるカリフォルニアですが、サンフランシスコは寒い。

日中はわりと暖かいのですが、夜は結構気温が下がります。特に冬は雨期にあたり雨が横なぐりに降ったりすると、傘も全く役に立たず、ただただ寒い…けれども日中はコート無しで外を歩いても、ちょうどいいぐらいの気温です。

それからカリフォルニアはお酒が安い!酒税が安いのか、薄利多売なのか、また生産地から販売地までの距離が短く輸送費が安いのか、理由は分りませんが、安くておいしいお酒が飲めます。

もちろんその中でもワインはイチオシ!

日本に輸入されている全く同じワインで価格を比較してみると、日本円1500円が7.99ドル(ともに税抜き価格)で買えます。英語でワインの空き瓶などのことをデッド・ソルジャーと言うそうですが、私の家にはかなりのソルジャーが横たわっています…

では、次回は私の一番好きなクラス、仏教(アビダルマ)のクラスについてお伝えしようと思います。

Mind and States of Consciousness in Buddhist Psychology
写真は西山智彦(2006年度 留学)撮影
写真は西山智彦(2006年度 留学)撮影
写真は西山智彦(2006年度 留学)撮影

CIIS報告第三弾です。

CIIS報告第三弾として、前回予告していた通り今回はアビダルマ仏教のクラスについてお話したいと思います。

このクラスの先生はRina Sircarというビルマ僧の女性です。CIISファクルティー・メンバーの中でももっとも古くから教えている教師の一人であり、生徒のみならず他の教師やスタッフからも多大な尊敬を集めている先生の一人です。

さて、このクラスは毎回瞑想から始まります。20分から40分間、先生のガイドに従って瞑想をおこないます。もちろんごくまれに無言で呼吸に集中するタイプの瞑想もあるのですが、ほとんどの場合瞑想のあいだ中、先生が仏教における大切な教えをとうとうと話し続けます。

留学して間もない頃は、英語を理解することに必死で、この時間に瞑想するまでには至りませんでした。けれども回を重ねるにつれ、先生の言わんとしていること、覚えておかなくてはならないことが、頭で理解するだけでなく、しっかりとこころの中に根づいているのが自覚できるようになりました。

なぜならこの授業の目的はたった一つで、毎回言い方は違えども、生徒は同じ事を繰り返し繰り返し聞くことになるからです。私たちがこのクラスから学ばなければいけないこと、それは私たちのこころを正しく養うこと、だけなのです。

個人的なことですが、このクラスに出会えたことは私のCIISでの留学経験のなかでもっとも貴重なものとなりました。それは私が今までどんな風に世界を見、感じ、働きかけてきたのかを自覚させるとともに、これからの人生にとって何が自分を幸せにすることができるのか、何が必要で何が不必要なのかを真剣に問いただすきっかけとなったからです。

このクラスは先に紹介した2つのクラスのどれとも全く系統の違うクラスです。リーディングもほとんどありません。なぜならこの授業では学ぶ主体も客体もすべて自分自身のなかにあるからです。ですからこの授業を1年間受けても、仏教の歴史やアビダルマと他の宗派との違いがよく分かる、というようなものではありません。

この授業では、自分のこころを正しく養うとはどういうことなのか、愛や憐れみをもつとはどういうことなのか、静かに瞑想することがなぜ必要なのか、ということを自分自身で探求していく術を学ぶのです。授業自体は手段であってゴールではないのです。

このような授業内容のため、今回は授業紹介には程遠いCIIS報告になってしまいました。けれども、もしこの報告に興味を持ってもらえたならどうか私に会いに来てください。私の在り方で、この授業の学びの成果をお目にかけられると思います。

最後に。

2008年3月に応用人間科学部を旅立っていった私の同期生達へ。
本当におめでとう。
あなた達の未来が笑顔とよろこびに満ちたものでありますように。
そして強く、しなやかで美しいこころを育んでいかれますように。
またきっといつか会いましょう。
それまで元気で。

2008年4月13日 齊藤由香

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