2007年度研究会報告
第1回(2007.4.28)
テーマ | 『生活環境主義と父島のエコツーリズム』 |
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報告者 | 古村 学(龍谷大学社会学部) |
報告の要旨
報告に先立って、2007年度の計画の話し合いをおこなった。
今回は、龍谷大学非常勤講師の古村学さんに「地域生活から見たエコツーリズムと自然―小笠原諸島父島を事例としてー」という題で、生活環境主義という立場から小笠原のエコツーリズムに関して話をしていただいた。
地域の「生活者」の視点ではなく、「生活」の視点から環境問題を見ていく生活環境主義の立場に立って、まず小笠原の社会とエコツーリズムの特徴を指摘したうえで、地域のエコツーリズム開発に対する態度を地域社会と日常生活から考察された。
小笠原のエコツーリズムは多様な側面を有している。政策理念が提示する自然保護としてのエコツーリズムを小笠原のエコツーリズムの第1の側面と考えれば、ビジネスとしてのエコツーリズムのあり方は、その第2の側面である。
そして、外部からの観光客だけでなく、父島の住民にとってもエコツーリズムはレジャーでありえるという第3の側面である。父島には、小笠原にあこがれ、魅せられて移住した人が、新島民といった戦後のニューカマーだけでなく、旧島民と呼ばれる人びとの中にも多く存在している。
これらの人たちが魅せられたのは小笠原の自然、とくに海の魅力である。小笠原では、制度的、歴史的に自然と島民とは分離されてきた。島民の自然へのまなざしは、伝統的にその地域に根ざしてきた地域共同体におけるまなざしというよりは、どちらかといえば、小笠原の自然を楽しみに訪れる観光客の視線に近いという。
多くの島民にとっての小笠原の自然は、レジャーの対象としての自然から始まっており、このような島民の自然に対する意識の根底にあるのは、個人的な感覚そのものである。この個人的なかかわりの対象、レジャーとしての自然との係わりこそが、小笠原全体でのエコツーリズムという試みを支えてきたのではないかと言う。
報告者の別な調査地である南大東島の事例をも引き合いに出し、地域によるエコツーリズムの違いも論じられた。オルターナティブ・ツーリズムの代表的なものとしてのエコツーリズムの特徴とその理念と実践の齟齬などについても活発な議論が参加者との間で行われた。
江口信清