戦争は平和であり、平和は戦争である。オーウェルめいた時代がやってきた。大量破壊兵器を持ってるはずという怪しげな口実で懲罰的戦闘が開始され、テロリズムに対抗して先制攻撃が公然と正当化されるようになった。戦時と平時、前線と銃後、兵士と民間人、軍用と民生の境界はどんどん薄れてきている。
しかも、こうした変化はグローバル化とともに進んでいる。つまり、暴力は国境を越え、 それに対応する方策も国境を越えて展開される。
同時にまたこれは、これまで国家が独占してきた組織的な暴力を私的アクターが担うことにもつながる。こうした中で伝統的な「国家安全保障」のあり方が問い直されているのは確かだ。
だが、新たに打ち出された「人間の安全保障」はどこまでこうした事態に対処しうるのだろうか。グローバル化に伴って拡散する新たな恐怖について、考えてみたい。
Copyright(C) Ritsumeikan Univ. All rights reserved.