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2007年4月28日 講師:立岩 真也

生きて在るを知る ―「生存学」という企み―

 生存学創成拠点 ―障老病異と共に暮らす世界へ―
 人々は身体の様々な異なりのもとで、また自分自身における変化のもとに生きている。それは人々の連帯や贈与の契機であるとともに、人々の敵対の理由ともされる。また、個人の困難であるとともに、現在・将来の社会の危機としても語られる。こうしてそれは、人と社会を形成し変化させている、大きな本質的な部分である。
本研究拠点は、様々な身体の状態を有する人、状態の変化を経験して生きていく人たちの生の様式・技法を知り、それと社会との関わりを解析し、人々のこれからの生き方を構想し、あるべき社会・世界を実現する手立てを示す。
 世界中の人が他者との異なりと自らの変容とともに生きているのに、世界のどこにでもあるこの現実を従来の学は十分に掬ってこなかった。もちろん、病人や障害者を対象とする医療や福祉の学はある。ただそれらは治療し援助する学問で、そこから見えるものだけを見る。あるいは、押し付けはもう止めるから自分で決めろと生命倫理学は言う。
 また、ある型の哲学や宗教は現世への未練を捨てることを薦める。しかしもっと多くのことが実際に起こっている。また理論的にも追究されるべきである。同じ人が身体を厭わしいと思うが大切にも思う。技術に期待しつつ技術を疎ましいとも思う。援助が与えられる前に生きられる過程があり、自ら得てきたものがある。
 また、援助する人・学・実践・制度と援助される人の生との間に生じた連帯や摩擦や対立がある。それらを学的に、本格的に把握する学が求められている。その上で未来の支援のあり方も構想されるべきである。
 関連する研究は過去も現在も世界中にある。しかしそれらは散在し、研究の拠点はどこにもない。私たちが、これまで人文社会科学系の研究機関において不十分だった組織的な教育・研究の体制を確立し、研究成果を量産し多言語で発信することにより、これから5年の後、その位置に就く。(文部科学省への提出文書より「拠点形成の目的」。文書の全体は拠点のHPを参照のこと)。  

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