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2009年3月14日 講師: 高橋 伸彰

日本経済の混迷と構造転換の可能性

 派遣村。昨年末、東京の都心日比谷公園に突如開村された「村」である。住人は「派遣切り」などで職と住の機会を失い、最低限のセーフティネットを求めて集まった人たちだ。小泉元首相による改革を支持してきた多くのエコノミストは今回の不況と小泉改革の関係を否定し、竹中元総務相などは逆に改革の遅れが日本の不況を深刻化させているという。確かに、アメリカ発の世界的な景気悪化の責任まで小泉改革に負わせるのは「冤罪」かもしれない。ただ、問題は不況の原因よりも、リーマンショックからわずか3か月余りで東京の都心に「派遣村」を開村しなければならないほど、日本の雇用が不安定であり、生活の安心を守るはずのセーフティネットが薄いことにある。
 渇水で貯水池の水位が下がると、水位が高かったときには見えなかったものが見えてくるように、景気の「水位」が下がり不況になると、好況のときには見えなかった構造問題が見えてくる。その意味で今回の不況は小泉改革が残した負の遺産を浮き彫りにし、その問題を改めるチャンスでもある。改革が内包していた問題から目を反らすのではなく、不況が深化を続ける今こそ小泉改革の功罪を検証し、日本経済の可能性を探る作業が求められているのである。

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