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2009年6月6日 講師: 江口 信清

マレーシア・マラッカの少数民族ポルトガル人と観光開発

 マレーシアのマラッカは、この国のなかで最も植民地化された歴史が長く、その時期の遺産が多く残っている。2008年にはペナンとともに世界遺産に登録され、海外からも多くの観光客が訪れてきた。植民地期の名残りで、ヨーロッパ系の子孫(ユーラシアンズ)、とくにポルトガル系住民も比較的多くこの地に生活しており、マレー人との間で混血化が進んできたものの、その多くがキリスト教徒である。マレーシアには華人系とインド系住民も多くいる。独立後、とくに1969年のマレー系住民の暴動をきっかけに、マレー系住民の地位を向上させるために、ブミプトラ政策(マレー人優遇政策)を採られてきた。そして、マレー文化を有し、マレー語を使用し、そしてイスラム教徒であるマレー人による国づくりが推進されてきたのである。このような社会政治的環境と政府による植民地期の遺産を利用した観光開発の推進が、エスニック・マイノリティの文化とアイデンティティの保持にどのような意味を持つのかを、マラッカのポルトガル系住民の事例から考える。

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