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2011年10月29日 講師:川島 優子

日本人と『金瓶梅』

 『金瓶梅』と聞いて顔をしかめる方もいらっしゃるかもしれません。というのも、「淫書(ポルノ小説)」のイメージが強すぎるからです。明の万暦年間(一五七四〜一六一九)に誕生した『金瓶梅』は、主人公西門慶をとりまく男たちの欲望、女たちのいざこざなど、日常生活が事細かに描かれる長編小説です。『三国演義』『水滸伝』『西遊記』とともに「中国四大奇書」のひとつに数えられますが、過激な性描写が含まれることもあって、今も昔もひとり日の当たらない存在だといえるでしょう。しかし『金瓶梅』には他の中国小説にはない魅力がたっぷり詰まっているのです。
 この『金瓶梅』、江戸時代には海を渡って日本にやってきました。曲亭馬琴をはじめ、『金瓶梅』を読んだ人は少なからずいたようです。彼らは中国からやってきたこの「淫書」とどのように向き合ったのでしょうか。
 本講座では、様々な描写から『金瓶梅』のおもしろさをご紹介していくとともに、江戸時代の日本人が『金瓶梅』をどのように読んだのか、当時の資料を挙げながら見ていきたいと思います。



  伝奇小説として有名な『水滸伝』は、豪放な義賊の興亡を余さず描いており、 その作風が日本の近代文学を大きく振興させたのであろう。 その水滸伝のよりどころとなりえた原作と、これを発展させ世に問うた作者の意図は共に関心を引くが、 本日講述された内容により、しかと往時が偲ばれる。また、今に知られる梁山泊の名は、 本書に引用されたのに由来しているのも興味深く、要すれば更なる認識の機会を得たい。

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