共創セミナー「しがから“宇宙(そら)”に!」を開催しました
立命館大学宇宙地球探査研究センター(Earth & Space Exploration Center(ESEC))は滋賀県と共催で2月14日(金)に共創セミナー「しがから“宇宙(そら)”に!」を開催しました。
開会挨拶
滋賀県総合企画部松田千春部長より本セミナー開催にあたり、滋賀県産業と宇宙分野との関係性や期待について述べられました。
「いま宇宙分野は熱い、注目されている分野であると感じています。本日も県内外から多数の出席者があり、非常に関心が高いものだなと感じています。
立命館大学は、2023年7月に宇宙地球探査研究センター(以下、「ESEC」)を立ち上げられ、これまで宇宙に関する取組を進められているほか、特別講演される湖北工業株式会社も先を見据えて宇宙に関連した取組を進められています。それぞれ今後の展開を楽しみにしています。
本共創セミナーを契機として、宇宙分野に関する機運が高まり、滋賀県産業の新たな展開へつながること、並びに将来を担う子供たちに希望を与えるような動きにつながることを祈念しております。」
基調講演「宇宙分野の展望とESECの目指すビジョン」
セミナーの基調講演として立命館大学理工学部小林泰三教授より、ESECが目指す宇宙関連の研究や展望についてご紹介しました。
「立命館大学は、2030年に向けたビジョンとして、次の世代が生きる未来の視点から、今人類が取り組むべき社会課題をバックキャストし、その社会課題の解決を通じてソーシャルインパクトを生み出す「次世代研究大学」になることを宣言しています。このような中、昨年、ESECを立ち上げるに至りました。
近年、人工衛星の打ち上げの需要の増加に伴い、ロケットの打ち上げ数も増加している状況にあります。昨年は、世界中で259回もの打ち上げがありました。米国のスペースX社やブルーオリジン社をはじめとするニュースペースといわれる民間企業による打ち上げが多数を占めます。また、ロケット打ち上げに関するコストも下がってきていることもあり、民間企業が宇宙に触れる機会も増えつつあります。
宇宙関連の市場規模も拡大傾向にあります。宇宙産業は、宇宙機器産業、宇宙利用サービス産業、宇宙関連民生機器、及びユーザー産業群から成っています。
これまでの宇宙分野における研究は、科学探査がメインでしたが、これからは本格的に宇宙を人類の産業のために活用するフェーズに入っていきます。
そのような動きの中で、内閣府は文科省、経産省、総務省とも連携し、宇宙戦略基金を設けています。この基金に10年間で総額1兆円が投じられると報じられています。
この度立命館大学は、JAXAが公募する令和6年度「宇宙戦略基金事業」において、技術開発テーマ・SX研究開発拠点(課題名:月面探査・利用を産業化するための宇宙機器開発・人材育成拠点)」に採択されました。
これまで宇宙分野に関連がなかったプレーヤーも含め、様々な企業や大学、また滋賀県、京都府とも連携しつつ、取り組んでいきます。滋賀から一緒に宇宙を目指しませんか。」
特別講演「海底から宇宙へ 今後の展望」
特別講演では、滋賀県内で宇宙産業にチャレンジする、湖北工業株式会社加藤隆司部長より、「海底から宇宙へ」という切り口で、既存事業で培ったノウハウを宇宙産業に活用していく背景や展望をお話しいただきました。
「湖北工業株式会社は、アルミ電解コンデンサ用リード端子の製造販売から始まり、2000年から光通信部品事業に着手しています。
光通信用部品の多くは、海底ケーブルに組込まれて使われています。海底ケーブルは、一度海底に沈めてしまったあとは、引き上げずに長く使うものであり、高い信頼性が求められます。
の信頼性の検証のために、25年ほど前からこの様な環境下での利用を想定した試験を実施してきました。
そして、海底での長く使われることを想定して開発し、ノウハウを蓄積してきた製品が宇宙で使えるのではないか。通信衛星間の光通信などに用途があると考えました。
では、どういうことが宇宙での利用の際に要求される条件となるか。宇宙は常に放射線を浴びる環境であり、真空です。また、ロケットの打ち上げ時の振動・衝撃が多いことが挙げられます。そのような条件下において、光通信用部品を試験しました。その結果、機能の喪失、特性変化は見られないことが確認されました。
このように湖北工業のコア技術と商品を使ってもらおうと、宇宙を見据えて動き始めています。」
「宇宙分野参入にあたって~宇宙機の開発プロセス、部品採択の流れ~」
続いて立命館大学仲内悠祐助教より、開発の経験を踏まえた民生用部品の宇宙機部品への転用についての解説と、民生用部品への期待についてお話しされました。
「宇宙機搭載機器の開発プロセスにおいては、振動・衝撃試験、熱真空試験など、多様な試験を行う必要があります。
また、宇宙機の開発にあたっては、JAXAが発行している「宇宙転用可能部品の宇宙適用ハンドブック」が参考になります。このハンドブックの中では、宇宙機に転用可能である部品が示されております。
宇宙転用可能部品は、価格が高くなる傾向にありますが、比較的安価な民生用部品でも、宇宙機に転用可能な部品はたくさんあります。
立命館大学が開発に関わるLUPEX用科学観測機器においても、民生用部品を利用しています。利用して関しては、大学研究者とJAXAが協力して試験および評価を行い問題ないことを確かめたうえで、JAXAと議論し合意の上で利用しています。
民生用部品にも、使えるものはたくさんあると考えています。
私たちがこれからほしい部品としては、例えば小型絶対値エンコーダー、高トルク小型モーター、安価な耐放射線赤外レンズ、耐放射線赤外線ファイバー、ハロゲンランプ等があります。皆様のお持ちの技術で宇宙利用に向け気になることがあれば、是非ESECに相談していただきたいです。」
滋賀県の工業技術センターのご紹介
東北部工業技術センター佐々木宗生所長より、滋賀県内での宇宙産業発展に向けた製品開発へ、工業技術センターが担うことができる役割やセンターリニューアルについてご紹介いただきました。
「滋賀県には「滋賀県工業技術総合センター」と「滋賀県東北部工業技術センター」があります。県内中小企業、製品開発のサポートを行っています。
センターとして、企業がトライしたい案件に協力したいと考えています。
時代に応じて、センターのリニューアルも進めています。「EMC評価ラボ」も設置し、工場のスマート化を推進しています。
また、立命館大学も参画されている「関西広域産業共創プラットフォーム」にも参画し、他の大学や研究機関へ橋渡しも行っています。
宇宙分野は、非常に幅広い分野からの参入が期待されるところです。工業技術センターを活用して、良い技術、新技術の相談をいただきたいと思います。」
閉会挨拶
立命館大学野口義文副学長より、閉会の挨拶をいただきました。
「「しがから“宇宙(そら)”に!」というテーマがキャッチーで良いですね。
米国で2019年に発表されたアルテミス計画に続き、2023年に日本でも宇宙基本計画の改訂が閣議決定されました。この基本計画で10兆円もの基金が設立されています。
2024年にSX研究開発拠点に立命館大学のESECが採択されました。東京大学、名古屋大学などに肩を並べ、素晴らしいものに採択されたと思います。
重要なのは、湖北工業株式会社をはじめ、地元の企業と連携していくことです。ぜひ滋賀の地から、宇宙への取り組みを発信していきたいと思います。」
講演の終了後は、登壇者とセミナー参加者による名刺交換会・交流会が開催され、非常に多くの産官学の関係者による交流が活発に行われ、終了しました。