産業界×科学界が語る「SX研究開発拠点」の未来 ~第4回月面ビジネスカンファレンス~
2025年8月7日「第4回月面ビジネスカンファレンス(LIVC2025)」※1 がオンライン含め約200名の参加者を前に開催されました。その中で産業界と科学界の連携をテーマにしたSX研究開発拠点(以下SX拠点)のパネルディスカッションが行われ、立命館大学宇宙地球探査研究センター(以下ESEC)センター長の佐伯和人教授が参加し、SX拠点の役割を「学術と産業をつなぐハブ」とし次世代に向けた課題を示しました。
パネラーとして、文部科学省 宇宙開発利用課長の梅原弘史氏、宇宙航空研究開発機構JAXAゼネラルプロデューサーの佐々木宏氏、東京大学大学院の宮本英昭教授が登壇され、モデレーターは株式会社Midtown代表取締役CEOでLIVC座長代理の中村貴裕氏が務められました。
議論の中で佐伯教授は、立命館大学が2023年に設立したESECの特徴について、「国内の多くの研究機関が宇宙探査の『発見段階/フェーズ1』や、将来の『生活圏構築/フェーズ3』に取り組むなかで、その途中段階にあたる『探査の展開と生存圏の構築/フェーズ2』を担う組織が存在しないことに強い危機感を抱いた。そこでESECはフェーズ2に注力し、さらに将来のフェーズ3までを見据える点に独自性がある。工学や理学だけでなく、人文・社会科学を含む30名以上の研究者が参画し、産学連携も視野に『学術と産業をつなぐハブ』を目指してきた」と強調しました。宇宙産業への新規参入を希望する企業にとっての課題について「多くの企業が新しい素材や技術を持ち込んでも、『宇宙での実績がない』という理由で門前払いされてしまう。しかしESECには、基礎研究から実証試験までを自前で進める仕組みがあり、その壁を越える支援ができる」と述べ、ESECが産業界にとっての実践的な足場となる意義を示しました。
そのうえで、「こうしてESECが描いてきたビジョンを実現する上で『宇宙戦略基金』 “SX研究開発拠点”(以下SX拠点)は、まさに我々にとって素晴らしい最適のツールだった」と語りました。「ESECが目指していたのは、新しい探査装置の開発と、それを検証できる実環境の両立。SX拠点「⽉⾯探査・利⽤を産業化するための宇宙機器開発・⼈材育成拠点」と題し、月面用地下探査調査用の装置の開発/地層三次元構造を保存したまま抽出できる『コアサンプラー』、各種センサー挿入型の地質調査をする『ボアホールプローブ』、資源を分析する装置『レゴリスTG-DTA』の開発に加え、月や火星の極限環境を模擬する試験チャンバーや模擬フィールド、さらにシミュレーション環境の整備を進めている」と説明しました。
また、自身の南極・昭和基地で観測機器の実証試験に参加した経験に触れ、「まるで未来の月面基地のようで、そこで得た知見は今後の拠点構築にも大いに役立つ」と語り、地上での極限環境実験と月面探査との連動性も示しました。「新しい探査装置を生み出すには、本格的な試験環境が不可欠。ESECは装置と環境の両輪を揃えることで、産業界との連携を加速できる」と佐伯教授は語り、SX拠点では既に複数の企業の参画が進んでおり、「学術と産業をつなぐハブ」という理念と、SX基金が提供する制度設計が結びついたことで、宇宙探査を産業化するための挑戦が大きく加速しつつあることが示されました。
※1 主催:一般社団法人月面産業ビジョン協議会
https://www.livc.jp/post/conference2025