立命館大学 大学見本市

分野

マテリアル・リサイクル

光の強さによって異なる
物性を発現する
フォトクロミック分子

Photoswitches that Show Different
Optical Properties Depending on Excitation Intensity

SDGs12
生命科学部
小林 洋一 准教授

BACKGROUND

研究の背景

「五感で感じる」ことへの思いが新材料を生み出す

私はもともとレーザーを用いて目では見えない非常に速い現象を分析する研究をしていました。しかし、レーザーを用いた分析は物質の光機能の本質的な情報を抜き出すことができる一方、その現象は目では見えず、感じることもできないため、本当に研究を通じて社会貢献できているのかという歯がゆさを覚えていました。その後、助教として研究に従事していた時にレーザー分析だけでなく材料に関して学ぶ機会があり、両分野の知見を生かし合うことで新しいものを生み出せるという強みに気づきました。それ以来「五感で感じられる」をキーワードに、社会にインパクトを与えられる材料の開発を目指して研究を行っています。

FEATURE

シーズの特徴

光の強度で物性が変化する新しいフォトクロミック材料

フォトクロミック材料は、光刺激によって分子構造が変化して色や蛍光の可逆的な変化を起こす性質を持った光スイッチ材料であり、さまざまな分野で用いられています。今回出展した新材料は、微弱な背景光には反応せず、強度の高い集光した光刺激でのみ反応が進行し、わずかな光刺激の強度変化で蛍光特性が大きく変化する材料。このような非線形光応答材料は珍しく、高価で大型のレーザー装置でないと使用できないものがほとんどでしたが、汎用光源のような比較的弱い光刺激でも反応を誘起できる点で画期的です。加えて、この新材料の基本骨格は、実は皆さんの日常生活でも用いられています。身の回りにあるものを化学的に加工して、必要な時に必要な分だけ材料を作ることは、資源の少ない日本で持続可能な未来を築くことにつながるでしょう。

VISION

解決したい未来

フォトクロミック材料は世界の課題を光で解決する

この材料を塗布した状態で機能させるためには、ポリマーや溶液中における着色する際の分子構造の変化を詳しく調べる必要があります。また、複雑な反応メカニズムを分析して、光の強度と材料の反応率・着色の度合い・使用可能な装置を明らかにしなければなりません。実はこのような反応解析をする上で、自分がこれまでに培ってきたレーザー分析技術が役立ちます。活用例として想定しているのは、蛍光顕微鏡への応用。このフォトクロミック材料で蛍光標識した細胞にポインターで集光した光を当てると、蛍光特性の変化を利用してより詳細に細胞を観察することができ、解像度の高いバイオイメージングの実現につながると考えています。他にも、偽造医薬品を防止するためのラベルへの利用が考えられます。光が強い時だけ反応するというこのシーズの特性をラベルに加えることで、より偽造されにくいラベルの開発、そして医薬品の偽造防止へとつながるでしょう。私が挙げた活用例以外にも、ご指摘・ご意見などをいただく場としてイノベーションジャパンを楽しみにしています。

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